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かたるの失敗(2008年08月31日)

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未来かたるは何故、相場の読みを外し失敗したのでしょう?
最近は幾つかの読み違いと投資の心理状態が間違った選択をしたと思っている次第です。シリーズ化にして、何故、読みを間違ったのか? 考えて見たいと思っています。もともと登場人物の未来かたる君はハイリスク・ハイリターン型のバブル人間です。つまり責めには強いけれど守りはガラガラの状態なのでしょう。この考え方は人間の生き方に起因していると思います。普通の人間は生活の保障などを求めるし、無謀な冒険などするものではありません。しかし証券会社に入社した頃から歩合セールスに憧れ続け、10年の社員生活を終えると直ぐに飛び出し、地方から東京に上京したように向こう見ずの性格なのでしょう。じっと耐えた10年をへてITバブルが起こります。長かったトンネルを抜け出し大丈夫だと思ったのも束の間、バブルの清算は第二波を迎え2003年の金融危機に発展します。ようやく金融危機を乗り越え新しいスタートが切れたと思ったのが今回の戦後最大の景気回復期です。しかしこの成長は日本の構造改革を置き去りにしたもので、外需(BRICs)の成長に助けられたものでした。バブルの清算に伴い、様々な問題を解消してきた筈の日本経済です。代表的なものは3つの過剰問題、過剰債務、過剰生産設備、過剰人員、それだけではありません。市場では「株式の持ち合い構造」を解消してきたのです。

2006年、日銀はゼロ金利政策を解除します。しかし景気回復が弱い為に、常に利上げに対し政治的な圧力がかかりチャンスを失います。更にライブドアの上場廃止は新興勢力に大きな重石になりました。会計基準の厳格化ですね。市場では村上ファンドのインサイダー事件やブルドックの買収問題で市場原理が歪みます。景気回復を本物と思った政策担当者は歪んだ臨時のシステムの正常化を急ぎました。確かに建築基準改正法、貸金業法の改正、労働条件の見直しなどの政策は越えねばならない壁です。しかしこれらの正常化への壁がサブプライム問題から起こった流動性不足と重なり、景気の下振れ圧力を加速しているのが今の市場でしょう。私の間違いは2006年です。通常の景気回復のパターンでは金融政策や財政政策により景気が浮揚し、やがて設備投資が起こります。ここで人材不足から賃金が上がり可処分所得も増えて消費に火が付くのです。

ところが…なかなか可処分所得が増えない現実が続きました。厚生労働省は不安定な労働条件の改善に乗り出すのです。一見すると正しい選択です。派遣労働者を正社員化に促すことは…。ところがここに大きな見誤りがありました。企業が労働分配率を増やせない理由を探らなかったのですね。空洞化問題を乗り越えて雇用を維持するために生み出されたのが派遣法の改正です。企業の負担を軽くしたのです。その為に生産工場を労働条件の良い中国などへ移さずに国内に残したのですね。派遣や請負が認められていたから、何とか企業は国内に工場を残しました。しかし…その結果、構造改革は遅れ交易条件の悪化が進みます。日本には本来、生産性の低い産業は必要ないのですが、雇用の確保の為に残したのですね。その結果が交易条件の悪化に繋がっていると思われます。原油価格の上昇を上回る効率的な産業が日本にないから交易利得が大きなマイナスになるのです。世界競争で資源高を製品に転嫁できないのです。仮に本当に製品の付加価値が高いなら新日鐵の株価が上がり、さらにそれ以上に住金の株価は高くなるでしょう。ところが現実は中国製品が国内に流れ込み製品価格が下がり始めています。理由は中国の国内物価に対する抑制処置ですね。原料高や世界競争に負けているのです。…にも拘らず新日鐵の三村さんは時代をさかのぼり「鉄は国家なり」と言うイメージを引きずっているために株式持合いを敢行し国内銀行もそれに応えました。

政策担当者も民間企業も時代認識を間違っていると思われます。
交易条件だけでなく法人税制により資金面で歪みが生まれています。企業が海外で稼いだお金が国内に還流しないのです。理由は明確です。税制の問題です。グローバル化に絡む様々な諸問題を読み違え現代に至りました。私は新しい時代を築くには若い力を利用してGDPを増やす政策が必要だと考えてきました。ところが実際の政策は「配分」の話しばかりです。既に国は赤字で借金だらけなのに…「分配」の話で揉めているのが医療問題や年金問題、原資であるパイを増やす努力がなければ貰うお金が減るのが当然ですが、何故か、政策は消費庁の新設です。これがGDP倍増庁でも作るなら株価は上がるでしょうが…

私は株屋です。国民みんなに株を買ってもらい、お金を企業に還流し有効に使ってもらおう。…というのが社会的な使命です。カラ売りなんて論外です。株は買うものです。買って、買って…まさに古典的な発想ですね。新日鐵の三村さんの考え方より古典的かもしれません。だから未来かたるはいつまでも新興株ファンなのですね。明日の日本を創るのは若い力が欠かせないと考えているからです。しかし現実は…理想と現実の板ばさみ。景況感の読みを大きく外しました。2006年に修正すべきだったのです。ハイリスク・ハイリターン投資は景気の浮揚期に効果を発揮しますが、後退期にはもっとも弱いパターンです。赤字から黒字への転換が株価の投資効率が一番高いのは事実です。しかしこのパターンに固守しすぎたのが敗因の一つなのでしょう。今日はこの辺で…
次回から、もう少し掘り下げて考えて見たいと思います。