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かたるの失敗3(2008年09月14日)

かたるの失敗を綴り皆さんに意義があるのか分かりませんが、株屋としてはいろいろ考えるわけですね。ネット上の「未来かたる」と実在する「かたる君」は同一人物で、やはりそれぞれ影響を受けるわけです。日本経済が右肩上がりの時は「かたる君」投資は正しかったのでしょう。しかし市場主義のアメリカ株を知るにつれアメリカの市場原理が正しいのか? 多少、疑問を覚えます。しかし日本の市場は外人投資家に支配され否応なくアメリカ的な動きになっているようです。今日の新聞では経済産業省の法人税率の話しが載っていました。上場企業の日本逃避が現実になっているからでしょう。

ひとつの現象を知る為には、かなり長い時間が掛かります。
投資の世界では様々な変動は10年単位の波で起こることは良くあります。例えば原油価格の高騰は私が証券界に入った第二次オイルショック以来の現象ですから1979年の話しですね。実に30年ぶりの現象です。投資の世界は経験が、かなり需要な要素を占めます。同じように会社を理解する為には10年単位の企業の観察が重要です。企業風土があり決算発表にもそれぞれ特徴があります。双日への投資の失敗は日商岩井とニチメンのカラーの違いなのかもしれません。西村氏は日商岩井で土橋氏はニチメンの出身です。前社長が公約した期間利益で優先株償却をするという公約を土橋氏は守らずにMSCBを発行したわけです。その為に、折角、会社は良くなったのに株価は上がりませんでした。同じ事例がオリコと日本信販でした。資本不足に陥った時の対応がその後の株価の明暗を分けました。三洋電機や三菱自動車も会社はよくなっても株価は上がらないのでしょう。この資本政策は非常に重要です。

みずほが1兆円増資を実行し株価の希薄化懸念が生じています。前田さんは自社株買いを実施していますが社長が変われば分かりませんね。実力では日本でNO1だと思いますが株価では3位の位置で甘んじているのは資本政策によるものでしょう。最近、りそなが公的資金返済もせずに自社株買いを始めたのは評価される事実です。通常、オーナー経営者は自社株に関心が高くあるものです。僕らサラリーマンの通信簿が年収だとすれば、株価は企業経営者の通信簿ですからね。

双日の選択は同じ商社でもハイリスク・ハイリターン狙いだったのです。つまり再生相場の一環だったのですね。しかし株式併合を実施しこの評価なので選択は間違いだったのでしょう。あの時に丸紅だったら同じ再生相場の狙いですが天と地の違いですね。
当時、三菱商事も手掛けていましたが、やはり大型株は好みに合いませんね。しかし金融資産と見た場合、いつもそうですが、やはりトップ企業での投資だけでも充分なのでしょう。この時期に景気は立ち上がり消費が盛り上がると思っていました。土地も上がっておりダイエーは資産を抱えるので、いい選択だと思っていました。事実、1回目のダイエーの取り組みはかなりの利益をあげ好成績でした。2回目が失敗でした。本格的に消費回復と思ったのですが…継承した丸紅に再生意欲はなくイオンへ会社を譲渡し、資産売却をし始めたのです。ついでに消費は盛り上がりを欠いてきました。これは設備投資から消費と言うエンジンに点火せずに外需に頼った日本経済が失速した為でしょう。ここの見誤りに全ての間違いがあったのですが、当時は気付きませんでした。

先回も述べましたが消費が盛り上がらなければ国内産業は全滅です。
ベンチャーリンクへの投資はそれまでの再生相場への取り組みとは違うものでした。双日、ダイエーはもともと実力があり、経営者が変われば変化できるものでした。しかしベンチャーリンクは初めての成長株投資への狙いでしかもゼロからの挑戦だったのです。双日の株価が絶望的だと思ったのは野村證券の対応を見ての評価でした。野村證券は既存株主利益を無視し目先の利益に走ったのですね。あの時に、野村の実力があれば高値での転換も出来たはずなのです。700円、800円で転換すれば発行株式総数は減り1株利益は上がりますからね。それを安値で叩き売る戦略は証券マンとしては信じられない思いでした。

その失敗を取り戻す為に、きっと、心の中で焦りがあったのでしょう。
当初、ベンチャーリンクは博打株のイメージでした。FC店の脱退は分かっていましたから、それを上回る新規のFC事業を開発しなくてはなりません。当時は無借金でした。市場から資本調達した資金で借入金を返済したのですね。もともと教育問題が日本の問題点で誰かが変える必要があります。詰め込み式の教育スタイルでは駄目なのですね。藤原正彦先生も仰っているように、修身教育(道徳教育)は大切なことです。
現在の様々な問題、例えば三笠フーズの汚染米販売など、通常、考えられない事件です。「七つの習慣」と言う基本的な人格教育は新鮮で素晴らしい響きがありました。ただ会社の実情はお粗末なものでした。赤字から黒字に脱却できるかどうか微妙でした。そんな時に始まったのがカーブスの存在です。

かたるが本格的にベンチャーリンクを買い始めたのは170円前後だったと思います。その後、カーブスの成長過程を見て熱くなっていきました。2000店舗が1000店舗増え3000店舗へ。次々にFC事業が開発され積み重ねの利益が計上できると考えたからです。事実、会社の中期計画もかたるが買い始めた後で発表され、1株利益60円程度の予想でした。2006年ライブドア事件が勃発し、新興株式が総崩れでベンチャーリンクの株価が下がるのは仕方ないと考えていました。流動性リスクの為です。この会社の収益構造が新規の加盟店契約に依存していたリスクの見落としに気付いたのは、2007年の末でしょう。景況感が悪化し中小企業相手では仕方ないと思っていましたが、落ち込みは予想以上でした。今から思えば会社側にも焦りがあったのでしょうね。次々に新規のFC事業を開発しますが、なかなかいいものが出てきません。ライフサロンなどの開発は成果が乏しいものなのでしょう。ベンチャーリンクの爆発力は素晴らしいものがあります。残念ながらカーブスのテレビコマーシャルが、今から思えば分岐点だったのでしょう。加盟店開発の第二エンジンに火が付かなかったのです。牛角のときは成功したのですが…ついてない会社です。折角、良い物を持っているのに時流に乗れないのです。

NECのPC9800でしたかね?
あの事例も…流れを読み違った例ですね。折角、いい物を持っているのに…NECもマイクロソフトにしてやれます。優れた技術だと言う評価でしたが…。景況感の読み違いが、小さな会社では命のやり取りに発展します。ベンチャーリンクの現状は、ゴーイングコンサーンが付くような内容なのでしょう。ベンチャーリンクをかたる銘柄に据え置いているのは、双日やダイエーは株主を完全に自らが裏切ったのです。しかしベンチャーリンクは自ら一所懸命に努力しての失敗です。株屋としてハイリスク銘柄に固執した投資は明らかに失敗です。しかし私は今でも復活して信じ願っていますね。私自身は買えますが、ゴーイングコンサーンが付いている以上、お客様にお薦めするわけに行きません。来年、再び景況感は改善し始めます。黒字化への道筋がなかなか見えないものでしたが、今回のリストラ効果で今までは無理だと思っていましたが、可能性としては、会社の主張どおり、ほのかながら再建が感じられるのかもしれません。

あまり長く、かたる投資の失敗を書いても仕方ありません。
今回の様々な失敗は景況感の読み違いが一番大きな要因だと思われます。企業収益は連続増益なのに給料が上がらないのは様々な理由があると言われています。世界の輸出産業の労働者は中国を中心に激増しており競争が激しくなったこと。国際通貨基金(IMF)の推計では、05年の世界の輸出産業に携わる労働者は89年より5億人増の8億人に達したそうです。安価な輸入品により先進国では生産と雇用が失われ、職を失った人が新たな職を求めたために労働市場で競争が起こり、輸入品と競合しない産業でも賃金抑制は進んだのです。大企業の総人件費は労働分配率の低下に伴って2000年以降、一貫して減少を続けています。しかしこの総人件費を人員数と一人当たり人件費に分解すると人員数はリストラにより毎年減少していますが、一人当たり人件費は00年と05年を除いてむしろ増加傾向にあるのだそうです。つまり社会保障費の増大が原因の一因と考えられます。他には派遣の問題やアウトソーシングの話しですね。

失敗の原因を考えるとマクロ的な視点が大切だと思うのです。まさか交易利得の問題が背景にあり、様々な理由から景気に影響を与えたとは…。また今回は税制の違いから企業利益が海外に滞在する問題もあります。特に小さな会社ほど景気動向の影響を受けます。先日から考えている加工貿易国家の限界説は、日本の産業界の構造に大きな転換を強いているようにも感じます。日本の様々な問題が(基本的には社会保障費の増大)加工貿易国のスタイルを維持できない可能性があるのですね。そう考えると日本企業はこれまで以上に海外へ生産活動を移すのでしょう。

まだマクロ的な影響と株価の関係を考えた時間が少ないので経験事例が少なく影響が分かりませんが人間の気持ちなど些細なものなのでしょう。株式で何千万円も何億円も損をしたかたる君でも、パチンコで10連続フィバーすれば、やはりうれしいのと変わりません。人間心理など、ほんの僅かな違いなのですね。最近、思うのです。マクロ的な僅かな影響は、時間の経過と共に大きなうねりに変化するのですね。だから時代背景をよく見て相場の動きを考えないとならないと…。なかなか株式投資は奥が深いと思っています。

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