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コラム

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歪んだ報道(2008年12月23日)

最近の疑問の一つに、何故、円高を過剰反応してマスコミは騒ぐのかと言う、素朴な疑問があるのです。先日、厚生労働省のデータから契約社員の割合とパート社員の割合を掲げたデータを示しました。平成19年のデータですが、正社員以外の雇用形態は日本らしく様々な形です。契約社員2.8%、嘱託社員1.8%、出向社員1.2%、派遣労働者4.7%、臨時的雇用者0.6%、パートタイム22.5%、その他4.3%となっており請負の形態はその他に入るのでしょうか? このデータによれば、いすゞやキャノンなどの輸出企業の雇用が失われている報道がマスコミでは頻繁に流されていますが、何故か…、一番多いと思われるパート社員の解雇は話題になりません。きっと女性が働くために所得の補助的な意味合いが強い為なのでしょうか? 

私には円安の悪影響はよく分かりますが、円が他の通貨に対し強いと言うのは良い事だと考えています。そりゃ、トヨタなどの輸出企業は大変ですね。しかしトヨタの売上高は大きいですが国内生産面は60%で、32%が国内売上です。つまり28%が輸出に回っているわけですね。売上が25兆円として、概ね7兆円ほどの輸出金額です。日本全体では89兆7936億円が輸出金額になっています。トヨタは8%弱のシェアなのですね。しかし同時に輸入もあり、此方の金額は日本全体で61兆6451億円なので、つまり純輸出は28兆1485億円です。日本全体では輸出が30%ダウンしたとして、この純輸出分が消える勘定なのですね。こう考えると日本は今の世界環境の中でも、喰える国と言う事になります。日本の株式が上がっても不思議ではありません。

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まぁ、論点がずれるので考えを発展させずに、何故、円高が恐怖のようにマスコミは騒ぐのでしょうか? 日本の景況感が悪いので一概に言えませんが、原材料を輸入に頼る電力や紙パルプの株価は上がっても良いし、食料品の輸入業者は大きなメリットがあります。最近の広告にやたらに目にするのが蟹の販売です。1万で1キロとか2キロとか…ロシアは危機で外貨が不足しているのでしょう。きっと、あの価格でも大きな儲けになるのでしょうね。レストランでのワインの価格の高さは驚きます。平気で市販価格の2倍は当たり前で、3倍から4倍ほどのぼったくり商売をしているように感じます。最近の小売業では円高還元セールなどが増えてきましたね。1ドルが90円と言うことは、およそ2割程度の得をしています。ガソリン価格は30ドル台に下落し1/4になりましたが、日本では税金部分が多く、あまり大きな恩恵にはなっていませんが、それでも100円前後まで下げました。小麦も大きく下がりましたから、山崎パンなどは輸入して国内販売なので利益が増えるのでしょう。ユニクロは中国の通貨「元」との比較になりますね。先日、決算発表されたニトリなども還元を受けるほうです。

輸出企業と大きな繋がりがなければ、円高メリットを享受する国民の方が、数は多いと思うのです。それなのに、一部の輸出業者の話題ばかりが強調されテレビで報じられています。同じ雇用不安ならイオンの店舗閉鎖の方が、余程、地域経済に打撃を与え、雇用の喪失になっているのではないでしょうか? マスコミ報道の方向性が間違っている為に、政治家はパフォーマンスを好むので、間違った対応を発表するのでしょう。まもなく農地法の改正など含めた法案が提出されます。もっとアクティブに民間企業が参加しやすいような仕組みを考えれば、日本の発展に役立つでしょうに…。例えば政府は農業の補助金をカットして、その資金で利息補助の農業債を発行します。民間から資金を集め農業債を発行しチャレンジする企業を援助します。資金があれば国内農業で採算の合う仕事が創設できるでしょう。既におじいちゃん、おばあちゃんが主体の農業に活路が見えるはずです。陳腐化した法律は廃止すべきですね。10年ごとに見直すとか…しないと農地法などと言う馬鹿な法律が残っているから日本が衰退するのです。

マスコミは契約社員や請負社員の失業を派手に報じていますが、やはりデータを自分で分析すると間違った動きだと言うのが理解できます。僕らはいつもそうです。表面上の現象にとらわれ過ぎて真実が歪んで見えます。ブルドック以来、発生するサッポロビールやJパワーなど…東洋電機もそうです。会社の経営者が変わっても従業員にとって効率的な変化を拒むべきではありませんね。卑怯ですよ。UAW(全米自動車労働組合)を見れば分かります。何が、100年の歴史ですか…既に斜陽産業ですね。自ら構造改革する痛みは仕方がないのです。「鉄は国家なり」? 社会基盤整備がなされた国で、何を寝ぼけた戯言を口にするのでしょう。日本には数多くの自動車メーカーが存在します。鉄と同じで淘汰されるべきでしょう。既にグローバル化された仕組みの中で生活をしているのです。

参考までに…資料は古いですが、概ね物色を避けるべき業種は変わらないでしょう。
下の資料は平成10年商工業実態基本調査のものです。何故、経済産業省はこのような調査の継続をやめたのかな…? 兎も角、株式相場の考え方にも役立つでしょう。

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