今期見通し(2009年04月29日)
相場は金融相場特有の強弱観が対立している様子が窺えます。
日本を代表する企業の今期業績見通しが総じてアナリスト予測より低いようです。理由は企業経営者心理でしょう。基本的に現時点の情勢を踏まえ今期の業績見通しを推測します。為替なら1ドル=95円と打ち出したトヨタ自動車が代表的な例でしょう。堅めに見積もっておいたほうが、あとあと楽だと判断するのが普通でしょう。車の売れ具合も堅実な数字の見積もりですね。5月危機予測はこのように低めの数字に驚いた投資家心理が影響すると言う読みなのでしょう。確かに豚インフルエンザの発生の影響あり見通しは一層混沌としています。
現時点の相場は極端な悲観修正がほぼ終わり、騰落レシオ、乖離率に見られるように、かなり歴史的な指標数字を示していました。騰落レシオはそれほどの過熱感はありませんでしたが、乖離率は歴史的な数字でした。この意味は投資心理が極端に減退した様子を示すものです。オリックス、CSK、パイオニアなど…、大幅に1株純資産を割り込む銘柄が続出しました。その修正波動の第一弾は終了しましたね。果たして第二弾があるのかどうか…次の相場の焦点はここに移っています。
5月4日に米国で初めての特別検査の結果発表が行われます。
現状認識をする為に欠かせない作業の一つでしょう。この結果を踏まえ政策対応が取られる事になります。しかし株価を見れば分かりますが、既に多くの銀行株は戻っており過剰に心配するのは、行き過ぎだと思われます。投資心理には「慣性の法則」が適用されます。無重力の宇宙空間でものを動かすと、その動きは宇宙空間で継続されます。そのような動きですね。どうしても人間には記憶機能があり、前の株価を覚えており錯覚を覚えるわけです。だから11月から3月にかけての安値やその過程の下げ相場が身についています。情勢が変わりつつありますが、投資心理は以前の状態が続くわけです。
これまでは、必ずこのような局面以降は、株価が下げていました。約3年程度、この状態が続きました。しかし世界の動きを見れば、空前規模で金融・財政政策が採用されており、これまでと大きく違うことは疑いの余地がありません。金融の世界では、先ずお金が先に動きます。実体経済はあとから付いて来るのです。この順番が逆になることは有り得ません。だからトヨタ自動車などの企業業績が先に回復して、お金が回り始めると言うことはないのです。お金が回り始めるからトヨタの車が売れるのです。先ず、「お金ありき」です。その様子を垣間見るグラフがあります。米国金融のふたつのセクター別の株価動向を捉えたものです。下のグラフは投資銀行(証券会社:GS,MS)と商業銀行(JPM、WFC、BAC、C)の平均株価推移をグラフ化しました。御覧頂いてわかるように、今回は金融不況だと言う事を物語っていますね。投資レバレッジを拡大させたGSやMSなどの株価は商業銀行に先駆けて下げていましたが、資産ポジション整理が終ると、逆に商業銀行より前に上げ始めていますね。
この意味を良く考えれば分かります。商業銀行は貸し出しなどを通じて実体経済に結び付いています。投資銀行は自己勘定により、儲かるか損をするか? 自己の責任で投資をしますね。金融が先に立ち上がっている様子が、同じ銀行セクターの中でもグラフを通じて分かります。まもなく、ストレステストを終え、徐々に信頼感が戻り商業銀行の株価も戻るでしょう。そうすると実体経済へのお金の供給が徐々に増え、実体経済の業績が上がってきますね。金融の仕組みを理解すれば、順番が分かる筈です。相場は実体経済と金融界の綱引き状態ですが、お金の発行元が量を増やす量的緩和政策を実行している以上、援軍は限りなく続くのです。故に実体経済の今期見通しが悪くても心配いりません。これ以上落ち込むことはないと思われます。