沈まぬ太陽を観て…(2009年10月25日)
1985年は日本に置ける分岐点です。
この年に御巣鷹山で日航123便が墜落して520名の人命が失われました。
昨日、山崎豊子の「沈まぬ太陽」を観てきました。3時間を越える上映時間で途中10分の休憩を挟むのは初体験です。山崎さんは今年「運命の人」を書かれました。外務省に絡んだ実話をもとに小説化しました。この「沈まぬ太陽」も国土交通省の権力争いを中心に描かれていました。主人公の恩地さんは小倉貫太郎さんがモデルと言われています。映画では社内の権力争いと人間の生きる姿勢が描かれています。今、実社会では現実にJALの再建問題に揺れています。私がある意味で日本株相場の象徴的な峠を2003年の「りそな」とダブらしてみているのは、JAL問題は日本問題でもあり、この解決手法で新政権の行方が分かるとも思っているからです。同時にあの時と同じで、この問題解決が切っ掛けになり日本株が浮上して欲しいと願っているのです。
実は1985年に日米の貿易不均等を是正する為、円高を主眼とした議題が論じられNYのプラザホテルで国際会議が開かれ合意しました。今の中国とその頃の日本は、ある意味で一緒ですね。先進国は新興国の物理的な優位さに構造転換を迫られるのです。米国はそれまで長い間、株価は低迷しボックス圏の動きでした。1985年頃から米国株は本格的に上がり始め、1987年のブラックマンディーを克服しNY市場は再び上昇します。ブラックマンディーは、ブラック・ショールズ方程式:オプションの金融工学の開発により大量のプログラム売りが切っ掛けになりました。今回の金融危機は、このブラックマンディーのように、サブプライムのもとであるCDSの開発が、洗礼を受けた事例に似ていますね。その話しは兎も角、なにやら、その頃の米国株と現在の日本株を同じように見ている私はおかしいでしょうか?
「沈まぬ太陽」の主人公の恩地さん(渡辺謙)の生き方に、共感を覚える人もいるでしょうが、同時に何度も詫び状を入れるチャンスがありながら、「矜持」を貫いた生き方に反感を持つ人もいるでしょう。むしろ行天さん(三浦友和)の方が素敵な生き方だという見方もあるでしょうね。影に隠れていましたが八木書記長(香川照之)が死を決意する前に喫茶店で恩地に会いながら何も言わずに去っていく生き方も充分に理解でます。なにやら…今の僕の心境に似ているようで…株屋としての矜持なんて、誰にも理解されないかもしれません。苦悩の20年か…
民主党政権は1985年に立ち戻ったのでしょう。
奇しくも今年の40兆円を割れる税収は、この時代へ逆戻りします。いい加減に日経新聞を代表するマスコミも、これから代表質問をする自民党も大人になって、冷静に日本を見つめ直してもらいたいものです。いつまでも小さな器の中で権力争いもないものです。JALが8つの労働組合を抱え年金債務に苦しむのは、東大閥や国土交通省などの天下り役人の権力争いの残骸なのでしょうね。映画は実在する話で当時の中曽根総理がカネボウの伊藤さんを会長に迎え、都合が悪くなると放り出す政治家の生き方も問うもので、観る人に色んな思いを抱かせます。
御巣鷹に散った520名の犠牲を糧に、そろそろ1985年の日本の姿に向き合って、本格的な政策を実行して欲しいものです。日本株が世界で輝くような政策の実行を願うばかりです。