日立の変化(2011年06月12日)
今日は日立を題材に株価と業績の見分け方を…。
基本的に株価の変動率が一番高くなるのは企業業績が大きく変化するときです。特に今回のように米国発の金融危機から世界経済が低迷し、多くの企業が赤字から黒字に転換するときの株価の変化率は高くなります。この変化が通常の景気変動による業績変化なら大きく株価が変動することはありませんが、大規模なリストラを伴う変化が上手く行けば、株価は大きく変身します。その代表的な好事例は今日の市況で度々登場する「コマツ」です。2002年当時のコマツは人員削減を含めたリストラを実行しました。そうして黒字転換を果たし、この時に社内改革に手を付けて、国内偏重からグローバル化に大きく舵を切りました。そこに新興国需要が起こり、その波を上手く捉えました。故に人気株になりましたね。今回の金融危機からの立ち上がりではなく、前回の2003年の日本経済の沈みの時に、方向性を中国に向けたのが成功したのです。故に株価は2005年が一番華やかでした。業績の推移と株価の変動を感じてください。


さて日立。この株の注目は人材と言う大切な経営資源が、日本企業の中で、一番、揃っています。ところが村意識が強く変化を拒む体質があり、社内改革が大きく遅れていました。どうもHDD部門の売却の過程をみると、大きく変化し始めているように感じます。コマツを見れば分かりますが、製造業の営業利益率の15%が限度でしょう。なかには特殊なケースでは30%程度まで行くケースがありますが、通常は10%が限度でしょう。日立は現在5%弱の水準です。大きく惹かれる所以はスピード感ですね。赤字からいきなり過去最高利益への展開です。この変化率を維持できる可能性がありますね。最初は無駄が多いので意識改革で、ある程度の利益が出るものですが、なかなか、いきなり過去最高利益は達成できませんね。この点は人材がそろっている日立の特性でしょう。社内の空気が変化すれば一人一人のモチベーションが業績を押し上げます。もともと人材が揃っていましたがトップダウンで風通しが悪いから停滞していました。その経営の権限を現場におろしている点がスピーディーな経営改革に繋がっていると考えています。


日立が得意とする重電は社会インフラ整備に欠かせないのです。中国の沿岸部は進んでいますが、内陸部はこれから5年以上の成長が続きます。。さらにインドが控え、アジア諸国がこれから需要期を迎えます。日本は長年、無駄な公共事業投資により、この基礎分野の素地が出来ています。故に方向性を変化させれば利益は、唸るほど上がりますね。コマツのケースでは売り上げが二倍になりました。日立もその程度は楽にあげられるでしょう。むしろ日立の方が幅広い分野を誇るので、3倍程度は行けるかもしれませんね。株と同じで業績も初期波動、最初のスタートが大切です。変化が自信に結びつき、更に社内改革を加速させるものです。このような時に、この度の震災で主力企業が被災しました。この危機感が、社員の多くに広がる立ち上げ症候群(黒字達成の目標達成で緩む心)を戒め、再び改革魂に火をつけたと推測しています。
さて問題は株価と業績数字ですね。当然、過去最高利益達成で500円台に戻った株価は震災の影響を考慮し下げ、一時は300円台まで落ち込みました。現在は復興被害がまとまり、新しい期の読みに入っています。会社側の営業利益が上期800億円で、下期3200億円と言う数字は、復興被害が限られたものだと認めており、4-6月期が今年最低で、この損失がどの程度なのか注目されます。現在の日立の基礎体力は、四半期で1200億円から1600億円程度の実力と推察されます。

世界経済の落ち込み、問題は日本なのですが…そろそろ復興景気から更なる革新変革期に日本全体が大きく変化する時代になっています。グリーン投資と言うか…イメージでは次世代社会の効率的な社会インフラ改革ですね。
この構想は長くなりますね。一例を掲げればスマートグリッドのような技術革新が社会構造を大きく変え未来社会を構築するのですね。スマートフォンのGPS機能サービスは一つの現象に過ぎません。情報インフラを利用した車の変化はカーナミゲーションを使った情報コントロールから急ブレーキの発生率を調べ、車線変更から事故率が減った例が、先日、テレビで報道されていました。走る情報の共有化、この技術は日本が誇る最先端の社会インフラ技術ですね。その内、カーナビに目的地を打てば自動的に最短時間で運ぶシステムが完成します。既に技術的には実現しています。
交通信号の長さをコントロールする技術は世界一でしょう。このシステムを中国で売れば良いのですね。大変な需要がありますよ。このような最先端の社会インフラ技術がモータでも、様々な分野で日本の公共事業投資により蓄積されています。この開花が始まると思っています。先の話は兎も角…日立は夢が大きいですね。あとは経営者次第なのです。皆さんは私も含め、目先の株価推移が問題です。確実に日立の株価は上がります。何故なら利益水準と株価に整合性があり、成長する企業が他にないから人気が集中するのです。その爆発地点が何処かの問題だけなのですね。4-6月期の赤字が、どの程度なのか? 800億円ぐらいまで膨らむのか? それとも400億円程度で済むのか? この数字が判明するのが8月です。
しかし今回の今期予測数字を発表したことで、震災の被害状況が比較的短期間で回復することを宣言しましたから、本来は外人投資家が買いに入ってもおかしくないタイミングなのです。今から上げて550円から600円の段階で、赤字の発表があり800円へ向かいシナリオは、かなり高いと思っています。問題はQE2により日本の変化を外人が実感できるかどうか…政治情勢も影響しますね。これは残念ながら、当事者でないと分かりませんね。少なくとも、このクラスの株では複数のファンドが参入しないと株価が人気株に育ちません。中西改革の真価はこれからです。リストラにより無駄を削り利益を上げることは、ある程度の経営者ならできますが…その後、継続的に方向性を軌道に乗せられるかどうか…。特にアジア圏の社会インフラ整備は政治折衝が必要になり、人脈の構築には時間がかかります。この点を人材の引き抜きで実現できれば、あるいはM&Aなどですね。この姿が見えれば株価に上方圧力がかかります。
株価が上がるとか…そんなに単純は話でないことは分かりますね。昨日は株式教室で東電の選択の結果で、株価が揺れる現象を述べています。要するに、これから日立が採用する戦略が株価を決定します。勿論、全体の動きが影響を及ぼしますね。米国株価のパフォーマンスが悪く、中国も同様。しかし日本はあらゆる面で条件が整っています。日銀は資産インフレに対応し始めていますね。さて今日の市況で四半期ベースの売り上げと営業利益の水準と取り上げた理由を理解して頂いたでしょうか?
何故、800億円→4000億円となっているのか?
その理由は1Qの赤字を2Qで埋め、3Q、4Qで完全復活すると言うだけですね。あの数字の中にはこれから起こる震災の復興需要は、あまり大きく加味されていませんね。何故なら過去最高利益を抜き続けていません。でも金融引き締めリスクにより中国の減速が加速すれば、この予測数字の達成が出来ないかもしれない。ここで株価がせめぎ合いをしているわけです。でも東レは30円で、600円ですね。日立は45から50円ですからね。重工は10円台ですよ。多くても20円以下ですね。現在の株価を比較すれば、日立の優位性は明らかですね。日立の基礎インフラ事業は幅広く、多くの企業に影響を与えます。コマツのように日立が3000円に向かっても不思議ではない理由を感じてもらえましたか?
いずれ日本は高度な情報化社会基盤つくりが行われます。
節電意識の高まりから電力のコントロールに意識が向かい、自然エネルギーを採用すれば確実にスマートグリッド投資は加速します。スマートフォンの利用は世界一なのですね。DENAのような…企業はもっと評価されても良いのです。あの会社がゲーム以外に進出すれば、もっと面白くなる。ソフトバンクやヤフーのイメージが大きく変わりますね。もうすぐ、新しい夜明けが始まります。その突破口を日立が開けられるか? 20年以上の歳月を費やし、長い低迷のエネルギーが蓄積され続けているのです。