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『直接金融』と『間接金融』(2005年10月29日)

今日からIRNETの「来週の展望」は「株式教室」に変わります。新しい投資世代は株式の事を分からない方が多いと思うので、基本的な株の仕組みなどを知ってもらいたいと願って、「未来かたる」が毎週お届けする予定です。IRNETの読者の方は既に基本的なことはお分かりだと思いますが…。最近、増えている初心者向け投資家を対象に、このコーナーを作っていきたいと考えております。IRNETは株式市場の更なる発展のために、幅広い投資家のニーズに応えたいと願っているわけです。回を重ねるにあたって、だんだん専門的な事に触れていきますので、ベテランの方も楽しめると確信しております。それでは…第一回のテーマに選んだのが『直接金融』と『間接金融』です。

わが国の政策当局は1989年後のバブル崩壊の政策で手痛い失敗を犯し反省をしています。その反省の一つが、不良債権処理の問題でした。不良債権が発生し、処理が遅れた原因の一つに間接金融に依存したわが国の金融システムの矛盾があります。行政当局が資金の流れをコントロールしやすくする為に、銀行を管理下において資金コントロールしよう開発されたのが間接金融中心の金融システムです。所謂、資金の適正配分ですね。ところが不良債権処理にあたって、このシステムが弊害になったのです。「そごう」や「フジタ」、「ダイエー」などの経営者が政治力を利用して延命を図ったために、過度の負担を被ったのが銀行です。俗に言う「政・官・民の癒着」が弊害となったのです。つまり本来は企業の倒産で処理すべき問題が、銀行の倒産と言う問題にすり替わり、如いては金融システム不安まで事態を悪化させたのが、90年台の経済低迷の原因の一つでした。そうして銀行へ公的資金を入れざる得なくなったのです。

この反省に立ち、政策当局は「貯蓄から投資へ」資金の配分を変えようとしているのが税制にも表れています。預貯金への課税は20%ですが、株式のキャピタルゲイン(売り買いで生じた儲け)、配当に対しては時限ではありますが10%課税になっています。全てはグローバル化の道につながっています。この意味は肥大化した役人依存体質からの転換なのです。分かりやすく言えば「官から民へ」の転換ですね。わが国の画一化した教育システムも、いずれ変化するのでしょう。株式に投資することは「官から民へ」の流れに合っているのです。仮に間接金融が中心の国でなく、直接金融が中心の国なら不良債権問題など発生しなかったのです。過剰投資した企業が倒産し株主が損を被ったわけで、銀行システムが揺らぐ事はなかったのですね。失われた10年とか15年とか言われる無駄な浪費をせずに済んだのです。さて初回は株式投資をすることは、どんな意義があるのか?ともに考えて見たいと思っております。

下のイラストをご覧いただければ、お分かりいただけると思いますが、私達が稼いだお金は、様々な形で世界中に循環しています。我々は生活する為に食べ物を買ったり、働いたり遊んだりする為に、電車に乗ったり車などを利用しお金を使います。所謂、消費をするわけですね。稼いだお金から消費をして、残ったお金を貯蓄や投資に振り向けるわけです。この生活した後の余剰資金は貯蓄なら銀行や保険会社に行きますし、投資なら証券会社等を通じ事業会社に流れます。前者が間接金融で後者が直接金融です。株式を買うという行為が、どうゆう意味があるのか、考えた事がありますか?

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儲ける為に何気なく行っている行為は、実はその企業の発展のために、資金提供をしているのですね。ソフトバンクの株式を買う行為は、ソフトバンクがネット環境を整備する為に、光回線ケーブルを施設する為に利用されているのです。我々がソフトバンクの株を買うと、当然、需給の関係で株価が高くなります。そうすると、その株高を利用して社債を発行したり時価発行増資をしたりして企業は資金を手当てし、その資金を利用して営業活動をするわけです。株を買う行為は社会の発展に繋がっているのですね。儲ける為に利益を生みそうな企業に投資をします。将来、業績が向上しそうな企業に投資をするわけですね。その企業が社会から求められている事業を展開しているなら、必ず成長するはずです。企業が成長するという事は、その企業に儲けが溜まり、その儲けは株主に還元されます。配当や株式分割、自社株買いなどを通じて株主が潤うのです。村田製作所は公約で株主還元を実行している会社です。4千億円の現預金と設備投資負担を引いて、残りの利益を全て配当や自社株買いを通じて株主に還元すると公約しています。

株を買うということは、その会社の行っている事業活動を応援するという意味があるのです。仮に間接金融なら、銀行がその資金配分を決めるわけです。国債を買ったり企業にお金を貸したり、銀行を信用して資金の投資先を決めてもらうのですね。そうして、その利益還元として預金金利を貰うのです。間に銀行が入っているために安全が確保されています。仮に銀行が倒産しても、一銀行あたり1000万円まで資金は保証されています。だから金利が安くても当たり前ですね。株式を買って投資している企業が倒産したら、投資したお金はなくなります。全てがパーになるのです。倒産するということは、大概、債務超過ですからね。勿論、その企業の負債など全て払い終えて、従業員の給料や退職金など払い、それでも資産が残れば、株主にも残余財産が配分される権利はありますが、それは建前上の話しで、概ね出資したお金はなくなります。だから株式投資は非常に危険があるのです。株式はハイリスク・ハイリターン商品といえますね。

さて、儲ける為に株を買う行為には、このように産業資本を調達する意味合いがあるのです。企業は皆さんが投資したお金を利用して事業活動を行っているのです。儲かる株式投資とは、企業が儲からなくてはなりません。企業が儲かって初めて配当などの株主還元が受けられるのです。さて、株式投資の基本が理解できましたか? だから儲かる企業を探すのではなく、これから伸びそうな企業に、投資することが株式投資で儲けるコツの一つなのです。