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ファンダメンタル(PER)(2006年01月21日)

前回はテクニカル面から「乖離率」の解説をしました。今回はファンダメンタル面から株式の評価の指標の一つであるPER(Price Earnings Ratio)を中心に解説します。

投資は、すべて投下資本に対するリターンが期待されます。例えば、銀行預金もお金を投資することですね。元本が極めて安全で、尚且つ利息が付きます。銀行預金より確かなのは国債でしょう。銀行は民間企業ですが、国債は国が発行する債券ですから、基本的に元本が保証され、利息ももらえます。

r20060121a.gif人々(投資家)は安全で利回りの高い商品を求めますから、基本的に安全性を求めれば競争があり、利息は安くなります。逆に高い利回りを求めれば、安全性が薄れるわけです。右のグラフのように、このリスクとリターンの関係は覆ることはありません。投資家は常にリスクとのバランスを考え、リターンを求めているわけです。ハイリスク商品には株式の信用取引やオプション取引なども含まれますね。レバレッジをかければかけるほど、危険性は高まりますが、逆に儲けられるチャンスも高いのです。

ライブドア問題により、株式の本来の価値が見直されています。そこで今回は株式の価値とは何か?を考えて見ます。日本は長いあいだ、土地の下落によりデフレ圧力に苦しみましたが、何故、外国人は日本の土地を買い始めたのでしょう。表参道などはブランド街に変わっていますし、銀座もそうですね。彼らが土地を買い始めた根拠に収益還元法価格があります。土地を買った代価が何%に回るのか? 概ね地価の底値利回りは20~30%だったようです。経済が回復した現在は、都心では5%~7%程度の利回りになっています。ヘッジファンドが求められている利回りは30%が期待されているといわれています。

この30%は9年で10倍を越える利回りです。18年間、この実績を続けられれば、100万円が1億12百万円になります。投下資本を回収する前提で考えられたのがPERです。しかし企業は利益の全てを配当に回すわけではありません。ここで配当性向に対する考え方が、非常に重要になるわけです。即ち、株主還元率を公約している会社はPERを高く買うことができるし、逆に内部留保を高める会社はTOBの対象になり、経営者の考え方が問われます。

少し論点が外れましたが、それではPERについて考えて見ましょう。
株式市場には色んな投資尺度がありますが、PERとは最終利益を発行株式総数で割ったものです。発行済み株式総数が5億株で、最終利益が100億円なら、一株利益は20円になります。つまり一株辺り、投資した会社は20円の利益を、1年で生んでくれるのですね。継続的に20円の利益をあげ、尚且つ、全ての利益を株主に還元したら、10年で投下資本を回収できる水準がPER10倍です。未上場株の場合はこうなりますね。しかし上場株だと、元本を回収しなくても、株式を売却すればお金になりますからね。つまり上場株の方が、未上場株よりPERが高く評価されて当たり前なのですね。

現在の日本株式の平均PERは30倍で、予想利益で見ると23倍になります。つまり20円の一株利益の会社は、平均的な企業なら、株価は600円となっているのです。

さて、この株価指標が市民権を得ているのは、何故でしょうか? 
会社の利益を内部留保に回すか、従業員の成功報酬に回すか、株主に回すか、中には寄付に回す会社もあるでしょうが、多くの場合の選択肢はこの三つですね。(ここでは設備投資や研究開発費は営業コストとしてみます。)配当性向を30%とみると、PER10倍の会社は、何年で投下資本を回収できるでしょうか? 先ほどの例で考えると、20円の30%は6円ですね。株価が200円だとすると、33年ほど回収に要する事になります。

むかし企業の寿命を検証した調査がありまして、概ね企業の寿命は30年だったそうです。PER10倍で配当性向が30%の会社はPER10倍が標準的な価値なのでしょう。現在、鉄鋼、海運、商社などの業種は、概ねPER10倍台ですね。

ここで成長率と言う概念が登場します。最近、新興市場ではPER100倍を越える会社が多く存在します。小さな会社なので売上を伸ばせ、利益成長が見込まれると考えられているから高い評価を与えられているのでしょう。しかし先ほどの考え方は変わりません。投下資本が何年で回収できるのか? 仮に未上場株ならどうか考えて下さい。

PER100倍の評価の会社に投資したら、30年で回収できる企業利益成長率はいくらなのか? 同じ条件にします。 配当性向を30%とすると、初年度20円の会社が2年目には30%の成長をして26円の利益になり、30%の配当で7.6円の配当を…こうして計算していき、PER100倍の2000円の株価の投下資本を回収できる年数は…? だいたい17年~18年ぐらいですね。企業の寿命を30年にすると、年率17~18%ぐらいの利益成長なら、PER100倍は容認できる数字です。

しかし売上が大きくなれば、通常は利益成長を継続させることは不可能です。100億円の売上が18%の成長だと、14年で1000億円を越えます。通常、多くの会社は放物線を描くわけです。初年度100%成長が、次年度は50%、3年目は20%、4年目は10%となるのが普通ですね。この見極めがPERの尺度を決めるのです。私は半導体設備投資関連のアドバンテストやエレクトロンの株価評価は高すぎないか? と問いましたが、同じ設備投資の工作機械に平均に比べ確かに高いですが、その理由はあります。工作機械のサイクルは、ドックイヤーと呼ばれる半導体の技術革新のスピードに、大きく遅れを取っています。だから工作機械の会社の方が、半導体製造装置の会社より、同じ設備投資関連でもPERが低いのですね。

技術革新は成長率を高めるのですね。しかし近年、半導体の集積率は落ち、以前と同じPERまで株価を高く買うのは、おかしいのでは…とかたるは考えています。逆に技術革新力の高い会社のPERを高く買って良いのですね。例えば東レが液晶向けのIC基盤の配線を、2倍に高める技術を開発しました。2倍の効率ですから、液晶メーカーは挙って利用するでしょうね。技術革新とPERの関係は、関連があります。新技術の開発能力がある会社のPERは高く評価されて良いのです。薬品業界も一緒ですね。ゾロ製品の薬品メーカーと、新薬メーカーでは、同じ利益水準なら、新薬の開発力のある会社のPERが当然高くなります。

一方、同じ利益でも市況に支えられた利益は安定しません。鉄鋼や石油、海運会社のPERが10倍台と低いのは、収益が市況に影響されるからです。最近、かたるBRICsの発展により、資源価格は長い期間、上昇するのではないか?と考え始めています。三菱商事の一株利益推移を見ると、39円→73円→116円→208円となっています。この3年間の平均利益成長率は87%、58%、79%で、平均は74%ですよ。何故、PER10倍台の評価なのでしょうか? ここに株価の上昇の可能性があると考え、三菱商事を買っているわけです。

さて、長くなりました。PERの評価の中で、「成長率」の概念が重要で、「利益の質」の問題が重要で、尚且つ、「利益還元」の経営者の姿勢が、PERの価値を決めていると考えて良いでしょうね。だから、一概にPERを決められないのです。配当性向のなかで、自社株買いをする企業に、かたるが注目する理由を、お分かり頂けると思います。