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量的緩和政策の解除について…(2006年03月04日)
日銀の量的緩和政策の解除が話題になり、無知のためか必要以上に、この事を株式市場は懸念材料化しているように思います。困った現象ですね。自分が株で儲かっている時は、そんなに深刻に考えませんが、自分の持ち株が買値を下回り、損に転じると多少のマイナスが増幅され過剰の反応を生むのです。日銀総裁の福井さんは日銀内の不祥事の責任を取り、一度、外に出された方ですね。エリートとは言え、多少、他人の痛みが分かる人でしょう。心配するに及びません。三重野や澄田、速水のような馬鹿総裁ではないはずです。
あまりに過敏に反応しているようなので、今日の株式教室は金融政策を話題にしようと思います。経済政策の主なものは財政政策と金融政策ですね。財政政策は予算の振り分けを変える政策です。不況になると公共事業投資などを増やし、GDPの割合のなかで政府支出を増やして景気を刺激するのです。もともと景気が良いとか、悪いとかは、人間の感情の問題なので個人差がありますが、GDPが伸びれば可処分所得も増え豊かさを感じられます。
少し分かり辛いでしょうか?
GDPの意味も分からない人がいるかもしれないから…分かりやすくいえば、GDPとは付加価値の合計数字ですね。付加価値とは自分が手を加えて価値を上げたものです。原材料費を引いて、価値を上げたもの。よく例に出されるのが、パンの話し。小麦粉に水を加え、熱を加えパンにして売ると小麦粉の値段より高く売れますね。この原材料費を引いた儲けと言うか、付加価値がGDPの素になります。日本で鉄鉱石や石炭、石油を輸入し、加工して鉄や車を売りますね。この加工賃と言うか…これが付加価値で、その合計がGDPです。この国内総生産が上がれば上がるほど、豊かさが生まれます。(経済的な意味で、ですよ。)世界の国は一人当たりのGDPで、だいたい、その国の文化レベルが分かります。日本は上位ですが、そんなに高いわけではありません。2004年の一人当たりの日本のGDPは36575ドルです。一方、アメリカは黒人などを含めて39934ドルです。BRICsの国々は、ブラジルは3417ドル、ロシアは4093ドル、インドは608ドル、中国は1269ドルですね。
物価に配慮した数字が実質GDPと呼ばれます。名目数字からGDPデフレーターを引くのです。GDOデフレーターとはインフレ率のようなもの。一方、名目数字は物価を考慮していません。僕らは実質の世界で生きているわけじゃありませんね。名目の世界で生きているのです。だから物価が下がってよかったと感じる人は、公務員などの下方抵抗力の強い業種の人達ですね。多くの民間人は物価が下がっても、それ以上に企業の業績が悪化し、賃金カットやリストラに遭いますから、実質的な豊かさを感じませんね。
デフレは縮む世界の話、インフレは拡大する世界の話。インフレになれば積極的に生きる人の出番になります。ホリエモンはやり過ぎで叩かれましたが、借金をして事業をし、積極的に頑張る人が報われる世界の話です。一方、デフレは新事業をしては概ね駄目なんですね。借金をして事業の拡大を図っても、パイが縮む方向だから、余程の実力がないと難しいのです。
こう話したほうは分かりやすいかな?
全体の株が下げ方向なのに、買いで立ち向かうのは難しいですね。やはり空売りの方に歩がある。しかし2003年からの相場を見れば、上げ潮で買いに歩がある世界です。日本は15年間デフレの下げ方向の世界だったのです。しかし2003年から、市場主義者の巻き返しが始まり、小さな政府を代表するような政策に変化したのですね。だから買いで儲かるようになった。
さて、日銀は消費者物価指数(CPI)を量的緩和政策解除の目安にしたのは、過剰なインフレ防止への予防ですね。株の乖離の話しと一緒です。株価は移動平均株価との乖離が大きくなると、必ず乖離調整がありますね。今までに買った人は儲かっているが利食いをしていない人が沢山いるのです。その時間調整が乖離調整です。地価の上昇が話題になっていましたね。上手くやれば、2割、3割の利益が得られた。だから東京では借金をして利殖の話題も多いですものね。7%に回る物件があれば、3%で借りて4%の利殖が得られる。100億円なら4億円が濡れ手で粟の世界です。日銀は澄田元総裁のジレンマを抱えているのでしょう。あの馬鹿総裁は過剰な資産インフレを見逃し、バブルを生じさせた。大変な乖離状態を作ったのです。
その後も酷かった。三重野や大蔵官僚は、今度は不動産の総量規制ですからね。内容のない仕手株のように、高値に放り上げたあとに、ライブドアのようにいきなり即日現金規制です。株が下がるのが道理です。地価の下落と言うより、劇的に…の方が正しいかな? まさにジェットコースター政策ですね。多くの人が安全ベルトも鞫曹ワる所もなく振り回され、下に落ちたのです。秀和や桃源社などの新興企業なら話は分かりますが…大銀行が潰れるまで、悪政は続くのですから…
話を総合すれば、市場主義者の政治家の多くは、量的緩和解除は早いと言っています。僕も市場主義者だから、せめて銀行の優先株返済まで待つべきだと思いますが…。外資系を中心に不動産などで、ぼろ儲けしていることも事実です。なにしろ年率30%の世界ですから…。しかし最近は新規の参入が多く、既に不動産の魅力は大きく落ちています。僕の住んでいる佃の空き地で、ようやく三井不動産が新規事業を開始するようです。分かりますかね? 天下の三井不動産が、長い間、放置していた遊休地を、ようやく開発する段階なのです。中小の会社じゃないよ。三井不動だよ。
でも、量的緩和を解除しても福井さんは当面ゼロ金利を続けるといっているから、株式市場に大きな影響は考えられないでしょう。既に株式市場では1月頃から、外資の資金調達が難しくなっていましたから、アクティブなヘッジファンドは事業を縮小していましたからね。株式市場は既に織り込み済みですね。知らないのは末端の馬鹿投資家だけです。
少し株式教室と話がずれてきましたね。要するに金融政策の変更ですが、そう神経質になる必要はありません。今回の処置は短期金融市場の話です。そりゃ、多少は長期金融市場にも影響を与えますが、金利がドンドン急上昇する段階ではありません。おそらく半年程度の時間をかけて、次の段階が視野に入るのでしょう。現在は銀行同士の短期金融市場での話しです。劇的に変化するわけではありません。株式市場は半年程度しか、先を見ないのです。…と言うことは、2年後3年後には金利が、3%、5%となっているかもしれませんが、少なくとも現時点で、これ以上の株価の下げはないと考えて良いでしょう。何故なら、既に市場では金利高を宣伝していますからね。
確かに半年後に金利が上がり始めれば、借金を抱えている会社は苦しくなるし、金利差が小さくなり、円高に向かうかもしれませんが、今の時点で大きく考える必要はないのです。今後、日銀が公開市場操作を通じて、解除後の金利水準をどの程度にするのか? 影響を見る段階ですね。一部の信用力の低いヘッジファンド(レバレッジの高い所)は、縮小を余儀なくされるでしょうが、既に1月からその現象は見られた訳で、日経新聞に大きく出たということは、終った材料ですね。市場は既に次の展開を模索している所なのです。
金融政策の目玉は公定歩合操作です。預金準備率や公開市場操作は短期金融市場での話し、いずれも通貨の量を決める政策ですが、民間の金融機関は優先株の返済が終盤になり、そろそろ体力が付き始めていますから、量的緩和の解除をしてもそう影響があるかどうか…。最近、多くの会社は社債を発行していますが、随時、金利の固定化を図っているのですね。だから一般企業への影響も、時間さえ掛ければ軽微なのです。
金融政策はアナウンスメント効果を充分に利用し、徐々に変化させることが重要です。民間企業や投資家に対応の時間を与えるのですね。しかし量的緩和の解除が視野に入ったということは、いい事ですね。ようやく積極派の出番が来たのです。社会に貢献できるような企業を興しなさい。そうして一所懸命に努力すれば、報われる時代になったということなのです。ようやく、前向きに動く人たちの出番がやってきたのです。共に頑張りましょうね。