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財務会計(利益の質と在庫品の原価配分)(2006年03月11日)
株価=市場要因+個別要因
により構成されていると考えられます。
例えば、マネーサプライが余計になるとお金の動きが活発になり、リスクが軽減されリスク資産の株式は上がるようになります。これは全体の株価が高くなっても同じことですね。全体の株価が高くなると、市場参加者は総体的に儲けが膨らみ、市場リスクの許容度が大きくなりますからね。
このような市場内部要因以外にも、業界全体の業績が上ブレする要因もあります。原油価格が上がると、備蓄義務があるわが国の石油業界は在庫利益が増えます。概ね原材料費が上がると製品価格は直ぐに上がります。そうすると在庫価格は安いのですが、販売価格は高くなり利益が膨らむ構図になります。今の石油業界をそう言う理由で利益が上がっています。しかし、これは見かけの利益で本当の利益ではありませんね。相場が下がれば、また一株利益も減り、株価は下がりますからね。
業界全般の要因ではなく、個別の企業努力で利益を上げるのが本当の株価上昇と言えるかもしれません。構造改革ですね。日本は長い間、過剰人員、過剰生産設備、過剰債務の三つの構造改革を迫られ、安い賃金の労働コスト競争に勝ち残る為に、生産設備の移転や経費率の削減に努めてきました。そのおかげで贅肉が削られ、利益が出やすい体質になっています。
そんな状態のところにBRICsブーム? 所謂、市場経済新参入国の躍進が世界の経済を刺激したのです。購買力が上がった爆発的な人口を有する新しい市場が生まれてきて、世界経済が活性化し、インターネットや携帯電話などの技術革新の波が一緒にやってきています。日本株が上がるのは、ある意味で自然な状況だと言えますね。上の株価は、市場要因(世界環境)と個別企業の努力により、上がるのは当たり前ですね。
さて、今日の株式教室はファンダメンタルの中で、財務会計に主眼をおきたいと思います。企業会計は「継続性の原則」があり、悪戯に会計方法を変えてはいけないのですが、実は、中にはその会計方法を変更する企業が少なからずあります。
先ほどの例では、日本石油は在庫を総平均法で計算しています。詳しく調べていませんが1バーレル=50ドルぐらいになっているのでしょうか…仮に原油相場が急激に下がり、この水準を割ると、今度は、本業はちゃんと利益を出しているのに、赤字になることがありますね。このような急激な上下が起こるかどうか…微妙ですが。
同じように、パイオニアが大幅な赤字決算になったようですが、値動きの激しいハイテク家電も、常にこのような在庫リスクがあります。仕掛品(製品になってない半製品の状態の在庫)も多く、常に在庫管理が必要になる業界です。半導体の価格なども1週間単位で変化しますから…もっと大げさに言えば、一日の中でも時間単位で変化しているようです。
この在庫品の原価配分の方法は、個別法、先入先出法、後入先出法、平均原価法、売価還元法、低価基準などの方法があると、教科書には書かれています。まぁ、僕らは会計士ではありませんし、有価証券報告書を読んで株価の適正価値を探ればいいので、このような要因が存在し、企業の収益は大きくぶれる事があることを、学んでおけば充分でしょう。
何故、この話しを持ち出したかと言えば、かたる銘柄のベンチャーリンクの将来の株価を探る手がかりが、この会計法にあるからです。実はベンチャーリンクは、たぶん現在も訴訟を抱えていると思います。既に多くの案件は処理済でしょうが…。過去に「牛角」などの人気ブランド店舗の開設を、契約段階で加盟店契約料をもらい売上計上をしていました。しかし実際は、店舗を探す時間も必要で、直ぐには稼動しなかったのです。故に2000年、2001年の急成長が実現できたのでしょう。
おそらく会計士から、この会計法は違法だとクレームが付いたのでしょう。それを処理し違約金を払うために、長い間低迷していた歴史があります。もう一つ、ベンチャーリンクには試練がありました。それは大きくなった牛角の親会社のレインズ(レックスHD)が系列店舗への指導はベンチャーリンクを通さずに、自前でやると言い出したのです。ベンチャーリンクにとって指導料の収入がなくなり人員が余ります。
故に、同社は大変な赤字を強いられました。銀行は手を引きますし…倒産寸前だったのです。それを助けたのは、オーナーの小林さんの手腕なのでしょう。あの金融危機の最中に、100億円も集めたのですよ。みずほが倒産すると騒がれた時期です。外国資本やニッシンなどへ多額の第三者割当増資を実行し試練を乗り切りました。故に、今は実質、無借金なのです。
さて、その会計法です。現在の緩やかな売上の回復などは、契約段階の売上計上ではなく、実際に加盟店を出店して、売上に計上し始めたのです。だから以前のような急成長のイメージをお持ちの方は歯痒い思いを抱くかもしれませんが、確実に成長できる息の長い成長株に育つと思っています。既に加盟契約数累計では大きな実績を確保しています。例えは、七つの習慣の店舗の開校は182教室(2月末現在で211教室)ですが、実際の加盟契約は748教室と4倍以上の契約をもらっていますし、カーブスのフィットネスクラブは立ち上がりなのに、既に61の契約数を確保しています。実際の出店は7店舗(2月末の段階で15店舗です)です。(この契約数と実績数字は第二四半期末の数字が発表されていますので此方を採用しました。)
さて今日は、僕らの株価判断基準は、損益計算書の利益に目が向きがちですが、その収益の影には、在庫品の計算方法には沢山のやり方があり、その選択によって収益が変わることを学びました。健全な利益か? それとも見せかけの利益なのか? この利益の質が問われるのですね。僕らはPERと言うものさしを使って株価を判断していますが、そのPERの倍率は利益の質によって、変えなくてはならないのです。
石油をはじめ、石炭、鉄鋼、海運運賃などの市況品価格は常に変動します。住友鉱山の一株利益が高くても、金価格は常に変動しますね。非鉄なども市況関連です。半導体もそうですね。常に一株利益は継続的に増える環境なのか、それとも一時的な利益なのか? この点が非常に重要な株価判断の尺度になるのです。単に一株利益の水準を気にしていませんか? その影の要因を探ることは非常に重要な事なのです。