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金融危機の根元(2008年11月29日)
この原稿は金曜日の夜に作成されています。
相場は大きな転機を迎えています。景気が急速に悪化している原因は金融デリバティブ商品への信認が薄れたことです。投資銀行業務に対する信認が問われているのです。金融は実体経済の補佐役ですが、金融が主導して実体経済を支えたのがBRICsの成長です。リスクを犯す資金が存在するから経済は成長するのです。しかし…そのリスクにも限度があります。金融デリバティブの歴史は浅く、投資銀行が存在感を浴びるようになったのはここ10年程度でしょう。日本は間接金融が主体で市場経済化してないために、存在が少なくてすみました。1989年に発生していたバブルの清算を未だにしている為に、新たにリスクを取る余裕がなかったのです。
この所の通貨の動きは異常です。全ての原因は金利の安い国から高い国で運用する裁定取引の縮小が原因です。円ドルキャリー取引と言う言葉が存在するように金利の安い通貨を借りて金利の高い国で運用するやり方が逆回転しているのです。例えば、日本の銀行から1%で円を借りて、オーストラリアで5%の国債を買って運用する。そうすると為替水準に変化がなければ鞘の4%が利益になります。このような取引が複雑な形で行われました。円と豪ドルは一般的な例ですが、円と原油先物であったり、商品価格全般もその範疇で運用されていました。更にCDSを組み込んだ商品の利回りは7%とか…サブプライムの絡んだ商品も同じです。簡単に鞘を抜くことが出来ました。買えば、買うだけ儲かる仕組みです。
ところがサブプライム問題で躓いたのです。あっという間に、金融デリバティブ全ての商品で見直しが行われました。その為に円ドルキャリー取引の逆回転が起こっています。その被害を一番受けたのが米国の投資銀行です。火種が爆発したのが今回の世界的な混乱です。しかし…ようやく米国が中心に取っている政策が市場の信認を受けました。その姿が下のグラフです。シティーバンクの資産規模は大きく200兆円を超えます。しかも大手銀行の中でも金融デリバティブが盛んでした。ベアスターンズもメリルも統合され消えましたがシティーだけは残っていました。11月21日NYダウの株価上がりましたが、シティー株は3.05ドルの新安値を付けました。そうして米国は決断します。二度目の公的資金投入と不良資産に対する政府保証です。この政策が市場から信認されてシティーバンクの株価は僅か3日間の取引で2倍以上になりました。そうです、金融デリバティブの資産逆流が止まる兆しが出たのです。だから僕らはようやく新しい時代へステップを踏めるのです。