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二番底形成終了(2009年01月17日)
ECBが0.5%の利下げを実施し2%の政策金利になりました。世界中の中央銀行が必死になって資産圧縮に伴う下落の痛みを緩和する為に大量の資金を供給し経済活動を助けています。財政出動の規模も大きな水準です。経済の教科書ではこのような処置をすれば景気は浮上するのです。
現在起こっている現象を分かりやすく解説します。金融デリバティブの信頼感から過剰な投資を行ってもリスクは軽減されるとの思い込みから、世界中の金融機関がレバレッジを加速させ、借り入れをどんどん加速させました。貸してはならない投資家に住宅価格の値上がりを前提に貸付を可能のしたのがサブプライム問題です。この債権を分離して証券化して販売したのです。ところがこの動きは住宅だけでなく、世界中のあらゆる商品に実行されました。
原油価格をはじめ市場性のあるあらゆる商品に、同様の仕組みが用いられたのです。企業への貸付も同じですね。TOBなどの企業を買収する資金を証券化してCDSと言う証券に置き換え、組み合わせてCDOとして販売することで小さな企業が、大きな時価総額の企業を買収することが可能になりました。その一例はソフトバンクのボーダフォンの買収です。通常なら数兆円もの企業の買収する資金を銀行は貸せませんが、証券化して分散することでリスクを軽減させて販売し、資金を集めたのがCDSの仕組みの一つです。この方法を利用すると無限にリスクを取ることができて資産の膨張を容認します。
つまりレバレッジを増やせば利益は膨らみます。100億円の貸し出しで1%の利鞘なら1億円の利益ですが、1000億円なら10億円、このレバレッジを70倍にすれば70億円の利益が得られます。通常の銀行業務はBIS規制があって10倍程度なのです。しかし投資銀行はその制限がないために過大に拡大していったのですね。レバレッジの拡大に実体経済が追いつかない現象が、米国の住宅価格で先ず現れました。サブプライム問題ですね。残高は2000年時点で560億ドルだったのですが、2005年には5080億ドルと9倍に膨らみます。この辺りで住宅価格の上昇率はピークを打つのです。それでもまだ住宅価格は値上がりを続けますから残高が増えて行き、問題化にされるのは2006年の末になる頃です。2007年には住宅価格は完全に下がりますから、どんどん不良債権化されます。
価格上昇を前提で貸し出されているローンが焦げ付き、リスクを分散した証券は買い手が付かなくなります。この現象が昨年の春の動きです。当初はこれだけの問題だと思われていましたが、他の商品にも形は違いますが同様の仕組みが存在しました。CDSの存在ですね。リーマンの破綻により全貌が明らかになりました。およそ70倍のレバレッジが掛けられていたのです。銀行のリスク許容度は10倍程度なのに…。投資銀行にも規制が設けられる事になりGSやMSなどは資産圧縮に乗り出しました。此方は先行組みです。既に昨年の11月末時点でほぼ適正水準になりました。しかし世界中の銀行が同様の作業を行ったので空前規模の収縮が起こったのです。この現象を解決するには自己資本を厚めにするか? 資産圧縮しか方法がありません。だから株価が大幅に下落したのです。
米国の大手銀行の株価を見ると、一度は圧縮が終了したかに思われたのが年末からの動きです。年初に株価が再び下げていますが、これは弱小の銀行、つまりシティーバンクとバンクオブアメリカのバランスシートの調整が済んでなかったのですね。その為にシティーバンクはスミス・バーニーを売却し日興証券も対象に…バンクオブアメリカは二度目の公的資金投入になりました。
多くの人が間違っていることがあります。今回の資産デフレは過度のレバレッジの修正に過ぎないのです。世界経済は共産圏の参入により拡大しています。当事国の米国は人口が拡大しています。一時的なバランスシートの調整なのですね。需要がなくなったとか…、確かに多少の需給バランスは崩れるでしょう。資源価格が下がりそれをあてにして経済計画を練っていた国の需要は減ります。しかし多くの経済活動の縮小はファイナンスが付かないからなのです。このバランス調整により金融機関が適正水準になれば収まるのです。だから通常の景気後退より回復が早いと考えるのが普通ですね。問題は痛んだ金融機関のバランスシートを修復できるかどうか…
現実の価格が20%の下落なのに証券化された商品は50%以上の下落している例はたくさんあります。そのためにバランスシート調整が済めば、忽ち現状追認になるのですね。勝ち組のGSなどは膨大な利益をまもなく計上する事になるでしょう。スミス・バーニーを買ったMSも同じです。だから三菱UFJ銀行も恩恵にあずかります。大変なことですね。多くの人は大恐慌と現在を比較しています。日経新聞にはロシアとインドの保護主義を掲げ不安を煽っています。しかし既に負け組みも最終コーナーを回ったのでしょう。問題はヨーロッパですが…日本、中国、米国が大丈夫だからね。株は上がるでしょうね。
株価が安いとか、高いとかと言う比較自体がナンセンスです。みんなが買えない水準だから安いのです。こんな事は誰でも分かることです。何時、バランスシートの調整が終わるかどうか? この見極めが株価の上昇を決めるのです。問題が表面化すれば終っているのが市場経済の常識です。