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米国銀行株の研究(2009年03月14日)
米国大手銀行株が上がっており、株式相場も春の芽吹きを感じる展開です。
実体はどうなのでしょう。そこで米国大手6社の動向を考えてみました。
先ず、その前に基本的な銀行の役割を理解しなくてはなりません。銀行はそもそも商業銀行が中心でした。つまりお金を預かり、その資金を貸付に回して利鞘を稼ぐ業務です。ところが1933年制定されたグラススティーガル法(銀行業務と証券業務を分離する)が1999年のグラ. ム・リーチ・ブライリー法により実質的に解除され投資銀行業務が栄えました。この為に収益を求め銀行も金融デリバティブ業務へ力を入れます。経営悪化に苦しんでいるシティーバンクはその筆頭です。倒産したリーマンはもともと証券会社でしたが、多くの金融機関が金融デリバティブに傾斜しました。その為にサブプライムローンの被害から、CDSなどの商品が多様化した金融デリバティブの商品の損害を受けたのです。
日本は株式の持ち合いを整理する為に、失われた時代を経験したのです。
大恐慌の反省として生まれたグラススティーガル法を無視したのが日本の失政の一つです。
その為に現物の裏付けのない先物が売られ、日本村社会が崩壊したのがバブル崩壊の一面です。私が新日鐵と銀行の持ち合いを激しく批判したのは、失われた時代の反省がないからです。同じ過ちを日本の銀行は、またしていますね。これは村組織から会社組織に移った日本の一般知識が間違っているのでしょう。だからグローバル時代なのにブルドックのような不幸な出来事が起こるのです。この延長線はフジテレビ、TBS、Jパワー、日本空港ビルなど…まぁ、今日は別の解説なので。
米国金融の混乱が明らかになったのは2007年3月のニューセンチュリー・ファイナンス(NEW)の破綻が発端でした。サブプライムローンを専属に扱ったファイナンス会社です。しかしFRBの利下げは夏からでした。半年程度、金融政策の発動が遅れましたね。このNEWの株価の動向が怪しくなったのは2月でした。実は2006年に新規の住宅新規着工件数が減り、サブプライムローンの欠陥が明らかになっていました。当初はこの問題だけと思われていましたが、CDSなどの他の金融デリバティブ商品まで信用が失われたのが今回の金融危機です。
このような混乱の引き金を引いた証券会社ベア・スターンズはJPモルガンに、リーマンは解体され野村やバークレイズに、メリルはバンカメにそれぞれ吸収されました。残ったのがシティーバンクですね。1兆9284億ドルの総資産を銀行です。JPモルガンは2兆1759億ドルに次いでの銀行です。経営危機が叫ばれているバンカメは1兆8179億ドル、ワコビアを買収したウェルズファーゴは1兆3096億ドルです。
収益面では以下の通りです。バンカメのケネス・ルイスCEOが二度目の資金注入は間違いだったと悔いた理由が分かるような気がします。概ね収益面ではシティーバンクを除けばそれほど目くじらをたてる程でもないでしょう。株価は明らかに過小評価されているように感じます。
次にこのグラフを見てください。
商業銀行であるJPモルガン、シティー、バンカメ、ウェルズファーゴのリーマンが倒産する前の株価を1として、ゴールドマンサックスとモルガンスタンレーの投資銀行(証券会社)を比較した株価推移を見たものです。このグラフから感じられることは、サブプライム商品などの損失計上は峠を越えたということと、実体景気の悪化からの貸し倒れ損失などの懸念が拡大している様子が窺えます。失業者数が増えるのですから当たり前です。
私はゴールドマンサックスなどの投資銀行株が戻り高値を更新しているので、懸念される金融規制は程ほどになり、今回の金融危機が回避されると、また収益を上げられるのだろうと考えています。昔のように儲からないでしょうが、その分、市場経済らしく競争相手が減りました。自然の淘汰が進み残存者利益が分かち合えるのだろうと考えます。ゴールドマンサックスが一番早く公的資金を返済しモルガンスタンレーが続くと見ている理由は優先株の発行額と収益力からの推察です。株価もその通りに動いていますね。日本の銀行も米国の投資銀行と同じです。株式の損失は一過性の損失ですから株価の戻りは早いと思っているわけです。