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リスクプレミアムと株価(2009年03月21日)
AIGに揺れる米国市場を見ると金融関係者と一般庶民の認識は随分ずれているのでしょう。別に報酬の問題ではなく金融問題の認識の話しです。私は米国は市場経済の国で直接金融が主体の国だと認識していました。しかし小さい時から投資に対し知識がある割りに今回の金融危機にてこずっています。前財務長官のポールソンは犯してはならないミスをしましたし、その後のオバマ政権はスピード感に欠ける印象を抱いています。バーナンキの行動が唯一の米国らしい市場原理を実践しているように感じます。多くの投資家には通常時の中央銀行の資産1兆ドルが今回の金融危機で2兆ドルに膨らみ、さらに対策の遅れからFRBに金融危機回避の責任が重くのしかかり、ついに3兆ドルへ資産を膨らませる事になりました。この意味は重要なのですが…認識が薄いようですね。
現在は金融システムの安全が脅かされドルLIBOR金利が異常に跳ね上がりました。11月の話しです。IRNETでも盛んにそのことを指摘しました。この危機対応から矢継ぎ早の政策によって、なんとかドルの信認を取り戻したのが12月から1月の相場です。基本的に既に米国の覚悟が伝わったのは11月21日から25日の対応です。シティーバンクへの二度目の公的資金注入と政府保証です。ここで株式市場は基本的に底入れをしています。私は銘柄選別を間違っていたのです。日本を代表するユニークな独自企業は世界から評価されておりここが底値になっています。しかし日本政府は信頼感がなく全体の株価は軟調になってしまいました。加えてオバマ政権の清貧思想が疑われ今日に至りました。
私はFRBも清貧思想なのか?疑っていましたが…今回の政策発動によりその疑いは邪推に終りました。しかしオバマ政権への不信は依然続いたままです。FRB単独でも金融市場は元に戻りますが、政策支援がないと過度の負担がFRBに掛かります。そのツケは何れ米国民がインフレのかたちで払う事になります。丁度、日本は失われた時代からの脱出が今も出来ないようなものです。鬱の時代の後遺症は国民の士気をドンドン下げます。今の新興企業の状態を知っているのでしょうか? 可哀想に…頑張っている次世代の若者に過度の負担を如いているのです。私の息子は休みにも拘らず昨日は出社です。毎日、12時から1時が帰宅時間です。朝は8時半に出て…。娘は6%の賃金カットです。分かりますかね。政策の失敗は多くの若者を苦しめ国の国力を疲弊させているのです。1985年から続く失政は…致命的な失敗を避けて何とか延命しているだけのように感じます。
ジャパンNO1と言われた日本独自の年功序列や終身雇用は失われ、殺伐とした時代に突入しています。蟹工船などと言う時代錯誤の小説が読まれる現実を政策担当者は自覚すべきですね。まだ政策手段はたくさん残されています。悪戯に時間を浪費すれば円安、物価高、食糧危機から一か八かの戦争へ。太平洋戦争の失敗を繰り返すのでしょう。私は30年間、株式市場を見つめ、この10年間、真剣に勉強しています。IRNETのおかげですが…日本の仕組みを知ることが良かったことかどうか…。こんな世界にいなければ、別の生き方が出来ただろうに…と感じます。
さて米国の株価はまもなく本格的に上がり始めるでしょう。既に底打ちはしました。皆さんが大丈夫だと認識するのに、どの程度の時間差があるのでしょう。調べてみました。ほんの一例に過ぎませんが一つの事例を元に解説します。下のグラフは10年物の米国債とBAAランクの社債の利回りとその差(スプレッド)を示したものです。BAA債は機関投資家の投資が可能な最低限のレベルです。今の市場は果敢な市場主義者が総やられしています。新しい投資家が参入しない限り需給のバランスが改善されません。新しい投資家とは…普段は株なんか見向きもしない債券投資だけをする人達ですね。この層は非常に慎重です。もう大丈夫だと言うまで行動を起こしません。その目安がこの金利差です。この金利差が拡大している内は絶対に彼らは株式市場に投資はしませんね。この差は経済の体温計だと思って良いのです。
それではここで2002年から2003年のケースを見てみましょう。株価をスプレッドの変化を見てください。底打ちしてからおよそ6ヶ月の歳月が掛かっていますね。今回のケースが同じような展開を辿るかどうか分かりませんが参考になるでしょう。人間の心理は基本的に同じなのです。世の中の評論家はたくさん居ます。しかし本当にそれらの人は儲けているのでしょうか? あのバフェットも間違いをたくさん犯しています。私なんかひどいものです。今回の失敗を糧になんとか新しいステップに行きたいのですが、なかなかこの壁は厳しいようです。米国株の回復がない限り日本株が独自に上がるのは難しいのではないかな?と思い始めています。本当は日本経済の方が被害はなく中国株同様に上昇できるのです。だから若干その差は見えましたね。米国は7000ドルを割りましたが日本は何とか7000円を維持しました。公的資金の買いでも何でも維持できればたいしたものです。本当は在庫整理も終わり新しい展開を米国に先駆けてリードできる筈ですが…。