相場は新しいステップへ(2009年05月16日)
相場の読みには幾つかの仮説があります。将来のことは誰にも分かりません。当然のことですが、私を含めアナリストの予想が外れることは良くあることです。重要な事はどのような前提の考え方があって、そのアナリストがどう相場を予想しているか? この考え方のプロセスを重視することです。ところが多くの市場関係者は外資系のGSがレーティングを上げたとか、下げたとかと言う結論だけを話題にしますが、そのアナリストの考え方のプロセスを問いません。これでは相場で失敗しても仕方がありません。批判をしても良いのですが、根拠のない批判などの評論は意味がないことです。単なる愚痴は面白くありません。
4月27日号の日経ビジネス「株価の回復は一時的」と言うNY大学スターンビジネススクール経済学のノリエル・ルービニ教授は、今年後半も米国のGDPはマイナス1.5%~2.0%と予測しています。更に2010年の回復は0.5%~1.0%だろうと説を述べています。そうしてIMFの予測を用い、米国の資産関連の損失は3.1兆ドル、外国資産の損失は0.9兆ドルと述べています。だから銀行の資産劣化は続きゾンビ銀行が存続する限り信用収縮は続くと述べています。この掲載記事を読む限り、その根拠は希薄で感覚的なものですね。
1、マクロ指標は予想以上に悪化し、世論の統一見解ほど回復しない。
2、企業や金融機関の業績も期待ほど早く回復しない。
3、金融危機の影響が予想以上に深刻さを増す。
このようなものです。しかし最近の現実は違いますね。米国大手銀行の業績は、色んな助けはありますが、黒字になっておりストレス・テストが正しいなら意外に健全です。ただ足元の米国金融は増資ラッシュを消化している最中です。
今回の金融危機とは何か?
基本的には高度の数学を用いた金融デリバティブ技術の開発により、今までリスクを取れなかった商品にまで、リスクをかけて投資が出来るようになったのですね。具体的な商品はサブプライムローンではなく、CDSなどの債務を保証する制度が構築されたから、果敢な信用拡大から投資が起こったのです。特に信用力の乏しいBRICs関連企業などの世界までお金が流れました。故に自己資本の10倍が限度とされていた投資活動が26倍程度まで膨らんだのですね。既に過剰な投資は縮小されました。この様子はGSの決算などから分かります。その為に市場では投資銀行の株価はかなり回復しましたね。しかし一般貸付を行っている商業銀行の株価は、これからの景気減速懸念を見込んで、依然、株価の回復が遅れています。その様子は株価面からも明らかです。
現在はどのような段階に入っているか?
既に不良債権問題がどうのこうのと言う段階ではありません。日本の新聞を読むとストレス・テストがいい加減で、基準が緩いものとの評価がありますが、米国政府保証がついた検査ですから、その結果を信じ、その前提で行動するのが市場原理でしょう。既に経済は次のステップに動いています。実に重要な事が今回、発表されました。金融規制案をまとめ店頭デリバティブ取引をCMEなどに一元化すると言うのです。つまりCDSなどの取引は、今後も認められ健全な発達が約束されるわけです。
一番、最悪のシナリオであるCDSなどの全面禁止処置などが回避され、健全な方向で発展させると言う処置ですね。素晴らしい。流石、アメリカです。本気になって経済を立て直そうと努力していますね。中国のIMF増強論の脅しが効いています。このような背景を考えれば、銀行の増資ラッシュも消化され、今後の株価も堅調な推移が期待できるという訳ですね。金融日の相場は、みずほの増資観測が新聞で発表されましたが市場は好感しましたね。先日の三井住友銀行とは違う反応です。市場に抵抗力が出てきましたね。ただ折角、上昇した三菱銀行の株価が、いとも簡単に100円以上も下がる市場は、相変わらず市場参加者が少ないことを物語っています。