« 相場は新しいステップへ | 最新の記事 | サプライチェーンの恐怖 »
決算数字の見方(2009年05月23日)
決算発表が峠を越えてほぼ終りました。
一般的に1株利益を基準にPERと言う尺度を用いて株価を判定するのですが、この使い方は、景気循環の波動により違うことをご存知でしょうか?
基本的に2006年のような順風満帆の時にはPER評価は低く、今のような時代にはPER評価は高くて当然ですね。環境が苦しい時の利益は価値があり、誰でも収益をあげられる時の利益は価値が薄いのです。更に業績の方向性が問題にされます。赤字から黒字に転換するような回復期の利益は価値が高く、過去最高利益から業績がこれから悪化するような時期の利益がいくら多くても、PERの評価は低いのですね。具体的には今の時期はPER30倍の評価で良いし、最高利益の時のPERは10倍程度が妥当と言うわけですね。
次に決算の中身が問題です。
一応、会社は今期予想を打ち出します。この時期の今期予想は2010年3月まで期間が長くぶれやすいのですね。ましてや100年に一度などと言う不確定な時代の予想など当たるわけがありません。しかし多くの会社は今期予想を控えめに出しています。しかしその前提の計算の仕方が問題になります。例えばこのような表を見てどのような判断をするのでしょうか?
一般的には中身は分かりませんから、みずほの2000億円の利益を確保し他行と比べ遜色ないように見えますが、先ず前提の実質業務純益の目標数字が他行に比べ高いですね。さらに与信関連費用と呼ばれる貸し倒れ損失の発生を低く見積もっています。つまり他行に比べのりしろが少ないのです。だから今期の利益の価値は、みずほは他行に比べ価値が低いのですね。一方、りそなの株式評価損は少なく、如何に前期(2009/3)の決算が株式の持合いによる損失が大きいか示しています。逆説的に言えば今期はこの株式評価損は大きく減るわけで一時的な損失で銀行の決算が悪化したことも分かりますね。りそなの株価は下がっておらず他の銀行は下げました。つまり株価さえ安定すれば銀行は株価を戻して良いわけです。そのような推測も生まれます。そこに注目すればみずほの決算見通しは甘い前提ですが、もともとも収益力は高いとも推測されますね。何故なら、前期の赤字の大半は株式の評価損から生まれていることが分かります。仮にこの評価損がなければ、5000億円台の利益を生んでいた企業でもあるということが分かります。
決算数字を細かく見ていくと、いろんな見方が出来ます。単純にPERだけの評価で株価を判断すべきではないのです。このようなことがヒントになり、株式相場のシナリオが構築されていきます。