サプライチェーンの恐怖(2009年05月30日)
仮説が見事に的中しそうな展開です。
私はこの数ヶ月、四季報(秋号)の2010年3月期の予想数字と現在の会社側発表の予想数字との、あまりの落差をおかしいと感じています。しかし現実の株価は最新の会社発表数字を前提に動いていましたが、最近、株価は修正されています。その理由は、数々のデータから明らかにされています。
情報とは…何か? それを理解する力がないと駄目ですし推測する力が必要です。
株で儲けるとは…何か? 結果論は誰にも言えますが、実際に投資をして実践しなくてはなりません。
しかし根拠のない話しに、何億もの貴重なお金を投じることは出来ません。何故、かたる君が強気なのか? 毎日の「今日の市況」を読んでいただければ分かると思いますが、今日はその根拠の一つである記事が日経ビジネスに載っています。日経ビジネスの購読料は年間2万3千円です。しかし例え一行の記事でも、相場のヒントになれば安いものですね。今週号(6/1)の「サプライチェーンの盲点」と言う記事は、予てから述べている仮説の正しさを証明する記事の一つでしょう。
要するに世界中の生産品は、サプライチェーンマネージメントで管理されており、末端の製品発注が、製造段階でどのような現象を生んでいるかと言う記事です。米国大手家電販売のベストバイの失敗が、世界のメーカーに及ぼす影響を事例に解説されています。TSMC(世界トップの台湾の半導体メーカー)のリック・ツァイCEOは米国の個人向け電子機器の販売は、昨年第4四半期で8%減、しかし製品出荷は10%減、電子機器向けの半導体の出荷は20%減と述べているそうです。人間は生きているわけで、突然、死ぬわけがありません。世界の人口が突然半分になることはありませんが、日本の製造業は5割ダウンの減産行動をとりましたね。その為に多くの会社が赤字計上しました。現在の日本企業の前提は、ピーク時の7割の生産で利益を出せるように行動しています。
奇妙なのですね。
金融不況の当事者である投資銀行が回復途上にあるのに、実体経済の動きは鈍いのです。その現象は株価に現れています。投資銀行の株価は金融危機発生時に急落しましたが、既に立ち上がり87%の水準まで株価は回復しています。ところが実体経済の影響を受ける商業銀行は54%しか回復していません。この差が続く限り株価は戻り続けると思っています。つまり実体経済はマスコミの世界不況報道の為に、実態以上に警戒感を生んだと言う仮説ですね。その影響が日経ビジネスの記事(現実)にも実証されています。
サプライチェーンマネージメントの話しはいいですよね。解説しなくても…。簡単に言えば企業間を越えて、在庫を持たないようにする為に、末端の発注が最終原料メーカーまで伝わり、瞬時に生産調整が行われる仕組みです。世界中の一流企業は、ネットで物流システムが構築されていますからね。通信手段が飛躍的に向上しており、世界中の情勢が瞬時に分かります。先日の豚インフルエンザでも分かるように、メキシコの患者数が直ぐに把握できるのです。情報は瞬時に伝わるのです。だから適正な在庫管理がさせるはずですが…今回の金融危機では、末端販売会社の混乱が増幅され、誤った情報が増幅されて世界中のメーカーに波及した現象なのです。
最近のデータを見れば分かります。中国の4月の乗用車販売が、前年度比37%の伸びになっているとか…、山のようにあったシャープの在庫が一気になくなり、フル生産に入っているとか…。今日の日経新聞には薄板鋼板の在庫が2年5ヶ月ぶりに400万トンを切るとか…。金曜日には、物流の要である海運株が大きく上がっていましたね。現実と過剰な金融危機報道とのギャップが生んだ修正が、当面の相場のテーマなのでしょう。その意味で先日発表されたアメリカの消費者信頼感指数の変化は、意味のあるグラフなのですね。変化を感じてくださいね。