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米国金融規制について…(2010年01月23日)

米国金融規制について考える日経新聞の報道の仕方では「突然の新規制」となっていますが間違った報道ですね。構想自体は前から言われており市場はかなりの部分を織り込んでいると思います。直近のマサチューセッツ州の上院の補欠選挙で46年も議席を守ってきた民主党の地盤を失っており、現実的な金融規制の実現は難しいでしょう。

民主党の構想の裏ではボルガー元FRB議長が関与していると言います。1933年に施行されたグラススティーガル法により商業銀行業務と投資銀行業務が分離され、その垣根が外されたのが1999年ですが、金融デリバティブ機能の認知不足と言うか市場の未熟さ故に金融危機が起こりました。しかしCDSをはじめとする新しい金融商品が、世界経済を加速させていることは事実です。だから新興国は豊かになりました。リスクマネーが世界に注入されたのはこの金融デリバティブのおかげです。

規制の内容はボルガー氏の過去への郷愁なのでしょう。
時代は変化しており過去の仕組みに戻ることはないでしょう。現実的ではないからです。既にCDSの残高だけでも、すごい金額ですから単なる進化になるのでしょう。発表されている内容はロイターによると以下の通りです。

 ◎銀行、または銀行を傘下に持つ金融機関によるヘッジファンドおよびプライベート・エクイティ・ファンドへの投資や出資、保有を禁止。

 ◎預金だけでなく、それ以外の資金調達源も考慮に入れ、金融セクター全体に対する銀行の相対的な規模に制限を設ける。預金に関しては、特定の銀行にリスクが集中するのを防ぐため既に上限が設定されているが、現行規制では他の資金源に制限はない。

 ◎銀行の自己勘定取引を禁止。ただ、ホワイトハウスのある当局者によると、マーケットメーキングの一環としての自己勘定取引は認められる。

「提案に対しては、民間企業に対する政府の規制強化に反対する共和党や、金融業界のロビー団体が反発する公算が大きい。オバマ大統領は、経済再生諮問会議議長を務めるボルカー元連邦準備理事会(FRB)議長にちなんで、新規制案を「ボルカー・ルール」と呼んでいる。同議長は、預金・融資業務を担う金融機関と資本市場での取引や投資銀行業務を手掛ける機関の間の垣根を復活すべきとの立場を示してきた。」と報道されています。

さて反応は市場が決めるものです。
FRBの高水準の資産構成が物語るように米国金融はICUからは抜け出しましたが、依然、入院状態と言うイメージです。投資銀行のゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーと商業銀行のJPモルガンは、どうにか正常化の通院状態と言うイメージです。
この時期における金融規制の発動は理想としての概念は理解できますが、現実的な対応ではありません。市場経済では株価が下がりますからオバマ大統領は、この選択は出来ないと考えます。仮に強行すれば内容にもよりますが、日本のように「失われた時代」を経験する事になるでしょう。オバマ大統領は元日銀総裁の三重野さんと重なる印象を抱いています。経済を立て直すには金融機能を活用しなくてはなりません。少し考え違いしていると思います。

市場の動向見ると、どう考えてもまだ市場での評価は定まっていません。JPモルガンの出来高が増えたのは昨日ですが、様子を見ないと市場への影響は分かりません。短期調整ですむ可能性が高いとは思いますが、株価位置も高く、しばらくは注視が必要でしょう。しかし日本経済への影響度は中国などの新興国がメインですから、影響は受けますが米国よりずっと軽い事でしょう。ここで重要な事は米国市場を注視することです。出来高を伴い大きく下げるなら更なる注意が必要です。その意味で週明けの米国市場の金融株の出来高が注目されます。

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