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失われた時代の背景1(2010年01月30日)

先ずレポートを書くにあたって日本の「失われた時代」の背景には様々な問題があります。簡単に列挙すれば、資産デフレをはじめとするデフレ構造。日本の清貧思想の要求でそれに付随する過剰な法令などの制度。他人依存型の教育方針。これらを方向付ける政策不振などが原因で20年にも及ぶ「失われた時代」が生まれています。

歴史的にみると構造改革には世代交代が必要で、その時間が20年~30年ほど掛かります。近年における構造改革は明治維新でしょう。黒船来航から江戸幕府がゆれ、時代の流れの中で開国を迫られグローバル化していきます。日本には江戸時代の村型社会構造が強く残っており島国で生きていく為の知恵があります。所謂、「しきたり」などの古い考えが行動を縛っています。「富国強兵」などのスローガンから会社型社会構造が生まれ働く日本人が高度成長を支えました。そのおかげで戦後の奇跡の復興が成し遂げられます。

今は模索している段階なのでしょう。ようやく新しい方向性が生まれつつあるのが分かります。インターネットの普及で情報が公開され、真実への戸惑いが現体制を揺さぶっています。多様化時代に日本は、一度、落ちる所まで落ちている印象です。自民党には、まだその自覚がないようですね。古きよき時代への郷愁を求める考え方があるようです。情報の公開化により、日本人が島国からグローバル化に進化して新しい時代認識が広がっている過程が今の時代なのでしょうか? 島国から国際化は日本人の昔からのテーマでしょう。

たくさんの失われた時代の要因が重なり合って20年にも及ぶ暗黒時代が続き、ようやく政権政党が変わり、まもなく方向性が見えてくるように感じています。ラッセルは辛いものです。道のない雪山を先頭で道をつくるのですから…。今はそんな印象を抱いています。株式市場を通して、長年、日本を観察してきました。株式市場は日本を凝縮した鏡のようなものですから…。1989年に日経平均株価が38915円を付けて以来、他国はベルリンの壁崩壊により「平和の恩恵」を享受し新高値を更新しましたが、なかなか日本は低迷から脱出することが出来ません。その理由は政策が貧困だからです。今回はその要因の一つである日銀の行動に的を絞って考えてみようと思っています。

私が「ベースマネーと株式市場の仮説」をたてたのは、日経ヴェリタスのマーケットアイに連載されているミルトン・エズラッティ氏(ロード・アベット社 パートナー チーフエコノミスト兼ストラテジスト)の「FRBと金の賭け」と言う昨年12月28日のレポートを読んだのがきっかけです。このレポートの中で『これまでに供給された流動性について対応が必要なのは間違いない。過去1年にFRBは準備をなんと255%増やした。規則によって義務づけられている準備を超過した分は295%拡大し、銀行の準備と通貨の流通量の合計であるマネタリーベースは77%増加した。狭義のM1はこの間やはり13.5%増加した。こうした増加は、最大でも年間6%程度の伸びで十分とされる経済の長期的かつ根本的なニーズをはるかに超えている。インフレは根本的には、あまりに多くの資金があまりに少ない商品を追いかけているために発生する通貨現象であるため、現在のインフレ懸念の高まりと、7月に経済に対する最も強い不安が後退し始めてから金が30%近く上昇したことは容易に理解できる。』となっていました。

この部分を読み、それまでもFRBが資金拡大を実施していたことは分かっていましたが初めてその量に改めて驚いたわけです。中央銀行の役割と言うのは大切なものだな。と改めて思い中央銀行の政策を調べていたのです。どうも日本の資産デフレをはじめとする低迷は、日銀の責任が重いのではないか?と考えるようになったのです。「失われた時代」を作った張本人は日銀だと思うようになっています。

1985年プラザ合意が日本崩壊の切っ掛けです。
このプラザ合意は輸出主導型の日本に改革を迫るもので、内需拡大を謳った前川レポートなども、その時期に生まれています。当時の日銀総裁の澄田氏は、輸出企業擁護の為に円高を沈静化させるべく、低金利と為替介入を実施して過剰な流動性を供給し続け資産インフレを見逃します。何故、澄田氏は金融政策を間違ったのか? この時期には物価はそれほど上昇したわけではありません。消費者物価も、企業物価指数も下のグラフのような推移です。

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故に澄田さんは為替動向に重点を置き、金利平価説を採用し金利を下げ、為替対策として介入を実施し非不胎化政策を行います。故にベースマネーは増え続け資産バブルの要因を放置しました。当時は土地神話(土地は下がらない)が存在し土地担保融資が一般的だったのです。

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この結果、株と土地は上がり続けバブルが形成されます。バブルとは他人資本(借金)で資産投資する部分を示します。不必要な資産投機の源となりました。その様子は下の資産価格の地価の水準と株価の動きにも現れています。

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そうして三重野さんが日銀総裁に就任され、このベースマネーを減らし始めます。更に金利も上げるのですね。「株や土地が下がっても経済に影響はない」と言う発言は名言(迷言)になりました。歴代の総裁が物価にだけ重点を置き、資産価格の重要性に対し認識が不足していますね。

今の白川さんはこの反省があるのかどうか…今の日銀総裁は株式や土地の資産価格を、金融政策の決定要因に考えてないのかもしれません。如何に景気動向に地価が影響を及ぼすか?日米の地価価格比較からもその重要性がわかります。

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私は証券マンですので、お金持ちに接する機会が多いのですが、普通の所得でお金持ちになった人は日本では居ません。基本的に地価が上昇しお金持ちになった人が一番多いのです。二番目が株式の上場などです。つまり資産価格の高騰によりお金持ちになったのですね。日々の所得には税金がかけられ、そうお金を残せるものではありません。やはり株や土地がお金を得る原泉になっています。経済が疲弊しているのは1989年に起こったバブルの反省が過剰に存在するからですね。長くなりましたから、本日はここまでにします。まだ続きますが第二弾は来週にしましょう。ここで重要な事はベースマネーの増減により資産価格が上下するという認識を持ってもらえば充分でしょう。