未来かたるが開催!みんなによく分かる

株式教室

« 失われた時代の背景1 | 最新の記事 | 世界から見た自動車産業 »

失われた時代の背景2(2010年02月06日)

先週はベースマネーの話しをしました。
ベースマネーは通貨供給量の元です。この数字を増減させる事により経済活動のコントロールが出来ます。経済活動が活発になれば借り入れを起こしても儲けようと思いますから、裏返すと順調に経済成長が続くと言うことは銀行貸し出しが伸びる事になります。日銀の使命は安定した物価と経済成長を両立させなくてはなりません。つまり物価が安定しているなら経済成長率にウェートを置く金融政策を採用しなくてはなりません。ところが「流動性の罠」に陥った状態なのに自分たちは一生懸命に頑張っている。後は財政政策の問題だと政府に景気の匙を投げている状態です。

r20100206a.gif

この傾向は銀行貸し出しに現れています。銀行貸し出し推移から見るとバブルの清算が終わるのは実に2005年なのですね。1989年の発生したバブルの崩壊の清算が16年もの時間をかけてようやく終るのです。しかし今でも「りそな銀行」は公的資金を完済していません。アメリカの実例と比べてみれば分かりますね。金融危機の時は迅速な対応が不可欠なのですが、国民感情に配慮するあまり、当時の宮沢、竹下などの歴代の総理や大蔵大臣は対応できなかったのです。住専が良い例ですね。まぁ昔のことは、兎も角、ここでは日銀の資産価格に対する認識が不足しているが為に、金融政策を間違い続けている現状が分かります。

先日、1999年当時の日銀の議事録が公開されました。9月21日の議事録によれば速水氏は「責任の持てる緩和処置はこれ以上考えにくい。効果が期待できない政策に踏み切れば日銀の信頼を損なう」と述べて金融緩和に踏み込みませんでした。当時は世論の高まりを受け市場は日銀の金融緩和を催促していたのです。そうして9月には宮沢大蔵大臣と速水日銀総裁の異例の会談が設置されたほどです。それにも拘らず緩和処置は講じずに結局は最後に超緩和政策に追い込まれます。

先週の日経新聞にも国債買い入れを拒んでいる白川総裁の動向が載っていました。長いデフレ社会の構築により公定歩合操作(今は違いますが…)が効かなくなっています。金利を上下させる余地はなく、流動性の罠に嵌まっている状態ですね。正常な貸し出し行動が起こるまで緩和しなくてはならないのです。20年も続いた清貧思想のデフレ政策を維持しているので、なかなか変化は生まれません。ようやくバブルの清算が終わり、外資系金融のおかげで銀行貸し出しが伸び出した2006年に福井さんは出口戦略を強行します。

r20100206b.gif

この行動には1930年の大恐慌の反省がないですね。日本は二番底に陥りました。この状態に、この度のアメリカ発の金融危機が重なり日本経済は壊滅的な打撃を受けますが、幸い日本はバブルの反省により、世界的な金融危機は一部の金融機関だけのごく小さな損失で被害は最小限で済みました。問題は世界的な金融危機ではなく国内の清貧思想の浸透にあります。諸外国は適正な金融政策を実施し、経済は立ち上がったので輸出産業は回復しましたが、依然、国内金融政策が不備の為に内需が弱いのですね。大手50社の建設受注残推移を見れば分かります。建設資材のH型製鋼の価格推移を載せるまでもないでしょう。鹿島建設の株価が200円を割れている現状は、何も公共事業を削っているだけが原因ではありません。国土交通省は建築基準の緩和に乗り出しましたが、肝心の金融庁は、依然、コンプライアンスを理由に同じ引き締め状態です。今日は日銀の政策だけに的を絞っているから、あえて書きませんが経済全体は萎縮経済構造なのです。

r20100206c.gif

株式市場を見ていると分かります。黒字で配当をしている企業の株価が純資産倍率1倍を割れているのは、明らかに異常な価格です。通常はTOBが掛かりますがブルドックのように後出しジャンケンをする国だから、正常な感覚の資金が入ってきません。村論理を排除しグローバル感覚に日本を構造改革しないとなりませんね。少なくとも日銀総裁や財務大臣などは実力者を充てるべきです。日本に適任者が居なければグリーンスパンにお願いしても良いし…少し高齢ですね。兎も角、外国人でも構いません。物価だけでなく資産価格にも目を向けて、正常な貸し出し増加率が定着するまで、目安はGDP規模と同額の水準まで日銀は金融政策を緩和し続けなければなりません。論理的に自分の考えが正しくとも、市場が反応しなければマスターベーションに過ぎません。政策担当者は市場が反応して、初めて仕事をした事になります。かたるも同様の反省をしているわけです。

r20100206d.gif