ヤングレポート(2010年07月24日)
経団連の米倉会長は日本版の「ヤングレポート」を纏めていると言います。
このレポート作成時期、米国は双子の赤字に苦しみ経済が停滞していたそうです。しかしヤングレポートなどの提言により、米国経済は活力を取り戻し株価も上がってきました。基本的に米国はGDPの成長率を重視しています。1985年の話です。丁度、円高を容認したプラザ合意の時期ですね。当時の株価を見ると1986年にかけて上がり始めています。このレポートの内容は此方を参照してください。
一方、1990年から1993年、そうして2007年から2009年と日本は二段下げを演じています。内外価格差の是正や構造改革の失敗が永遠と続いています。しかし昨年、民主党政権が誕生し、経団連を中心とする産業界は意識改革を推進しているようです。2003年からの日本経済の浮上は、小泉・竹中改革の期待で外国金融による浮上でした。しかし今回はこの外的な力は期待できません。日本独自で自力による変革をせねばなりません。
今期の決算のスタートは好調です。
ツガミの成功を真似する企業が続々と現れています。残念ながら、既に製造業の雄と称えられたトヨタも3流企業の仲間入りです。車を売るために多額の販売奨励金を使うようじゃ、嘗ての勢いはありません。自動車産業ではホンダの構造改革は進んでいるようですが、此方も技術力を誇っていたのに先行開発したHVでトヨタの後塵に拝するようでは負け組みの仲間入りのイメージですね。辛うじて日産が戦略的な動きをしているように感じられます。
自動車産業は巨額のお金が動きますから、関連企業が続々と生産基地を移転させている現象は、日本全体が移動しているような状況ですね。先日のタイヤメーカーの増産投資などを見ればわかります。だからアジア経済の失速はありません。さらにインフラ整備が未了な中国経済を心配するのも過剰反応でしょう。このような状況下で、なかなか日本独自の産業が育ちませんが、ここに来て元気が良いのがグリーやDENAと言う携帯コンテンツ産業ですね。両社はTVコマーシャルの利用率1位、2位が示すように足元景気が絶好調なのでしょう。ノキアが沈みアップルが浮上する背景にはスマートフォンの活用があり、3Gが進んでいる日本はこの分野で世界トップです。
もう一つ注目されている産業があります。
ただ残念ながら日本は辛うじてトップグループに属する程度で、首位争いは熾烈です。それは組み立てソフトの分野です。三菱電機の誇るIGBTモジュールは世界首位です。皆さんにはパワー半導体と言う表現の方が、馴染みは良いでしょう。カスタムICと言うか、組み込みソフトはDRAMなどと違い、長年の技術蓄積がものをいう分野です。サムソンにDRAMやフラシュは負けるのですから、そんな汎用品で勝負をしないでインテルのような分野を育てるべきでしょう。しかしこの分野でも東芝が英ARMに敗退し、残念ながら競争に敗れています。統合に追い込まれたルネサンス・エレクが辛うじてトップグループに位置していますが…、不要な汎用品開発を捨てて、世界トップの車の半導体などに特化すれば良いのですが、どうでしょうか?
東芝は追い込まれて構造改革を先行させましたが、その後の状況は楽観できませんね。西室、岡村、西田、佐々木と、佐藤氏が提言した改革を次いでいます。劇的な改革を実行した西田氏の偉業でしたが構造改革途上で今回の金融危機で遭遇し、集中投資した半導体部門が大きく痛手を受けました。しかし東芝に限らず、確実に日本企業は総合力から分野別の特化を始めています。要するに総合的に開発する余裕がなくなったので、仕方なく追い込まれているのが日立などの現状でしょう。野村證券も営業キャッシュフローが毎年赤字のように、追い込まれて投資銀行業務に進んでいる現状です。
今、新しく起こっている流れは、もう少し改善されない株価に変化として現れません。2012年にソフトバンクは借金の呪縛から抜け出せます。既に格付けも上がり金利負担が軽減し始めましたが、お金がなくて設備投資を怠ったために顧客満足度では最下位です。少し金利負担が軽減し始めたので、今は一所懸命に改善しているようです。残念ながら東アジアのグローバル競争を推進する経営者は、日本では孫さんぐらいでしょう。NTTは資金力を持っていますが肝心な意欲がありません。情報網を整備し活用すれば日本はアジアで中国の覇権を阻止し躍進できるチャンスがあります。
中・長期構想はこんなイメージです。
だんだん懸念された景気の2番底懸念は薄れていくでしょう。ただ日本企業全体が構造改革途上で、株価が大きく反応するのはまだ先の話です。しかし米国でも見られたように、まもなく単純平均株価がどんどん下がり続けるような株価の最悪期は脱出するでしょう。まぁ、横這いからステージを上げられるかどうか…。ここからの民主党政権に期待する次第です。