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2010年11月27日

政策効果の検証

世界の株価は二番底懸念からQE2への期待感場面に移行したのでしょう。
この量的緩和金融政策、第2弾の結果は残念ながら直ぐには分かりません。日銀は21年ぶりにデフレ対策に乗り出しましたが、残念ながらFRBに比べ意欲が希薄で、責任感も感じていないので金融セクターの株価の動きが鈍いのでしょう。本来、米国並みの決意表明をすれば、邦銀の株式をはじめ証券株も反応するのでしょうが…。発表された現状程度のデフレ対策では効果が限られると市場は判断したのでしょう。しかし悪くとも…これまでの下落基調からは脱出し、底這いの動きに転換したと思われます。

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仮に日銀がリート並びにTOPIX型のETFへの投資額を増やし、的確にデフレ資産対策を実施すれば、必ず金融セクターの株式は上がると思われます。何故なら、総資産が大きな金融セクターが一番恩恵を受けます。何度も述べますが、総資産200兆円を誇る三菱UFJはインフレの恩恵を受けますね。損保や生保なども同じです。もともと資産運用をする金融セクターにとって、デフレ社会の継続下では、いくら努力しても無駄ですね。何故なら、1年間、汗水たらして働いて1兆円の利益を稼ぎ出しても、足ともで200兆円の総資産が0.5%目減りするだけで、1年の努力が水の泡に消えます。

黒字で有配企業の株価がPBR1倍以下の評価しかないのは、明らかに政策の失敗を市場は警告しています。日銀はようやく政策転換をしましたが残念ながら効果は薄く、米国のQE2の政策の恩恵を受けるグローバル企業中心に株価が戻ってきたと言う評価が、今の株式市場の実体でしょう。その寄与度が高いと思われる新興国相手の設備投資がらみの銘柄であるコマツやファナックが人気になって上昇したのでしょうね。両社とも既に割安ではありませんし…充分に評価を受けており、QE2の政策進展により相場は活況期なのです。裏返せば…つまりFRBの政策が正しく、QE2が効くならば、株価はやがて下がることを意味します。この辺りは難しく中国の国内政策にも関連しますから、FRBだけではありませんね。

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さてギリシャからアイルランドに飛び火し、イギリスでは緊縮財政に取組んでいます。ケインズが生きていれば、どんなに嘆いたことか…彼は財政政策により総需要を生み出そうとしていましたが、壮大な実験がケインズの生地で実施されています。異論はありますが…90年代に日本はあれだけ財政出動しても効果はなかったですね。それ以上にガラパゴス化の鎖国政策が強かったのです。産業障壁が内外価格差を生み現在も改革を阻んでいます。ライブドアのフジテレビへの逆襲や楽天のTBSへの攻撃が悉く打ち返されてきました。まぁ、日本は兎も角、ケインズの生きている時代とは異なり、グローバル化が進み金融技術が進んでいるので、イギリスの政策は一つの考え方としては面白いですね。まぁ、この辺りの評価は学者先生に委ねるとして、株屋を辞めるかたる君は目先投資に向うわけです。

騰落レシオやその他の指標を見ればわかりますが強い相場ではありません。一部、人気株は生まれていますが、部分物色程度なのでしょう。まぁ、それでも…10月までの完全死のような相場に比較すれば、血が通い始めたと言う印象を持っています。今日の市況にも書いたと思いますが、この時期、既存概念が相場観の妨げになります。これまでの相場展開を忘れ新しい気持ちに望むべきでしょう。

おそらく12月から日銀がETEなどへの投資を始めると思いますが…お公家の白川様に株屋感覚は皆無でしょう。きっとFRBのバーナンキにも批判的でしょうね。ただ前にも述べましたがQE2の政策は新興国の所得をあげ日本との格差が縮みますから内外価格差が縮まりデフレ圧力が薄まりますね。この時期に少ないとは言え、日銀の21年ぶりの金融政策の転換は効く筈ですから、株式が下がり続ける心配は薄れました。問題は底這いから立ち上がるかどうか…日本市場を見ると、QE2は一定の効果を上げているようです。しかし金融セクターの動きは依然、鈍いですね。外人投資家が総資産効果を評価するような力強い政策を実施すれば、彼らはいくらでも銀行株を中心に株を買い続けます。もともとお金など無尽蔵にあるのです。金融セクターの株価に債券金利などの動きから目が離せないのでしょう。

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投稿者 kataru : 13:58 | コメント (0)

2010年11月20日

仮説を信じて行動を…

多くの投資家は銘柄情報を求めますがそんなものは決まっていることで、大切なのは時代の流れをどう読むかと言う大きな流れの考え方ですね。先日IRNETのページビューがどのくらいあるのか調べたら、ベンチャーリンクなど大きく外れ続けている割に読まれている方が多いのだな…と思いました。更に海外からアクセスされ読まれている方も居られるのですね。インターネット時代だな。まぁ、長い時間やっているからでしょう。

基本的に景気循環と企業業績の関係は決まっています。
本来、小泉内閣の時に靖国参拝などせずに、中国と程よい関係を築いていれば、日本の建設会社の大相場があっても不思議はなかったのです。今もまだアジアインフラで可能性は残っています。先日、日本の高速道路会社が海外に道路網を築くアイディアが出ていましたね。最近では水のビジネスもそうです。環境などの関連ビジネスの世界では、日本は優位に立っておりアジアのインフラ政策に役立ちます。

なにも液晶やEVなどの車の分野だけでなく、社会基盤作りの技術力は世界でも指折りで日本の銀行は貸出先を探してお金が余っていますから、アイディアや政策支援があれば、再び前向きな社会を構築できます。法務大臣の発言をめぐり無駄な時間を使っているよりもっと有意義な使い方をすればいいのに…悲しい現実は続きますね。

光の道構想も同じです。会社の分離は消えたようですがソフトバンクの孫さんが出来るといっているのですから、基本的に彼の考えが正しくのでしょう。一度やらせて見れば良いのです。それをやる前からゴタゴタと…。仕分け作業も同じで、看板を変えて予算を請求するなど…復活を求めている風潮があるようで…これは犯罪だと思いますが、これからメディアの論調はどう変化するのでしょう。

日本は過渡期で、もう少しで変化できるのだろうと思っています。どっち道、社会保障費は年々増え続け最後の行く末は決まっています。何度も時間がないとIRNETでは述べていますが…早く新しい体制にして頑張る人、努力する人が報われる社会構成に変えないとなりませんね。株屋の世界を内部から変えようと努力はしてみたが…実力が足りず…社会批判に終始するようじゃいけません。株屋を辞めてみて…自分自身の考え方が変化するかどうか…。これからの内容を見ればわかるでしょう。

日本はプラザ合意から「仕組みの社会」からの脱出に失敗し、依然、混沌としています。仕分け作業の経過を見ても分かるように、時代の変化を感じている人と、居ない人の争いが起こっているのでしょう。株価はある意味で正直ですね。正しい政策を選択すれば株価は上がり、間違っていれば下がり続けます。皆さんも相場を考える時は仮説をたてて行動すると良いですね。未来かたる(語る)ですが、先のことは誰にも分かりません。
いつもかたるは理想論で行動してきました。こうあるべき論です。正しい政策を信じ、その方向性の実現に賭け行動します。しかし実際の政策の選択は違うことが良くありますね。故に政策批判になりましたが…政策が間違っているなら、その政策に逆らうことなく行動すれば利益を得られるはずです。株屋としては恥ずかしい行為かもしれないが、投資家なら見方が大きく変わるかもしれません。まぁ、かたる君の人生も実験です。

米国ではQE2と言う実験を、仮説の下で実行しています。批判も多いですね。バーナンキの支持論はあまり見たことがないのです。でも僕は正しいと思っています。日本人だから…僕の仮説はドルがワールドマネーだから…この流動性増加は日本を救う政策だという仮説ですね。何故なら新興国のインフレ率が高まり、GDPの価格差が縮まります。既にニトリやユニクロでかなり縮まっているので、今回の流動性供給が最後の峠になると考えています。だから上海のGDP水準が問題なのです。同じ土壌なら中国人に負けるわけがない。いくら資質が下がったといっても、やはり日本人は優秀だと思っています。

先日の小沢対菅の争いも、時代観の相違の対立のようにも思えます。まだ残念ながら旧体制派の勢力が上ですが時間の経過でやがて変わります。幕末から明治維新のような感覚ですね。皆さんには分かりにくいでしょうが…QE2が効くなら(日銀の資産デフレ対策を含め)金融セクターの株価を買えば良いのですね。株なんて簡単ですね。問題はどの仮説をメインに据えるかどうか…それだけなのです。

投稿者 kataru : 12:26 | コメント (0)

2010年11月13日

QE2(量的金融緩和政策第2弾)

最近思うことは日本の新聞はレベルが低いと感じるのです。なかなか現状にあった意見を見ることが少ないのです。的外れな意見を良く掲載していると思うのですね。ウォールストリートジャーナル(WSJ)の日本版を読むようになって既に1年近く経つのかな? 本当は…フィナンシャル・タイムズも読みたいと思うのですが、残念ながら僕の英語力では意味を成しません。最近は翻訳機能も充実していますが…まだまだです。皆さんも是非WSJを購読して欲しいと思います。世界の基準は年間16000円。日経新聞の1/3です。ニトリやユニクロの登場で内外価格差は縮小していますが…まだまだですね。既得権力に守られるマスメディアはガラパゴスの世界です。日本人はもっと情報に対してお金をかけるべきですね。物に対してはお金をかけるのですが…自分自身を高める情報は目に見えない価値なので購買意欲が湧かないのでしょう。だから三流の記事かどうかの見分けも付きません。故に詐欺のような商法に騙されます。世の中に甘い話など…ある訳がありません。リスクとリターンの原理は普遍です。

日本が失敗しているのはフローの収益(毎年、稼ぐ所得)ではなく、ストックの収益(資産から得る所得)を軽視していることです。金融セクターを軽く見る政策は間違っていますね。「不労所得」と言って金融の力を無視しているから、日本は凋落の一途なのです。考えてみれば分かります。官は国民からの蓄えを預かって運用していますが、非効率だから国民は疲弊しています。世界で一番効率の良かった国が、プラザ合意を境に政策を誤り疲弊するばかり…。全ては情報力の差と不労所得は不浄なお金と蔑む道徳観からくるのでしょう。中国は最近投資先を変えています。下のグラフを見ればわかりますが資源などの実物資産への投資を増やしています。

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何故、このような価値観になったのでしょう。
確かに最初は運用力より労働ですね。多くの人間が働いて稼ぐからお金が溜まります。故に国民所得が低い時代は生産に力を入れていいのでしょう。しかし…何時までも後進国の貧乏魂が染み付いた日本人は「鉄は国家なり」と2006年に持ち出すのですね。産業革命の鉄道のような感覚です。「産業の米粒」と半導体を持ち上げたり…。みんな時代遅れの産物です。間違った概念が方向性を誤らせ国家の衰退を招いています。

一例を掲げれば証券会社の収益構造です。
金融規制で個人の能力を信じないで手数料ビジネスに主体を置いています。しかしGDPが高くなれば、そのお金を使い、人を使って稼ぐビジネスに主体を移すべきです。つまり証券会社の仕組みを変えます。米国ではフィーに対する成功報酬制度が一般に認められています。しかし日本ではこの考え方は受け入れられていません。もしこのセクターの人間を増やせば、こんな長い低迷をしないでしょう。りそなは増資をして、ようやく先が見えてきましたが…なんと21年です。日銀も21年ぶりに政策を変更しました。国民は、馬鹿な上司が上に居ると苦労するサラリーマンのようなものですね。

折角、仕分け作業をしたのに…名前を変えて、もう一度、請求する行為は犯罪なのに、なかなか社会問題になりませんね。尖閣湾の問題でこの事の重要性が隠されているようです。仕分け作業は効率的な資金配分への検証でしょうから、官が政治家に従うのが道理でしょう。しかし、そこに人が働いているから、官は何とか延命を図るのですが…。本当にいい結果を生むのでしょうか? さてゴタクは兎も角、本題に入ります。

今、重要な事は金曜日の「今日の市況」にも登場していますが、QE2の政策の評価です。「BARRON‘S」を読んでいて、ようやく納得する意見を発見しました。
『ノーザン・トラストのポール・カスリール氏とアーシャ・バンガロア氏の、「QE2の方がQE1よりも成功する公算が大きい」という意見にも注意深く耳を傾けたくなった。両氏のレポートをかいつまんで紹介すると、「2010年3月までの16カ月間のQE1では、FRBの債券保有量は2000億ドル増えたが、その他の信用は、商業銀行システムの信用の8750億ドルの減少を含め、1兆3000億ドル減少した。差し引き、6750億ドルの信用縮小であった。QE1の効果が薄かったのもうなずける。一方、今後7カ月間では、FRBならびに一般の商業銀行システムを合わせて信用が5%以上増加する可能性があると見られており、これは2009年3月以来最大の増加となる。名目総需要を急増させるには十分でないかもしれないが、住宅や地方政府から吹く逆風に直面している経済が二番底に落ち込まないようにするには効果があるかもしれない」と述べている。病気を一発で治すというわけでなくとも、二番底を避けることは重要だ』…株は上がります。

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投稿者 kataru : 02:31 | コメント (0)

2010年11月06日

甘えの構造

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経済の要は金融です。何故、日本がこれほど長く低迷しているのか?
一言で言えば「構造改革」の失敗です。日本の歴史をみると、明治維新の頃は「富国強兵」政策により殖産興業を成し遂げ、欧米に追い越せ追い抜けの精神で頑張ってきて、日清戦争、日露戦争を経て欧米から一定の容認を受けましたが、第2次世界大戦で選択を誤り敗戦、二度目の復興を、戦後、アメリカの庇護の下で成し遂げました。しかし1985年のプラザ合意の前後から自滅する訳です。この自滅は構造改革の失敗と言われています。

この構造改革では、90年代は3つの過剰問題が指摘され改善されてきました。
「過剰債務」(不良債権問題)「過剰設備」(生産基地の移転で空洞化)「過剰雇用」(人員の流動化)、日本は世界ルールから身を守る為に様々な規制を引いてきました。戦後の復興は、大蔵官僚による計画経済の成功の賜物です。この背景には米国の庇護がありました。ところが一人あたりのGDPで肩を並べるほどになると…米国は政策を変更します。この対応に戸惑っているのが現在の姿でしょう。

内外価格差の問題はニトリ・ファーストリテイリングや楽天などの流通経路の変更により改善され、日米同盟の問題は未解決。為替の問題も未解決(日産マーチはタイに生産移管)、雇用の流動性も未解決(官僚などの役人の人件費削減問題や派遣問題など)、今の農業問題が絡むFTA、EPA、TPPなどの問題は、内外価格差と同一の問題ですね。既に農業は壊滅しており、兼業農家の大半は高齢化が進み生産性が著しく低いのです。更に人口構成により少子・高齢化問題が大きなテーマになっています。企業年金などの問題も未解決です。

政権担当者はこれら日本が抱える様々な問題に対処せねばなりませんが、大衆迎合主義を貫き大きな政府を目指しています。しかし現実をみなくてはなりません。先頃、菅内閣はB型肝炎訴訟で和解をしました。なるほど…国に非がないとは言えないでしょうが、生きている以上、様々なリスクは当然です。実は私の母も輸血が原因で肝硬変から肝癌で死んでいますが、あの時代は分かっていませんでした。血友病の治療中にエイズに感染した川田さんの問題もありました。帝京大学の安倍教授とミドリ十字の癒着が問題になり社会問題になりました。でもあの問題とB型肝炎問題は同一レベルなのでしょうか? 詳しくは知らないから、なんとも言えないが、2兆円もの和解金の規模を考えると…何故か、もっと議論の余地があったんじゃないかな? この問題は別としても、今の政策は、なんとなく、大衆迎合主義の傾向が強すぎるように感じます。

米国では共和党の主張は、経済対策は必要ないという立場ですね。健康保険問題も財政悪化に繋がり個人の自己管理との立場です。他人依存型の日本人と自立意識が根付いている米国人と考え方がずいぶん違うものです。日本ではなんでも「お上頼み」です。「お役人様、補助金で助けてくだせぇ~。」と農業や産業団体は叫びますが…間違っていないかな?

僕は31年間、証券マンとして、明日の日本を信じ、市場はこうあるべきで…行動をしてきました。しかし結果は失敗でしたね。この心の影で甘えがあったように感じています。いつも政策批判を続けるということは、その背後には期待する気持ちがあるのですね。でも現実はその期待を裏切られ続けて、人生が終ろうとしています。だから気持ちを整理するために会社を辞めます。そうすれば別の視点で、物を見られるかも知れないからです。勿論、食えないことが条件の第一条件でもありました。でも昨年の年収は800万を超えていますが…。今年はいくらかな? まだ計算していませんが600万か…その程度でしょう。僕は原理・原則を貫きたいのです。正直に言えば、株屋としてではなく、投資家になれるかな? 空売りを違和感なくできるのかどうか…。自分の心と向き合いたいのです。だから会社を辞める事にしました。

警視庁のテロ関連の重要書類が流出したり、海上保安庁の尖閣問題のビデオが流れたり、何処か日本はおかしいですね。そりゃ主義・主張は異なるのでしょうが…いくらなんでも卑劣な手段です。東電の増資と同レベルの現象に見えます。かなり、みんな追い込まれていますね。僕と同様にいろんな事を考え、皆がそれぞれ追い込まれて生活しているのでしょう。株式教室だから…QE2の問題から発展した考え方を書こうと思っていたのですが…相場を考えていると、どうしても日本の構造問題にぶつかり、色んな社会現象が気になるのです。今度は証券マンのカラーがなくなり、もっと自由に本音が書けるかも知れませんね。

投稿者 kataru : 06:02 | コメント (0)