技術革新を促す規制強化(2011年08月20日)
市場には「効率的市場仮説」と言う命題があります。
市場は全てを知っており、未来の経済状態を反映したものが現在株価だと言うのです。しかし…株式相場の投資とは、その市場価格と現実的な企業価値との価格差を見つけ、その価格差が将来修正され事を念頭に置いて投資して、そのギャップが修正され利益になることを狙うものです。未来の企業価値を予測し市場価格が修正されることを狙う訳です。カタル銘柄はいくつかの仮説が用意されており、その仮説通りなら株価が上昇すると言う狙いがあります。
ただ、この判断を難しくしているには、個別企業の分析だけではなく、市場全体のリスク判断が拘わるからですね。現在の世界経済は金融相場が終了し、業績相場から逆金融相場に移っている過程ですが、中国はこの段階から既に逆業績相場に入っており、間もなく再び金融相場に向かう段階かと思われますが…問題は欧米ですね。
欧州は利上げを実施しており、緩い業績相場から逆金融の段階ですが、米国は期待感が先行し、折角、好業績になっても失業率が改善されず、過大な期待が金融政策を歪めているのでしょう。本来なら逆金融へ移行すべきだったのですが、移行するチャンスを失いました。故に政策手段が乏しく難しいかじ取りを迫られます。この原因は過剰な金融経済の発展が実体経済を押し上げた為に、その調整に手間取っているのでしょう。失業率も住宅価格問題もしかり…。既に米国は日本と同じ道を歩み始めています。メロン銀行のマイナス金利は日本でも同様の現象が起きました。格下げにも拘らず米国債は買われ金利が下がっていますね。一番怖いのは通貨安ですね。日本は馬鹿ですね。外貨準備の多くが米国債です。1ドル100円が75円と言うことは25%も損をしていますね。100兆円なら25兆円ですよ。
FRBの政策手段として、期待インフレ率を高めねばなりませんが、既に十分に通貨は供給されていますが動かないのですね。先行き不安の為に動かないのです。今までのように住宅関連の債券や国債を買っても、現金を持っている人たちが行動に移らなければ仕方ありませんね。ドル安政策で輸出を伸ばし雇用を伸ばそうと言う経済政策は明らかに間違っています。米国の多くはアップルのようなファブレス企業で、安い労働力を求め生産基地を海外に移転しています。一人あたりのGDP水準は高く価格競争力に勝てる道理がありません。
技術革新による社会の構造転換が必要です。一例を掲げるとスマートシティーをはじめとする未来社会の創設などですね。情報を駆使した効率的な社会基盤を整備し、今までの価値観を大きく変えることです。自動車の燃費規制はある意味でこの技術革新に沿った行動ですね。CO2対策の環境問題の枠組みを実施し、企業に革新を迫るにも一つの方法でしょう。京都議定書の行動は先進国だから出来る一歩先に進む技術革新です。壁を超えるのは大変ですが一旦壁を超えれば、他国より一歩リードできます。このような技術的進歩を誘う規制は先進国には必要ですね。
それをワールドマネーになっているドルなのに、通貨安によって生産性の優位を狙い雇用を確保すると言う手段は負け犬の姿でしょうね。オバマ大統領は再考すべきでしょう。スタッフを入れ替える必要性がありそうです。今日の株式相場の混迷の最大の課題は、市場全体のリスクが進み、世界で「流動性の罠」の状態が進み始めていますね。新興国からの資金の引き上げが、新興国通貨安を生み活性化を奪っているようです。
対策は設備投資減税を実施して、技術革新を促す投資活動を支援し、FRBは日本のように直接、株式や土地を買う行動も良いでしょう。本当は投資活動を支援する金利負担などが効果的に思えます。米国は日本と違い仕事ができる人が、上に行く仕組みです。そうして行動しなければポストを外される効率社会の市場原理の国だから、ここで書いた「流動性の罠」の問題への対策は、他の方法も含め議論されているでしょう。何しろ、一流の経済人が政策スタッフになっているから心配はしていません。市場原理主義の国です。1万ドルを割れれば、対策は待ったなしでしょうが…そこまで下がるかどうか…。
早晩、対策が発表されるでしょう。今回は日本の問題ではありませんね。コア30が下がっている所を見れば、相当、現金化は進んでいますね。つまりそろそろ売り物も切れると言うことです。切っ掛けは金融規制によるヘッジファンドの撤退などが引き金でしょうが、10年債などが買われており待機資金は豊富に貯まっています。方向性がハッキリすれば資金は新たに動きだすのでしょう。9月かな? フィラデルフィア連銀製造業景況指数の低下を見れば分かるように、株安による消費減少の逆資産効果現象が現れており、待ったなしの局面になっているようです。
需要なことは…現時点では人間の心理面だけの現象なのです。実態社会は多少落ち込んだ程度なのですね。天気が変われば人間の心はガラッと変わりますね。丁度、東京の気候のように…猛暑だった夏が何処かに飛んで、いきなり秋ですからね。金木犀が香る季節の到来です。実体経済は新興国の好調さが続いています。ファナックの稲葉発言は、当初は違和感を覚えましたが、ある意味で正しいのでしょう。どうもバイデン副大統領の訪中は、布石じゃないかな? 一般的には米国債の継続買いの要請と思われていますが、既に次の金融政策は決まっており、その事前準備と見るのが妥当でしょう。
何度も言いますが…日本はデフレ先進国で、空洞化問題を引き起こした先進国と新興国の産業移転問題で最も被害に遭ったと言うか…経験を積んだ国なのですね。だから日産のマーチがタイに生産基地を移し逆輸入しています。本来このような通貨高はマーチの価格引き下げで日本の消費者の利益になっている筈ですね。カローラとマーチの価格競争力は広がり、経営手腕を問われてもおかしくない状況の筈です。日産は値下げと共に、全面比較広告を出し、一挙に日本の低価格車のシェア拡大戦略を実行してもおかしくありません。
為替介入して輸出企業を擁護し雇用を守ろうとする旧態依然の行動は改めるべきでしょうね。どうせやるなら、一時的な期間指定(3か月から半年程度)を宣言し1ドル80円を維持し、その介入資金で金利の高いギリシャ国債やイタリア国債を買い、場合によれば、金利の低い米国債を売るべきでしょう。日本の金保有率は低いですね。その代りに介入外貨を使い農業や資源開発を進めればいいし、東アジアのインフラ整備を民間主導の補助金形式で促進すればいいのです。いくらでも日本が優位になれる行動があるのに…情けないな。円高は多くの手段を残しチャンスなのでしょう。