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市場原理主義(2011年12月17日)
果たして市場原理主義の中で、信じられている時価会計主義は正しいのでしょうか?
欧州危機を考えると馬鹿な事をやっていると…いつも考えるのですね。ECBがイタリア国債などを無尽蔵に買うと言って、実際に実勢金利5%程度まで買い上がったら、市場原理主義者はフェアではないと…批判をするのでしょうか? それともユーロの価値は大きく落ち込むのでしょうか? 結局、ドラギ総裁の心中は、正義感と現在起きている現象との狭間で心が大きく揺れているのでしょう。
人間と言うのは現実と理想の狭間で常に揺れ動いていますね。
理想と現実のギャップに葛藤する人は非常に多いのです。自由で公正な競争によって勝ち得た利益は正当化されるが、不公正な社会で特権を利用した不平等な環境下での競争の勝者は称賛されず、認められないと言います。故に汚職の源の贈収賄は罪に問われますが…中国の共産党幹部の躍進は目覚ましいのですが、社会は成長しています。一方、市場原理の自由競争を掲げる米国では、本来は称えられて良いのに、公正な競争下で勝利した勝ち組1%が批判されています。
私が子供だった頃、巨人軍は強く川上巨人軍は9連覇を成し遂げました。そんな中で子どもの好きな代名詞として「巨人、大鵬、卵焼き」の言葉は生まれます。長嶋や王さんは僕らの憧れの存在でした。ビル・ゲイツやウォーレン・バフェット、スティーブ・ジョブズは称賛されますが、彼らは希少な勝ち組の1%の対象ですね。中国の華西村は高度成長の勝ち組として称賛されています。共産党幹部の呉仁宝さんの手腕によるものでしょうが…ビル・ゲイツと、どちらが評価されるのでしょう。
ベルリンの壁崩壊をみて、市場原理主義が正しく富を分配すると考えてきました。人間の欲望をコントロールする市場原理が、効率的な資金配分を成し遂げると考えてきましたが、この影で競争に敗れた人間を支える為に、生活保護や年金制度が必要だと言われ、競争に破れた弱者を支える為に財政は悪化していますが、その弱者の集まりのギリシャは、これ以上の緊縮は耐えられないと文句を述べています。
でも人間は、勝者は好きですが…弱者を称えることはしませんね。なでしこジャパンもワールドカップに予想外の躍進を続け、奇跡に近い勝利を収めたから大きく称えられるのです。富の配分は難しい課題ですね。多くの人が幸福感を得られるような社会環境を創る為に政治はあるのでしょうが…難しい選択を迫られています。「トリレンマ」の時代だそうです。どれも好ましくない三つの選択の中から、一つを選ばねばならない時代だと言うのです。
市場原理主義者から言わせれば、現在の欧州危機での安易な選択は「未来の悲劇」を生むので、今、その将来の大きな災難を軽減するために、分散し調整しているのですね。だから歪められた溝を埋めるまで、市場は要求を突き付き続けます。もういい加減にしてほしいと考えるのですが、ドイツ国民のエゴは通用するのでしょう。彼らはある意味で公正な勝者ですからね。ユーロと言う単一通貨のおかげで輸出競争力が増し経済が好調なので失業率が低下しています。アイルランドも当初は危機の先頭を走っていましたが、税制特権で得た産業の利益が、過去の過ちを修正しています。
今の欧州危機の試練は過去の過ちの修正なのですね。市場原理主義者から言わせれば、こうやって矛盾が修正され大きな戦争などが起こる事態を避けているのです。過去、日本は矛盾を抱えたまま、軍部の独走により、やけっぱちの戦争行為に向かいます。人間と言うのは目先の困難な事態を避けようと努力します。困難を避けようとすれば無理をしますから、不正行為に及ぶこともあるでしょう。オリンパスの飛ばしはその結果ですね。でも、もし菊川さんがウッドフォードさんを指名しなかったら…問題は発覚せずに時間が経過したのではないでしょうか?
オリンパスが江戸時代の大名家の世界だとすれば、菊川さんはお家の大事を救った名家老として崇められたかもしれません。これまでの所、私利私欲により利殖の為に不正をしたわけではなさそうですね。財政難の危機に陥ったお家の大事を救った名家老との評価があったかもしれませんね。時価会計主義と言う、訳の分からない基準に揺れ動く市場原理主義と言うのは本当に正しいのでしょうかね? 株価の上下は激しく、理論的な価格で評価されていないものはたくさんあります。一時的な異常値を、評価基準にして時代の流れを大きく変える考え方か…。
フェアの精神の為に企業統治の話が生まれ、その主義主張を守る為に苦労している現実も存在します。敗者には敗者の論理があるのだろうし…だから僕らは99%だと言って…成功者の1%の象徴としてウォール街の公園でデモが起こるのでしょう。でもスティーブ・ジョブズが称賛される人間社会は面白いですね。