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日本病の蔓延(2012年05月26日)
長いデフレ社会が続くと、人間の基本的な考え方も変わるらしいのです。
確かに…長い低迷が続いています。1989年から23年になりますが、日本が先頭を走っている様な、先進国の衰退論が囁かれています。欧州危機の発端は米国の金融危機ですが財政出動が民需の刺激にならず、財政赤字だけが膨らむ構図は日本と同じです。米国も怪しい状態をウロウロしています。中国では電力の使用量などは低迷を続けており、誤魔化しようがないデータが存在するようですね。
しかし逆説的に考えれば、中国は本格的に成長路線に舵を切り、米国はシェールガス革命で有利な地位にいます。そうなるとEUの仕組み論だけの問題なのか…、それとも先進国に共通するデフレ・パターンが続くのかどうか…。先がなかなか見えて来ませんね。デフレ社会は失敗が続く傾向が強く、故に責任転嫁をする事になります。官僚批判などが跋扈し政策批判に繋がります。その結果、規制が強化され社会は硬直し、清貧思想が美化されるのでしょう。安心・安全は必要ですが、過度の要求は自由を阻害し成長を拒みます。国債金利を見れば、明らかに行き過ぎのラインでしょう。

欧州危機は新興国への資金供給を閉ざし、当然、躍進を続けてきたBRICsなどの成長は鈍りますね。大きな枠組みの変化を迎えるようですが、新しい体制は未だに決まっていません。既に技術開発などは終わっているわけで、あとは政策の発動だけなのでしょう。しかし仮に欧州危機から米国へ日本化現象が広がると、やがて米国も財政問題が表面化し、基軸通貨の国だけに厄介な現象に入らなければ良いのですが…。覚えている方はおられるでしょうか? かたるはブラジルのボベスパ指数の行方も気にしています。オリンピックの開催や資源国でもあり恵まれた環境下に思えるのです。しかし現実の株価は下げ続けています。清貧思想の蔓延化、故にキャッシュはあるが動かない。ドイツ国債が買われる現象に繋がっていますね。仮に…仮に、ですよ。先進国に日本病か蔓延し、欧米が日本化したらどうなるのでしょう?
空前の低金利は行き過ぎでしょうが…、金融政策だけではシステムが持ちませんね。あすなろ精神は、既に過去の遺物なのでしょうか? 馬鹿な事態への発展はないとは思いますが、日本はトンネルを抜け出せないのですから、米国などの先進国も何やら怪しい雰囲気です。考えたくもありませんが、日本化現象が蔓延するのか?それともシェールガスやインターネットを通じた情報産業を梃に、先進諸国は新時代へのステップを駆け上がることが出来るのかどうか。
多くの識者が最近は価値観の転換を説いており、震災以降、その傾向が更に強いのですね。頑張れば、きっと明日はよくなる。…との努力を否定するような考え方をする人が増えているのです。シャープやパナソニック、ソニー、そうしてエルピーダからルネサスなど次々に日本病に侵され敗退し、価値観の転換である沢井やユニチャーム、ピジョンなどはマズマズの動きを示しています。どう見たらいいのでしょう。まさか米国まで日本病化を示す展開にならないと思いますが…様々な報道は微妙な情勢ですね。何故、こんな事ばかり考えているかと問われれば、システマティック・リスクつまり市場全体の価値が下がっているように感じますね。PERは20倍から10倍へ、更に現在では5倍の水準になり始めています。つまり5年で元が回収できますから、年率換算では20%近いのですね。しかし先が見えずにそれでもリスクを取りたがらない傾向が依然続き、国債金利は下げ続けています。
最近、日米の国債金利を提示しましたが、金利を下げれば投資が生まれる。これは理屈です。コスト負担が減り資金回収のスピードが速くなりますからね。しかしビジネスが難しいから資金需要が発生しない、混沌とした先の見えない社会になっているから、安全性を求めリスクを取らすに、じっと眠っている。これがデフレです。1989年以降、国債投資だけが利益を上げてきました。膨大な利益を計上し、たらふく含み利益が存在する銀行は日本国債の格下げでリスクばかりが強調され買われませんね。不思議な現象です。物事には常に二面性が存在し、見る立場でどちらでも考えられます。再び、下げ圧力が弱まる兆しが見え始めてきましたが、どうなるのでしょう。