今日の市況(2013年02月20日)
かたる:市場は目先筋の動きに翻弄され洗練されていないイメージですね。昨日の市場トップはブリヂストンですが、好業績はもともと予想されていました。この銘柄もカタルが一時、手掛けたお気に入り銘柄でしたが…昨日の報道を見て少し残念に感じています。もともとカタルの自動車産業へのバックボーンは歴史的な場面を迎えているという認識です。だって先進国の市場は飽和状態ですが、10年程度で替え買えるとしても、毎年かなりの規模の需要が生まれます。米国は金融危機がありローンの審査が厳しくなり、あの落ち込みの需要が後ずれするわけで、それだけでかなりの需要ですし、東西冷戦の崩壊から金融デリバティブの進展により、新興国の需要がこれまでの先進国需要と同じくらいに膨らむわけで大忙しの筈。自動車産業は競争が激しいけれど、タイヤや部品産業の欠かせないパーツ需要は、かなり伸びる筈ですね。そう考えグローバル化が進み系列意識改革が進んでいた鬼怒川ゴムに焦点を充て、昔に手掛けたのですが、なかなか株価革命が進まず、割安のままで苦労したのを覚えています。利益は上がっているのに思うように株価が上がらないのです。ルネサスにも注目していましたが…あの有様ですね。
昨日の日経新聞を題材に、今日は利益の質の話を展開しましょう。昨日の日経新聞がブリヂストンを褒めちぎっていたようですが…実はあまり中身を読んでいませんが…ざっと見たら当たり前のことをよく書いている印象です。…が数字を見て下さい。ブリヂストン(BS)は売り上げ30397に対し純利益は1716億円、一方、ミシュランは二番手ですが売り上げ22008に対し純利益は1610億円です。最終利益はいろんな点で影響を受けるのでこれだけで決められませんが…売り上げに対する利益率の低さが気になります。昨日の大幅高の評価は正しいのかな?との疑問が浮かびますね。最近のBSは見てないのでよく分からないのですが…通常、売上高利益率は非常に大切な数字です。日経新聞のような書き方をするから日本の経営者は間違った概念を植え付けられているのでしょう。市場で1番だとか…僕ら金融マンの評価は、市場の占有率より中身が大切ですね。
中身とは何か?
売り上げに対する粗利ですね。売り上げ営業利益率が高い会社の方が好まれPERは高く買われます。同等の利益を出しているなら、経営の中身にもよりますが、通常は好収益力の会社が好まれます。それは世界競争に勝ち利益を獲得しているからです。自動車はいくらトヨタがトップと言っても売上高営業利益率は5%程度に過ぎません。呆れる数字ですね。巨大な生産設備を持ち、研究開発をして良い物を作って世界競争に勝っている筈なのに…。つまりトヨタなど誰にでも作れる会社とも言えますね。ところがDENAやグリーはどうでしょう。売り上げに対する営業利益は約半分が利益ですね。競争が激しくなっていますが、売り上げに対する利益率は桁違いです。トヨタの10倍ですよ。
それでは何故、市場からもっと高い評価が得られないのでしょう。それは利益の質が問われるのですね。ゲームは趣向品で生活に必要なものではありません。一番必要なものは電気やガス、食料品、さらに医薬品とか生活必需品ですね。自動車がなくても生活は出来ますし、テレビがなくても生活は出来ます。しかし豊かな生活は、なに?と問われると…利便性が次に浮かんできますね。冷蔵庫や洗濯機は家事を助け生活の質を良くしてくれます。何故、バフェットがコカコーラやハインツをターゲットに選ぶのでしょう。地味ですが利益が約束されており経営が安定しているからですね。必ず生活に必要なものです。だからジャンク債に比べ配当利回りの高い食品株への投資を考えた訳ですね。公共事業投資の電力は安定供給が必要だから、ある程度、儲かるように価格設定され経営が安定していますが原発の影響を受け価値観が一変しましたが、長期的な視野で見れば、今はおそらく買い場でしょう。何しろ利益の質が高いのです。本来は…。
ここで…生活に必要で欠くことができない利益は質が高いと述べましたが…本当かな?と最近は疑問に思う事がよくあります。バロックの時代、昔の貴族の世界を思い浮かべてください。音楽は貴族の特権階級の楽しみでしたね。それは楽師が居ないと聞けないからですね。音が保全できませんでした。全て生演奏ですから力のある王族に養われる訳です。モーツァルトもショパンも…そうでした。僕はチェンバロの音色がピアノに比べ好きですが…まぁバッハの時代より、後年の古典派の時代になると演奏家も力を持ち始める人が出てきますが…あの時代も面白いですね。話しがそれそうなので…戻しますが、今では誰でも音楽が楽しめます。庶民の暮らしが昔の人に比べ格段に豊かになりました。音楽は街を歩いていても聴けますね。ジョギングの最中にお気に入りの音楽を聴いて走る人は大勢います。昔なら大変ですね。楽団員がみんなで走りながら演奏しなくてはなりません。不可能が現実化されました。
確かに景気循環により利益が上下しますが…他人が生めない利益の質は高いとも言えます。ルネサスエレクは、何故、車の心臓部分の世界トップだったのに…会社が傾いたのでしょう。不思議ですね。日本人の経営力の問題ではないかな? 日経新聞を歴史的に読むと、多くの記者はルネサスの魅力を、震災が起きるまで知らなかったようですね。しかしルネサスは昔から外人投資家のお気に入り銘柄でした。それは欠かす事が出来ない会社だったからですね。しかし経営者さえも、その魅力を利用していませんでした。トホホ…震災が起きて初めて世界は慌て、大変だと認識したのです。利益の質って、何? 我々の潜在認識は正しいのでしょうか?
外人投資家はROEと言う指標を大切にします。それは投下資本に対しいくら利益を上げたかと言う指標だからですね。お金は限りがあり貴重です。だから金融の論理からすれば、投資した金額に対し、リターンが高い方が好まれるのです。トヨタに投資しても、いくら利益を生むのでしょう。四季報数字では2.7%で、予想では7.3%ですね。しかしDENAは37.2%で、予想では47.0%になっています。グリーが57.2%で、予想では55.1%ですね。これは最近の数字ではトヨタは上がり、グリーは下がるのでしょうが…、それでもトヨタより遙かに高いでしょう。それなのに…何故、トヨタの方が高PERで評価され、DENAやグリーは安いのでしょうね。不思議ですね。推察される理由は「利益の質」が問われ、「流動性」と言う問題が発生しているからだと思われます。
でも時代の進歩を考えてください。我々は専業性の発達により仕事の効率が格段に上がり豊かな生活を手に入れています。ここで先ほどの音楽の話を…今では携帯電話やアイポットを手にしてランニングをしています。任天堂の活躍は1年や2年で終わったでしょうか? 僕が新潟時代に手掛けていた会社で、既に25年以上も高収益を掲げています。当初、ゲームの利益など一過性の利益で、続かないから価値が薄いと言われましたが…。むしろ新興国の競争相手の影に怯える自動車の方が、危うい存在ではないのでしょうか?ここは素直に…ROEの高い企業の利益を、ROEの低い企業の利益より高く評価して上げる事が、正しい市場なのではないか?とも考えるのですね。
日本には長年、ものづくりの利益は正しい利益で、金融の利益を疎んじる背景が存在します。楽をして稼いでいるように見えるのでしょう。手に汗して稼ぐ利益と、ディトレをして稼ぐ利益と、お金の価値観が違うのでしょうか? 同じ人生の生きている時間の中で、豊かに稼いで何がいけないのでしょう。何か…日本人の価値観は間違ってないのでしょうか? 何故、日経新聞などのメディアは、成功者を称えないのでしょう。小手川君などはきっと優れているのでしょう。彼ほどの規模になると市場に影響を与え、彼は不動産を買いましたね。川崎汽船は損をして処分して売ったのでしょうか? ディーリングで稼げるお金は知れています。バフェットのような投資家が、日本から生まれて欲しいものですね。是非、読者の中から、私の経験を糧にして成功者が多く誕生して欲しいと願っています。今日は「利益の質」を考えてみました。
投稿者 kataru : 2013年02月20日 10:50