「和製投資事業組合の危機」

ライブドア事件による投資組合規制強化が懸念されている。世界の金融資本がグローバルに活動する時代にあって、投資組合やファンドがその主役として重要な役割を担う。外資再生ファンドがぼろもうけしたとか国内で被害妄想的な見方をされるが、その実態を見ると、現場の担当者はたいがい日本人である。一方、日本の投資家の一部が外国の法律で設立した投資ファンドの資金の出し手で、利用者でもある。つまり、日本は資本が豊かなのに、日本人ですら日本で投資事業組合を作らない法的インフラの遅れた国だったのである。失われた十年から復活しようとしている日本において、今こそ日本製の投資ファンドの活発な活動が期待されている。そのためにLLPなど外国に太刀打ちできる法制税制のインフラがまさに整備されようという途上にあった。

今回のライブドア事件は、我々投資組合運営者の視点からすると、本来個人組合最大の特徴である組成デザインの自由さとプライベートな匿名性を悪用し、開示責任のあるはずの上場会社が従属的な子組合を使って決算粉飾を疑われている異常な事件だ。こういう事件が起こると、組合が上場企業の実質子組合というめったにない事件にもかかわらず、善良な独立の組合まで監督不足という議論となり、すぐ全体へ規制強化する話に化ける。これでは知的退行で、インフラ整備に逆行する。官庁が組合を管理して国際競争できるわけがないし、規制が行き過ぎれば、結局誰も日本で投資事業組合を作らなくなり運用空洞化が進む。 今政府に必要なのは、投資組合の規制強化ではなく、監視と罰則の徹底的強化である。特に上場企業が支配的投資組合を悪用して粉飾するケースだ。世界的活躍を期待される和製投資組合のインフラ発展を阻害しては、立ち上がり始めた投資の国際競争力を弱体化させかねない。


(日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合代表 村口 和孝)