今日の市況(2008年)(2008年12月12日)
クリスマスのシーズン入りなのに…今年の世相は暗いですね。
米国発の金融不況が実体経済に反映し始め、だいたい1年と9月です。しかし多くの人が深刻さに気付いたのは、リーマンが倒産したあとの動きでしょう。悪夢は9月15日から始まりました。当初は「ネイサンの逆売り」で直ぐに回復するかと思っていましたが…。意外に根は深く世界中の金融機関が影響を受けました。信用乗数という言葉があります。経済活動は一つの連鎖の中で動いています。例えば20万円の給料をもらうと8万円が家賃に消えるとします。その8万円を原資に資本家は不動産投資を考えます。年間96万円ですから960万円の投資なら利回りが10%に回りますね。5%なら投資額は1920万円まで膨らみます。食費に5万円消えるとすれば、食材を買い入れた先にスーパーがあり、スーパーは食材メーカーから仕入れを実施します。つまり20万円を消費する生活は多くの人と繋がり連鎖が働いています。
先頃、大手米国銀行は10%の配当を払い資金を調達しました。金融の自己資本比率は10%だとすれば10倍の資産が買えます。つまり効率よく運用すれば実際の調達金利は1%で仕事をしていると同じなのです。10%の不動産投資に資金を回せば、9%の鞘が抜ける事になります。金融の仕組みは、莫大な利益を生む卵なのです。ここに来て米国の大手金融機関は公的資金を入れて苦しい筈なのに、何故か、果敢に投資をしています。
先日バンク・オブ・アメリカが中国建設銀行の株式の持ち合い比率を高めました。なんと10.75%から19.1%に増やしたのです。投資額は、かなりの金額ですね。今週、12月10日の日経夕刊によれば、35億ドルを投入されたキャピタル・ワンがチェビー・チェース銀行を買収したそうです。驚きました。更に今日の日経新聞には、危機管理下のAIGが富士火災の157億円の増資を受け入れ、持ち株比率は23%から41%になると報じています。
一方、米国ではFRBへの準備預金が積みあがり3ヶ月で14倍の56兆円になったと言います。私の言いたい事が分かるでしょうか?
出だしに信用乗数の話しをして米国金融機関が公的資金を入れられたのに、外部に投資をし始めている現象を述べ、同日にFRBには安全資産がどんどん積みあがっている現象をどう考えるか? 本日の為替は1ドル90円を切り88円台前半まで急伸したようです。大量の資金がだぶつき、日銀は一所懸命に資金を吸い上げています。色んな条件が金融相場を暗示していますね。情報とはどうやって利用するか? 利用する側の問題なのです。IRNETの「今日の市況」を読んでいれば、世の中で動いている現象が、だいたい理解出来るでしょう。
今日は円高と自動車産業界への救済法案に米国上院が否決して、廃案になったと言う表面的な現象もあります。これを受け、株価は下がりました。しかし同時に日本政策銀行がCPを直接、2兆円程度、購入すると言います。この話しを聞いてサラ金屋株を買った人は、なかなか良い判断をしていますね。オリックス、武富士、アイフルは独立系の金融機関で自前の資金源を持っていません。その為に貸し出す資金を調達するのですが、米国の金融危機により、実質上CP市場は機能していませんでした。故に、異常に貸し出し規模が拡大し、中小企業に貸し出す資金が減りました。政府の狙いは企業にお金を回すことです。リーマンの破綻により、SECGは貸しはがしをして社会問題になりました。ノンバンクも銀行と同じですね。
今日は下げましたが、世界中の中央銀行が空前規模の金融緩和政策を実行し、世界中の政府が財政出動を実施しています。分かりますかね? 当然、金融危機で萎縮した経済活動は再開され、徐々にでしょうが正常な金融情勢に戻るのでしょう。世界中が財政出動しているから、金融危機で大きく売られたBRICs株も株価を戻すのでしょう。理屈を考えれば、どの株がこれからのターゲットになるか明らかです。強き相場はスタートしています。しかし現実は非常に厳しいですね。バンク・オブ・アメリカは3万5千人の人員整理を、既にシティーは5万2千人の削減を決めており、ゴールドマン・サックスも3000人の人員削減を進めています。急速に冷え込む実態悪、一方、空前規模による世界中の経済対策との綱引きは当分続くのでしょう。
「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ…」
投稿者 kataru : 2008年12月12日 16:28