今日の市況(2011年)(2011年09月16日)
かたる:欧州危機の後退により、市場全体のシステマチック・リスクが軽減され先物主導で株式市場が戻ってきましたね。しかしあくまでも、内容は市場全体のリスクが軽減されたために戻ったに過ぎないから、再び、欧州危機などが高まれば売られることになるのでしょう。一応、ギリシャが要望されている財政規律を守るなら欧州各国が応援することになっているが、一昨日、貿易依存度の表を見て頂いたように抜本的な解決にならないし、年末にも大量の償還を迎えると言うから、リスク要因を抱えたままの延命処置なのでしょう。14日の表から分かることは、ポルトガルも相当苦しそうだね。
市場ではイタリアをターゲットにしているが、イタリアは輸入依存度がそんなに高いわけでなく自力で解決できるのでしょう。ポルトガル、スペインはギリシャと並んで苦しいと推測されます。これはユーロと言う通貨のみを共通化した試練で、本来、ギリシャは単独通貨の方が政策手段は増え、国民は楽なはずだからユーロ圏から離脱すればいいのです。国民は無理してユーロ圏に留まることはないのですが…いつか、その選択をするのじゃないかな?…と14日に掲げた輸出入の依存度を見ると推測されます。変動相場は産業移転を促進させるのです。
日本でも円高と電力などの基礎インフラ経費(法人税なども含む)が上がり、製造業の産業維持が難しくなっており、塩ビなどの化学メーカーも続々と海外移転していますから、何もエルピーダに限ったことではありません。公的資金を注入して産業を維持しようとしても無駄な努力を続けている印象です。むしろ日経新聞に書いてあるように国家ファンドを開設して、資源などを中国のように買収すれば、馬鹿にして円を買えなくなる。もともと日本は既に輸出依存度はそんなに高くなく現状の為替水準は不当なのでしょう。故にいずれ修正と考えています。
時代や:なんか…カタルの言うように上がってきたね。先日、掲げた225銘柄のエレクトロンや信越化学なんかも強くなってきたね。やはり日銀のETF買いの効果があるのかな?
かたる:そうだね。中央銀行は無限の資金を有しており「ラスト・リゾート」と呼ばれる所以だね。どんどん外人ファンドが売っても、理屈に合う水準だから、その売り物を全部買えば良いんだね。理論価格以上に買うのは問題があるが、現状は歴史的な安値圏にあるよ。でも機関投資家は能力がないと言うか、仕組み上、買いだと思っても買えない。だから法律がおかしいのだけれど、誰も変えようとしないんだね。長いデフレの一因でもあるよ。
時代や:講釈は良いから、他に有望な銘柄はないの?
かたる:そうだね。大日本印刷やデンソーなどは安値圏だろうね。考えてみれば分かるがデンソーは車の電子化が進み、ファナックのようなCNC装置は技術的な蓄積が高い頭脳部分で、他国が簡単に真似を出来なかったんだね。故にファナックは世界でも強い。同じように車などは、誰でもと言っちゃ悪いが、中国でも韓国でも作れるよ。しかし電子制御の技術は、日本が大きくリードしているね。横ブレ防止装置やABSなどのブレーキシステム、更に燃費などは全てコンピュータで制御されているね。どんどん、この電子化比率は高まり、デンソーは世界一の技術を持っているから、この評価はやはり安いね。何れ大きく誰かが技術評価を変える夢があるよ。
もともとアーム〈日本製鋼所〉でも何でもそうだが、世界一の技術とか他が真似できない独創的な製品を持っている会社は、業績が確りしていればPERで30倍程度の評価を下すものだよ。残念ながらルネサスみたいに赤字じゃ、いくら世界一と言っても評価されないが…。だからカタルが大阪チタンに拘る理由も分かると思うが…世界一でもあのスポンジチタンはそう難しい技術ではない。むしろ人気は冷めているがDENAは世界一のスマートフォン向けのゲームメーカーとしての覇権を握る可能性はあるから、夢を掛けてみるのは面白いよ。多くの人は株価が下がると目を向けないが、おそらく本物に育つだろう。仕掛け人も存在し、買い増ししているようだし…やがて時期が来るだろうね。
でも時代やは、トロの意見に先日は軍配を上げたんじゃなかったの? 米国景気は、依然、不透明だよ。
時代や:いや…なんか勢い良く、上がりだしたようなイメージだからね。
トロ:株価は真空地帯を、先物からの裁定で戻っているだけだよ。その証拠に出来高は膨らんでいる? 人気株は現れた? またすぐに下がるよ。だって欧州も先送りで根本解決じゃないよ。ギリシャ国債は間違いなくデフォルトだよ。抜本的な解決を考えるなら債務の削減が必要だろう。いつまでも辛抱では国民が納得しないよ。それこそ暴動が起こるだろう。
それに米国の10年債は、昨日は辛うじて2%台に乗ったけれど…、依然、流動性の罠の状態に変わりないよ。日本化現象は間違いなく進んでいるよ。人間の気持ちは2年や3年程度が我慢のできる限界だね。2年以上も失業が続いてごらんよ。いくら楽天家のアメリカンドリームも、人々が信じなくなれば、あっという間に多民族国家だから、国の根幹である楽観主義の国民感情は崩壊するよ。努力すれば何とかなると言うフェアな国だから、アメリカは強いんだね。しかし貧困層の広がりは、明らかに社会の持続的な成長を難しくしているよ。日本のシャッター通りのようなものだろう。
かたる:相変わらず、悲観的だね。今日は確かに5%程度も上がっている銘柄が多く、行きすぎかもしれない。カタルの注目したエレクトロンはもうすぐ75日線に到達する。4020円なんだけれど…現在は1日7円ほど下落しているね。通常のリバウンドはここまでで、実際に株価波動が変わるかどうか…確認するまで、もう少し時間がかかるけれど、僕は既に底入れしていると思うね。気になるのは、バーゼルなどの金融規制の行方だね。何度も言うが、実体経済と金融経済は車の両輪で、金融を苛めると必ず景気は悪化する。昨日は松平定信が実施した寛政の改革の風刺を掲げたが、あの時も棄捐令を発令し札差を苛めて景気を悪化させたね。
今回はリーマンやAIGなどの金融デリバティブ技術の進歩を咎めた金融規制の為に、実体景気が財政出動をしても、なかなか回復しない。故に税収が増えずにソブリンリスクが発生している面もある。しかし見てもらうと分かるが、新興国の稼げるところは大丈夫だね。中国など空前規模の財政出動は功を成し、成長力は高くインフレになり、金融引き締めを実施、健全な形だよ。既に3割以上も不動産開発が減速していると言うよ。それでもこの成長力だからね。僕は先日の日経新聞にも書いてあったように、早く日本の金融政策を「規制から振興へ」変更すべきだね。
むかしパチンコも投機性が高くなると規制を掛けて鎮静化させ、暫くすると緩めたが、この緩めたり引き締めたりする機動性が、いつの間にか失われてしまった。サラ金規制など武富士まで倒産させ、業界の存亡に拘わるぐらい厳しい時代を続けたので、そろそろ改善させても良いよね。だからサラ金株も有望だと思っているが…あくまでも金融庁様次第さ。
トロ:まぁ、週末ぐらい少し喜ばせておくか…。高くならなきゃ、売る場面がなく儲けが膨らまないからね。そうやって期待感を思わせて、馬鹿が買うところを、また空売りすれば儲けが膨らむよ。仮にだ…仮に目先底入れしたとしても、簡単に戻るような相場じゃないだろう。枝野大臣の就任で東電の株主責任論や銀行の貸し手責任論が浮上しているよ。この問題は根が深いよ。一気に市場の改善ムードに水をさす材料だね。安易に考えない方が良いよ。余裕のない人は少しでも戻ったところを売って手を空けるのが筋だろう。
かたる:まぁ、いろんな見方があるよ。人それぞれ信じる行動をすればいいのさ。
投稿者 kataru : 2011年09月16日 15:17