今日の市況(2012年)(2012年09月10日)
かたる:浮かない数字が吉報をもたらすかもしれません。米国の雇用統計指数の話です。つい最近まで事前予想を引き上げさせるほどの前評判が良かったのですが、実際の数字は空を切ったのです。不透明な未来予測は人間の感情を大きく左右します。株の世界で相関関係の高い期待インフレ率、この期待インフレ率は、基本的に人間の心を示す感情の数字に近いですね。経済界では、常に予想と現実の狭間の中で数字が動いています。統計数字の発表に賭け相場を張る人も大勢いますし、その統計数字が大きく現実を左右するのです。でも統計数字の解釈も定まっていませんね。堂々巡りを繰り返す論理と現実は様々な未来の現実を生みます。
日本が行った90年代の財政出動は失敗でした。考えられるのは基礎インフラ整備の整った国での財政支出は、乗数効果が低下するのが原因でしょう。中国などの途上国においては鉄道や道路、水道から電気に通信と…これらの社会資本整備への投資は、他の経済行動を促す起爆剤として乗数効果は高いのでしょう。しかし…豊かな社会になった日本においてテレビの画像がきれいに見えるとか…、画素数が増して画像が鮮明になっても…、人々の心は大きな驚きに繋がりませんね。つまり旧来型の社会資本整備を実施しても乗数効果は、昔は5だと10だったかもしれませんが、現代においては1.2とか1.5との僅かな乗数効果しか期待できなのでしょう。だから技術革新(イノベーション)が必要なのです。蒸気機関の発明は、馬車などの時代から鉄道へ大きく変貌させました。今はインターネットの情報革命を、現実世界の飛躍に結びつけるビジネスが付加価値を生んでいます。限りない付加価値の無限の高さの源は、多くの人間を惹きつける魅力です。感動ですね。昨日のコラムでは、中村中の友達の詩を紹介しました。心を揺り動かす感動は、何ものにも代えがたい魅力を秘めています。
梅ちゃん先生の昭和30年代のノスタルジアが、何故、好まれるかと言えば、現代において、多くの日本人は希望を失っているからですね。あの時代は洗濯機が欲しいとか…テレビが欲しいとか…、やがてその欲望が耐久消費財の長である車や家に向かいます。その覇者になったトヨタや大和ハウスは大きな相場になりました。永大産業などと言う一大仕手株を生みましたね。しかしグローバル化した自動車は、産業として確立した地位に登りましたが、住宅はグローバルな視点を欠いたのか? 大きな発展はしていません。最近、ようやく日本の住宅産業は、海外でも分譲開発するようになりましたが規模は小さいですね。TOTOが開発したウォシュレットは日本の生んだ文化ですね。
今日はちょっと高尚な内容でしょうか?
ケインズ経済学は大恐慌時代には、ニューデール政策などをみると財政出動は成功したとも言えるのでしょう。しかし現在はフリードマンのような考え方が主流になり、金融政策が重視されていますが、実験に過ぎません。フィッシャーの交換方程式に興味をそそられます。MV=PTと言う式で流通貨幣数量や流通速度を増やせば、価格や取引量は増えるのですね。ところが現代は日本化現象が進み流通速度がドンドン低下しています。この現象が日本を始めドイツや米国などの国債の金利低下(金利の上下は流通速度に比例する)により明らかです。ベルリンの壁崩壊により市場経済化が進み、物が売れると思われましたが、生産量も飛躍的に増えたのですね。韓国や中国は日本の物まねをして輸出に力を入れましたが、東西冷戦の最中の物流機能が制限されていた時代は有効だったのでしょうが…加工貿易体制の歪みが空洞化を生み、現在もまだ調整を強いられています。故にシャープだけでなくパナソニックやソニーが低迷しているのですね。
人々が感動する付加価値の高いものを生み出す必要性があります。ある意味でEVなどは革新的かもしれません。これまでリッター4キロとか5キロ程度しか走らなかった車が、20キロ台に躍進するのですから…しかしせいぜい画素数を引き上げている技術革新の領域程度の感動なのでしょう。何故、今日はこんな書き出しになっているかと言えば…先ほど見ていたNHKのアーカイブ番組の「ポアンカレ予想」の番組の影響でしょう。この演題を証明したロシアの数学者グリゴリ・ペレリマンは、その功績により数学界最高の栄誉・フィールズ賞の受賞が決定しましたが、受賞を拒否し行方をくらましてしまったそうです。この人の行動と昨日読み終えた山本周五郎の「虚空遍歴」が重なっているのですね。天才は限りない付加価値の極みを求めるが為に、周りから見ると何処か異常な行動に見えるのでしょう。それほど、その世界に没頭しないと新しい世界が見えないのかもしれません。可哀そうに…折角、演題を証明して発表したのに…、多くの学者は彼の主張が理解できなかったらしいですね。その証明が正しいと実証されるまで、再び4年の歳月が要されたとか…美の極みの境地と言うか…芸術と数学の世界もきっと一緒なのでしょうね。
経済学も同じようなものです。バーナンキの論理が正しいかどうか…雇用統計の数字が思うように伸びず、彼の金融緩和の実験を、是非、続けるべきでしょう。今週の最大の見所ですね。もしこの予測が正しくバーナンキが更なるQE3を実施すれば…日銀のETFとリートの買いが需給バランス上の均衡点に位置しているとすれば…今年の春のような金融相場の走りが見られるかもしれません。名実の政府予測の逆転など…、かなり色んな条件は整っている筈です。僕もポアンカレ病になり始めてきたのかな?ハハハ…。

投稿者 kataru : 2012年09月10日 12:22