詩と真実・・・

マーケット三国志

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2005年10月31日

「除目」(いちば)

MLBではホワイトソックスがアストロズに4連勝。
1917年以来88年ぶりの王者となりました。
ロッテは31年ぶりでしたが88年ぶりはそれこそ歴史。

(余談・・・ロッテの社名は、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』のヒロイン「シャルロッテ」に由来します。
ドイツ語では「Die Leiden des jungen Werthers」と表現。
Leidenが単数ではなく複数であるところが興味深い所。
さしずめ19世紀版「アイルケ」ですね。
中国では、ロッテのことを「楽天」と書くといいます(ウィキペディア)。世界は広いようで狭いもの。

ちなみに1917年はロシア革命が起こり、第1次世界大戦が勃発。
日本では、理化学研究所が設立。
ここからリコーや科研製薬が派生しました。
こう考えると実に長い時間軸。
時間活用投資の「トウキョウ・ファンド」の時間軸はさらに長くなります。
1981年の創立以来、24年間の運用で18倍のパフォーマンス。
当時、新日鉄が80円、日立も100円台。
日経平均は7000円前後でしたから、昔日の感。
バブルを越え、バブル崩壊を越えた風雪ファンド。
昔の名前が温故知新になったのが今年の特徴ですが、25年後の2030年に残っているファンドはどれくらいあるものなんでしょう。

週明けのマーケットは好調。
引け後は改造内閣の品定め。
といっても「雨夜」のような艶めいたものではなく、人事異動の顔ぶれ。
サプライズは欲しいところ。
小池官房長官では面白くないし、むしろ堀江IT担当大臣や細木和子文部科学大臣などのような茶目っ気が欲しいですね。
実務的には榊原財務大臣などが面白そうです。
女性では、官僚ではなく、寺田千代乃国土交通大臣や篠原欣子厚生労働大臣などはマーケット効果は高まりそう。
平安の昔から日本人は、人事異動(除目・・・大臣以外の諸官職を任命する朝廷の儀式)に一喜一憂しています。
いわば伝統行事。

日経朝刊のビジネスレッスンでは「中島飛行機」の特集。
「戦前のハイテクの頂点にあった軍用機技術者の多くは、戦後にトヨタ、日産、ホンダなどに散り、日本の自動車産業を離陸させた」とあります。
ゼロ戦、隼の延長線上に、レクサス、シーマなどがある訳です。
新しく創出される「日本軍」は、ハイテク技術の塊。
日本のハイテクを更に進化させると読めば、憲法改正もマーケットにはプラスとなるに違いありません。
(やや我田引水ですが・・・)。

「証券会社の営業マンが豪ドルの先物オプション取引を勧めるが、乗るべきか」。
数十億円に及ぶ株式投資をされている富裕な投資家からの相談でした。
セールストークを次のようなもの。
「①豪ドルはニュージーランドドルに比べて割安。
②NZが近々利上げをすると豪ドルが円に対して更に強含む見通し。
③しかも法人でやれば為替手数料がかからない」。
良く聞いてみると3年物で3ヶ月毎に12回勝負の取引。
確かに、論法としては間違ってはいません。
しかし、とても株屋さんのトークではありません。
同時に、旧大手証券のある後輩が嘆いてきました。
「顧客訪問していても、投信、保険、外債の話ばっかりしちゃってます・・・。やっぱり、株で夢を語らないとお客様はついてこないですよね。。。」。
因みに投資家に為替取引の勧誘していたのは、同じ旧大手証券の別の支店のセールスマン。
株を忘れた証券マンは、それこそ歌を忘れたカナリア以下。
どうして株屋さんは保険とか先物とかわき道へそれるのでしょう?
それが理解できません。
お客さんは証券会社に「株」を求めて「お話したくてたまらない」って言うのに・・・。
株屋さんもやっぱり春秋の除目が大切なんでしょう。

2005年10月24日

「ハロウィーン」(いちば)

まもなくハロウィーン。
かぼちゃのお祭りくらいにしか思ってませんが、結構大切な日なのです。
それは、古代ヨーロッパのケルト人にとっては11月1日が新年だからです。
ケルト暦では10月31日は大つごもり。
その年の悪魔をお祓いするための儀式がハロウィーンなんです。
マーケットの悪魔も今年(ケルト暦)の内に処理してしまおうなんて投資家もいるに違いありません。

成田空港からヨーロッパへ向かうと、ユーラシア大陸の巨大砂漠を越えます。
アメリカに向かうと、アラスカの氷河を左側に眺める事になります。
オーストラリアですと、ほとんど海の上。
どちらにしても時間だけはまだまだかかります。
瞬時に異動できるのはマネーだけともいえますが、「どこでもドア」のマネーが先週の市場にイタズラをしたようです。
その名は「レフコ」。
最近破綻したアメリカの先物業者です。
原油など商品先物の世界だけ出なく、東京株式市場も225先物などで「レフコ」の手仕舞いの可能性が週の前半に伝わりました。
異常な乱高下のあとのネガマインドの原因として暗躍していたようです。
ようやくこの徘徊が活字になって指摘されたのは金曜日。
マーケット関係者は「何を今頃」というほど遅めの対応でした。
すぐには報じられない何かがあったのかという穿った見方をされても仕方がありません。
もっとも真相は藪の中ですが・・・。

94年の夏に2週間ほどアメリカ横断ウルトラトレーダーをしたことがあります。
サンフランシスコ→ソルトレーク→フェニックス→ツーソン→アルバカーキ→デンバー→オクラホマ→タルサ→ヒューストン→ダラス→ニューオリンズ→ニューヨーク→シアトルという強行スケジュールでした。
当時萎れていたアメリカの機関投資家への略奪営業。
それこそ、金持国家日本へのペコペコが小気味良かったものでした。
特にニューヨークは米国株、米国不動産を売りたい人ばかり。
エンパイアステートの夜の輝きを眺めながら「来年はレイオフだ」と嘆いた債券トレーダーの哀れな姿は今でも脳裏に浮かびます。
しかし、そこは底でした。
萎れたニューヨークはクリントンとともに不死鳥のように甦り今日に至っています。

日曜日経では、「海外証券投資最高ペース。今年19年ぶりに20兆円を越す可能性」の見出し。
自分の国に自信を持てない個人マネーは、海外へと出て行き、不可解な円安を演出しているのです。
確かに、箱根駅伝の予選では、山梨学院の1年生モグス選手がぶっちぎりの記録。
日本人1位の早稲田のルーキー竹沢選手とは2分近い差。
ゴルフのブリジストンオープンではスメイル、マスターズGCではアメリカのクリーマーが優勝するなど、スポーツ界では圧倒的に海外優勢。
しかし・・・。

不動産の基準地価格は大都市圏で上昇。
東京は3年前に比べ43%上がったと報じられています。
不良資産が優良資産へのターンオーバー。
この転換で次は再びニッポンの感は否めません。。
21年ぶりに無敗の3冠馬ディープインパクトが誕生。
期待感は競馬だけでなく、マーケットにも及ぼしてくれるに違いありません。
武ジョッキーの勝利コメントがとても印象的でした。
「ファンのみなさん。おめでとう」。
「投資家のみなさん。おめでとう」と言える日はいつかと考えています。

2005年10月17日

「記念日」(いちば)

先週、ネット証券の7~9月期の売買代金が昨年に比べ2倍となる40兆円を超えたと報じられました。
口座数は全体で226万口座。
4月以降は株式投資未経験者の口座開設が全体の6割を超えました。
長らく課題とされていた「新規投資家の参入」がようやく実現し始めてきた訳です。

それはそれで良いのですが・・・。
日々投資家に接していると、その「他力本願的投資手法」はベテランとアマチュアを問わず、依然として残っているように思えます。
ある和尚さん。
毎週月曜日に必ず電話をかけてきて聞く事は「何を買えばいい?これは上がらんけどなんで?」。
京都のおばあちゃん。
下げれば「売ったほうがええのちゃう?」上げれば「何を買うたらええ?」。
日本の投資家は本当に他力本願だと考えさせられます。
そして全国津々浦々、どの個人投資家も異句同様に言います。
「証券会社に聞いても答えてくれないし、聞くところがない」と。

でも決して「聞く」ことが目的なのではないようです。
逆に「聞いて欲しい」んです。
90年代後半、「お話しましょう」というキャッチフレーズを打ち出して見事に投資家にそっぽを向かれた証券会社がありました。
投資家は当時の証券マンとお話などしたくなかったのです。
でも、今は違います。
「聞いてもらいたくても叶わない寂しさ」に満ち溢れた投資家ばかり。
「ワンコイン・コール」なんてビジネスモデルが結構受けるかも知れません。
「全国株式電話相談室」なんてラジオ番組もいけるのではないでしょうか。
TBSで「全国こども電話相談室」を聞いていたのは確か「団塊の世代」の人たちだったように思います。

先週は「引越しの日」(14日)に、倉庫・陸運セクターーが買われました。
「鉄道記念日」(15日)に鉄道セクターが上昇しました。
今週は「貯蓄の日」(17日)から始まり「明かりの日」(21日)で終わります。
とすると・・・。
銀行が頑張って、電力・ガスが後押しするなんてシナリオもありなのでしょうか。
その昔、雪の降る日に「雪印」なんて機関投資家のファンドマネージャーに話して、結構オーダーがきた記憶がありますが・・・。
(特にオイルマネーや台湾マネーは本物の雪が好きでしたから。もっともこれはマーケットを冒涜しちゃいけないと株の神様に叱られそうな話ですね)。

「日はまた昇る」のビル・モッテン氏は「日本はカメ、中国がウサギ」として分析しています。
「日本の昔話では“カメ”は競争に勝つことになっている、しかし“カメ”はそれだけではない。潜在能力のシンボルでもあるのだ」。
どう考えても、日本は明るいのではないでしょうか。


2005年10月11日

「日はまた昇る」(いちば)

――秋が かうして かへつて来た
さうして 秋がまた たたずむ と
ゆるしを乞ふ人のやうに……
 
やがて忘れなかつたことのかたみに
しかし かたみなく 過ぎて行くであらう
秋は……さうして……ふたたびある夕ぐれに――
(立原道造)

NYが下げています。。
良く聞く言葉は「ブラックマンデー」。
確かにNY市場は、秋には大幅下落した歴史があります
1987年10月19日。これがブラックマンデー。
ダウ平均で500ドル余りの下げでした。
1929年10月29日。歴史の教科書にも出てくる「暗黒の木曜日」。
世界大恐慌のトリガーとなりました。
なぜ10月なのでしょう。
考えてみれば、アメリカは巨大な農業国家。
秋はたわわに実った作物の収穫の時期。
作物が増えれば価格は下がります。
つまり需給の供給が増える場面。
「作物が出来る」ということを都会人は忘れてしまいました。
「実りの秋」は、モノ余る秋でもあります。
このDNAがNY市場にも流れていると考えても不自然ではありません。

要は、近代的マーケットも自然を無視しては成り立たないということです。
「風吹かぬ、二百廿日の安値段、定式として待ち受けて買え」。
二百廿日前後の台風が来なければ豊作になるので、売り物が出ると言います。
カトリーナとリサに襲われたアメリカは作物ではなくガソリンが不足して値上がり。
その意味では、この格言は現代でも通用します。

日経朝刊で英エコノミスト編集長ビル・エモット氏は、こう指摘します。
「今年夏に3週間かけて日本を取材。その結果を『日はまた昇る』という特集にまとめた。長期的に日本は再生する」。
彼が指摘する問題点は労働力不足。
「ロボットなどの新たな生産技術の革新が促されるとともに企業は一段と女性の人材活用を迫られる」と逆にポジサインという観点です。
だからドラマは月9が「気になるアネキ」で木10が「大奥」。
火10の「鬼嫁日記」のおまけつき。
世の中のテーマは「女性」となる訳です。
中期的銘柄テーマとしては、やはりはずせません。

「日はまた昇る」はヘミングウェイの初期の代表作。
「ロストジェネレーション」は有名な一文です。
07年問題を控え、かつマーケットの歴史的変化をふまえると「ロスト・ジェネレーション」は結構新鮮な言葉となります。
「誰がために鐘はなる」もヘミングウェイの作品。
市場の鐘はかつて発行企業のためにありました。
現在は投資家のためになっていると考えたいところです。

太陽は常に東から昇るもの。
易学者は、東北から西南へは攻めやすいと言います。
西方浄土とも言います
日本企業の中国、インド、タイへの進出は理に叶っていることになります。
また水辺には金が集まり、山間には人が集まるとも言われます。
とすると・・・日本はやはり金が集まる筈なんでしょう。

ところで、1915年英仏の戦争である「ワーテルローの戦い」におけるロスチャイルドの行動は有名な話です。
彼は誰よりも早く英国の勝利を知りました。
市場のコンセンサスは「仏軍勝利は売り、英軍勝利は買い」。
ところがロスチャイルドは大量に売り始めたのです。
市場はパニック。
その下げでロスチャイルドは大量の買いを入れたと伝えられています。
英軍の価値という事実が伝えられると、ドテンのブル相場。
一夜にしてトスチャイルドは財をなしました。
ここには大きな教訓が隠されています。
「事実情報だけを独占的に握ること」。
表面に現われる事は、すべて過去のこと。
活字はすべて一日あるいは半日前のことを報じていることに気が付くことは重要だと思います。

足元日本の東京市場。
「もう駄目」とすら言えなかった企業が収益企業へと変貌してきています。
「企業は気から」の教訓。
「気」は「機」と「基」。
「希」でも「喜」でも「輝」でもあるのです。

2005年10月03日

「時よ!止まれ」 (いちば)

阪神タイガースが優勝。
福井日銀総裁は語りました。
「タイガースの優勝は、デフレ脱却の道を少しは確かにする」。
そして「日本の景気回復は西から全国に及ぶ」と。
物価の上昇が明らかになれば、消費に加速度が付きます。
漸くの・・・です。
西といえば、大証修正株価指数が話題となり始めました。
日経平均は2000年のアングロサクソン向け変更でハイテク指数に姿を変えてしまいましたが、大証修正平均は昔のまま。
先週は26000円台。
つまり、これが古の日経平均の現在の黄泉かえりの姿なんです。
それでも天井まではあと14000円。

8月の完全失業率(季節調整値)は4.3%となり、前月に比べ0.1ポイント低下。
完全失業者数は前年同月比30万人減の284万人となり、27カ月連続で減少。
就業者数は6405万人となり、前年同月より10万人増加、4カ月連続増加。
8月の有効求人倍率(季節調整値)は0.97倍と、前月と同じ水準。
9月の東京都区部の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が97.1と、前年同月比0.4%下落し、前年同月の水準を6年連続で下回った。
そして鉱工業生産指数。8月の鉱工業生産動向(速報)によると、生産指数は前月比1.2%上昇の101.2。
上昇は2カ月ぶり。同時に発表した製造工業生産予測調査では、9月が3.0%上昇した後、10月は0.4%低下を予測。

楽しみとしていた日銀短観はプラスの19。
事前の期待感が高かっただけに売り物も出るというところ。
しかし、本当に強い市場です。

長いスパンで見ると幾度かのオイルショックがありました。
その都度、体質を改善して筋肉を鍛えてきたのが日本でした。
原油高の実質GDPへの影響は次のようなもの。
1973年の第1時オイルショック時。
翌年のGDPに対する影響はマイナス0.27%。
79年の第二次オイルショック時は同じくマイナス0.15%。
91年湾岸戦争時は同じくマイナス0.08%。
そして今回はマイナス0.05%へと減少してきています。

内閣府が使う原油原単位(一定量のサービスを生み出すために消費する原油の指数)もブル材料。
90年のアメリカを100とすると、昨年のアメリカは79。
同様に90年の日本は54。
昨年は44です。
隣の中国では昨年も184。
ここから読むとアメリカは日本の倍。
中国は日本の4倍。
つまり、原油高は米中に痛手となり、日本の優位性は際立つということになります。
だからこその「BUY JAPAN」。
IMFが日本の成長率を上方修正したのも当然です。

この論法で日本株を売りまくっている証券マンがいます。
先月の数字は予算比200%超の達成率。
まだ伸びるとのコメント。
元気な株屋さんが増え始めました。
でも長い間の「縮み感」はなかなか脱却できない様子。
いわく「時よ止まれ!市場は余りにも美しい」。

兼好法師の徒然草十一段は「神無月のころ」。
京都の栗栖野の鄙びた庵を訪れてその「あはれ」に感じ入りましたが、庭の蜜柑の木を囲ってあるのをみて興ざめしたというのがテーマ。
庵を東京市場、蜜柑の木をオイルマネーと考えてみても良いように思えます。
マネーはそれこそ囲ってこそありませんが、囲いたがるもの。
蜜柑の木は、今、まさに東京市場にあるのでしょう。

土曜は甲斐駒ケ岳と八ヶ岳の雄大な風景に感動しました。
咲き誇るコスモスを美しいと眺めました。
日曜の夕刻は、訳あってTDL裏側の舞浜の縁で東京湾のお台場の彼方の大都市東京と着陸するジェット機と夕焼けを眺めました。
どちらも日本。
そして、「美しいもの」。
市場も間違いなく「美しいもの」に映っています。