詩と真実・・・

マーケット三国志

「兜町」(いちば)(2006年08月21日)

証券取引のメッカは兜町。
今は、機械的な雰囲気に支配された取引所。
閑散とした人の流れ。
場の活況など感じられることもなく、ただ普通の東京の街となってしまっています。
大手証券の株式取引の6割がネット取引となってしまったというのも現実。
しかし…。
株の町であることに変わりはありません。
半世紀前の兜町の繁栄の姿を描いた逸品に清水一行氏の「小説兜町」があります。
証券史に名高い神武相場と岩戸相場が中心。
神武相場のスタートとなった平和不動産(ボロ)の動きなどは迫真に迫るもの。
そして仕手株であったホンダ、中小型であったリコーが「光と影」の銘柄として登場。
兜町の歴史の一端でもあります。
合間合間に語られる相場の言葉が印象に残ります。
「相場ほど、“同じ過ち”を繰り返させるものはなかった。
下がるだろうとか、上がるだろうという予測は、理論的にはある程度まで分析することが出来る。
その時期についても、先行指標はさまざまな変化を示す始めるもの。
ただ、そういう大局観も、相場の実戦場裡では『もう一文』という、相場が言わせる煩悩によって惑わされる」。
あるいは…。
「相場はナゾナゾです。
提灯の明かり一つをたよりに闇夜を行くようなものだ。
せいぜい自分の足元しか照らせない。
が、冷静な第三者が見ると、提灯の明かりで歩いている人の位置がわかる」。
興味深いのは登場する銘柄。
値嵩品薄株としてのソニー(当時1450円)、ホンダ(同1350円)、資生堂(同1190円)、花王(同700円)、NEC(同700円)など。
国際株としての三井物産(同525円)。
そして水産株としての日水、ホウスイなど。
アツギも登場します。
現在の新日鉄や石川島も主役。
最後は日立で終焉。
「歴史は繰り消す」はけだし名言ですが、株の世界には色濃く現れるような気がしてなりません。