カテゴリー:株式教室

低PERと分析力

「いつも貴重なお話を聞かせていただきありがとうございます。特にマクロ的な見方は参考になっています。最近は船株に傾倒なされているようですが、、、その話ばかりで、ハッキリ言ってつまらないです。違う銘柄の話を期待しています」

…と言うメールを頂きましたから、その回答を中心に話を展開します。

個人の信用評価損益の推移(松井証券)

実は同じような解説が、本日の日経新聞のスクランブルに掲載されていました。気づきましたか? これは松井証券の資料です。松井証券で信用取引をしている投資家の信用の評価損益をデータ化したものだと思います。8月19日の下げを受け、カタルは「野村証券」(8604)の雪だるま投資を実行している口座で、追証が発生したために20日の寄り付きの514円の安値で3000株だけ投げました。

野村證券(8604)の日足推移

たぶん…このグラフは鮮明ではありませんが、その時分に松井証券の信用顧客は評価損が最大化して12%を超えたのでしょう。このグラフとカタルが提供している日証金の回転日数のグラフは同じ意味です。

日証金の回転日数の推移

ここではそれぞれのデータと個別株の動きを見比べてください。松井の信用評価損の推移は日証金の方がデータとしてはサンプル数が多いでしょうから信用度が高いのでしょう。

ここで冒頭のメールの質問です。船株以外に他の銘柄の話をしろとなっています。この読者はどの程度、カタルのレポートを読んでいるか分かりませんが、カタルは常々駄目相場が続き…今回は過去の失敗事例に懲りているために「投資資金」を引き揚げたと述べています。カタルがこのような行動に出たのは、今回が初めての体験です。

もともとカタルの原稿を読んでいれば分かります。昨年からの株価上昇を警戒感を持って観ていました。そうして時間軸はズレていますが、金利高を予想して「野村証券」を昨年末から「東芝」(6502)と共に取り上げています。この2銘柄で、充分だと述べており、今年は年初から「難しい相場」…と述べていました。

そうして…かなり儲かっていたので、投資資金の早めの引き上げをしました。それでも、ここ数か月は、やっても駄目だと思っても、果敢に買いで…取り組みました。その結果、案の定、カタル自身、なにを仕掛けても、株価は大きく伸びずに駄目でした。

通常、名目時代に移行しているなら、株価は大きく下がらずに、個別の仕手材料株で「閑散相場」も乗り切れるものです。故に最後の手段として…強弱感が割れる人気株で夢の大きな「エーザイ」(4523)に傾斜して失敗しました。この過程を綴っています。

カタルの会員向けレポートでは、毎回、人気株になると思われる銘柄を参考に紹介しています。その理由も述べています。景気敏感株の「合同製鉄」(5410)や「共英製鋼」(5440)などを始め、「チヨダ」(8185)もそうですし、「サンマルク」(3395)などのコロナ後の銘柄もANA(9202)と共に掲げてきました。

個人向けの人気株と思われる銘柄を掲げていますが、みんな株価位置が低い銘柄が主だったものです。もともと失敗しても持っていれば…その時より株価が下がっても、ブツブツ投資を実行すれば、必ず復活する銘柄です。

そんな中で、今回の「シックHD」(7365)は、結構…育った方です。500円台から800円です。しかも…この下降相場の最中です。「ロコンド」(3558)も、野村証券も時間軸がズレていると述べています。だから時間の経過を待つしかありません。

そこに登場したのが高配当を実施する「商船三井」(9104)でした。最初は、軽い気持ちで…株を買っただけです。しかしエーザイで敗れ、もともと全体相場は駄目で、個別の仕手材料株だと思ってきました。エーザイの方が、材料では面白いと今でも思っていますが、外部環境など考え、今回は船株を選択しました。理由は色々あります。日本人の慎重な性格ですね。しかも「市況もの」です。この市況ものは判断が分かれるのです。非常に難しい。

カタルはいつも…先ずは行動をします。必ずと言って良いほど、自分で株を買ってから動きを追いながら…自分で深堀していきます。船株を調べ始まると…いろんな点で面白いことが分かります。今回は「低PERの謎」と「変化率」です。

皆さんはPERの意味も、理解していません。何故、武者さんのレポートを紹介したか?2015年から2020年の6年間の米国企業の株主還元率は約100%なのです。

PERと言うのは投下資本の回収にかかる時間を示しています。仮に米国のように100%還元なら、PER10倍と言うのは10年間、株を持っていると、その投下資本が回収できる時間を示しています。PER30倍なら30年間かかるのです。

ここで「潜在成長力」の話と、「利益の質」の話が関連します。

継続的な利益か…その利益は蓄積型で増え続けるかどうか…。それによりPERの評価はガラッと変わります。しかし昨日、カタルはいくら何でも「レーザーテック」(6920)はやり過ぎだと述べ、「カラ売り」推奨しています。しかし…空売りと言うのは、相場が完全に終わってから売るものです。人気絶頂の時に仕掛けるものではありません。人気と言うのは、冷めるものです。

ここでは「ロコンド」を観ると分かります。同じ中身で、昨年の高値当時より、内容は改善していますが…市場の評価は低くなりました。今は「利益の質」が疑われています。継続的で…しかも右肩上がりに増える利益なら、再び株価は新高値を目指すでしょう。

田中君の頑張り次第です。今は外出規制のコロナ禍のさなかで、靴は売れません。故に、カタルは「チヨダ」や「ABCマート」(2670)の月次指標を参照しています。この動向を観れば…ロコンドの売り上げなども推察できるでしょう。まぁ、ノンビリやります。でも田中君の資質は上の人間だと思っていますから、また株価は復活するでしょう。別に4000円が1400円に下げても一時的に負けただけで…今度は2倍の株を買えば良いだけの話です。

要するに…利益の質、その利益が伸びるかどうか…これを潜在成長力と言います。

潜在成長率の高い企業の株価は高PERで評価されます。だから「レーザーテック」の株価が、その成長率を観てPER100倍以上で評価しているのです。しかし…半導体は時間の経過で使われる範囲が広がっていますが、果たして…「設備投資」絡みの「レーザーテック」の…100倍以上の利益評価が正しいかどうか。人間は100年も生きることが出来ません。資金回収に100年も掛かるようでは…いくらなんでも「やり過ぎ」でしょう。

ところが…「川崎汽船」(9107)は、たぶん…一株利益3000円以上が見込めます。それなのに…株価が6000円でPER2倍です。つまり今の海運市況が2年続くなら、投下資本を回収できます。

カタルが一貫して…8月から連日、「船祭り」を演じている理由が分かりますね。そうして…こう述べています。船株が騰がらない様では…「他の株、何をやっても相場にならない」と断言していました。それほど…他の株は「駄目相場」なのです。だから配当利回りで5%を超える株がゴロゴロしているのです。

川崎汽船の大量保有者とカラ売り残高者リスト

つまり冒頭の松井証券の信用の評価損も、日証金の回転日数の推移も、皆、ようやく…駄目相場から抜け出せるかどうか。そこに、こんなニュースが出てきました。此方を観ると「ものを言う株主」が川崎汽船の株を、大量に買ったと言います。今朝、カタルも知りました。

全体相場が「暖まり」始め…ようやく個人投資家も動けるようになってきたから、昨日のデータを観ると…「日本郵船」(9101)は1.22%の株価上昇率で、「商船三井」は0.78%、「川崎汽船」は5.63%の株価上昇でした。

何故、このような現象が生まれたのでしょう。個人投資家が動き始めてきた「証」でしょう。もともと「低PERの謎」の部分では、日本郵船を超える株価になっても不思議ではない川崎汽船の株価です。総合力を取るか…低PERを取るか? それとも…目先の300円配当を取るか? それぞれ投資家の選択肢に掛かります。

これで良いですか? 

一つのメールを頂いて、その解説をしようとすると、膨大な分量になります。要するに…何度も述べていますが、「個別株」要因より「市況」要因の方が株価を動かす影響度が高いのです。だから「船株を買って儲からないなら、他の…何をやっても無駄」だから…船株の話題になっているのです。

どんな良い株も全体市況が駄目なら株価は下がります。逆に全体市況が上がるなら、どんな駄目株も…株価は上がります。事実、バブル期の最後は、株価が1000円以下は、安いと言う理由だけで…中身には関係なく、株を買ったのです。

全体相場が駄目なのに…個別株の下げを嘆いても意味がありません。選択が悪いのではなく…全体相場が上がらない日本の政策が間違っているのです。だから…選挙に行き、自分の意思表示をしなくてはなりません。

日本株を上げるのは簡単です。動かない「お金を動かす」政策を実行すればいいのです。個人の現預金は1056兆円、企業の内部留保は484兆円、安心して…未来の夢に賭けることが出来る環境を整備することです。この政策を実行すれば…日本株は10万円です。

バフェットの商社株への投資の成功は、明日、話題にする予定の「インフレ率」とも関連があります。高配当だし…流石、一流なのでしょう。それでは…また明日。



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