スッキリ感が漂う

8月から9月の調整は、基本的に、米国の金融政策に対する見方の問題でした。メディアは中国危機など…と伝えていましたが、それは、この問題の派生現象です。基本はあくまで米国金融の資金供給量の問題です。ドルは基軸通貨なのです。原油価格などの商品市況も同じですよ。多くの人は根底を見失うから踊らされるのです。自分なりに、確りと経済の仕組みを普段から考えておく必要があります。

この背景にあるのは、金融デリバティブの発展から、拡大したシャドーバンキング問題です。金融機関は、勝手に金融の規模を拡大させました。ブラック・ショールズらが1973年に開発したオプション理論が、マートンによりノーベル賞を受賞したのは1997年です。そうして、この論理を利用したファンド、「ロングターム・キャピタル・マネジメント」(LTCM)は、1998年にロシア危機で破たんしましたね。

この辺りから、オプション利用の金融工学の発展により、様々な商品が開発され、利用され始めました。その一つがCDS(Credit default swap)と言う金融商品の取引にかかわる保険の存在ですね。その想定元本が2001年末頃に1兆ドルだったものが、2007年末には…なんと62兆ドルにまで膨らんだと言います。このように…急速に発展しコントロールが不能になったのが、サブプライムローンと言う米国住宅の債権の存在でした。

ムディーズなどは「AAA」を乱発し…、債権の裏付けとなるローンの査定基準が曖昧だったのです。何処の国も一緒です。昔、チューリップの球根が、馬鹿高値を付けたバブルの繰り返しです。人間と言うのは…目先の現象に我を忘れ、自らをコントロール出来ずに、溺れる動物なのでしょう。カタルも同じです。故に貧乏人なのです。

その為にオバマを始め、世界の良識派は、金融機関の手足を縛り、雁字搦めの規制をしています。カタルは、この規制水準が行き過ぎではないか…と危惧しているのです。故に米国の景気回復は、偽りの回復で、「ダリオ時間」の到来も…あり得ると考えています。

此処で…、カタルは何時も「サマーズ時間」とか、「イエレン時間」とかの言葉を乱発しています。ところが読者に、この基礎知識がないと…何の事か? サッパリ理解できないと思います。過去に何度か解説していますが…、何回もダブりますが…ごめんね。米国の経済把握は難しく、様々な意見が存在し、意見が対立していますね。要するに景気循環に対する見方の違いなのです。

タカ派は、既に利上げの機会を逸していると言う意見の人も居ます。米国最大の債券ファンド運用のPIMCOを退職した、あの有名なビル・グロス氏は、米国の利上げ機会は、今年の春ごろと述べており、遅すぎると言うもので…仮に利上げをしても、直ぐに景気後退に直面するだろうとの意見のようです。一方、元財務長官のサマーズ氏やヘッジファンド大手のダリオ氏は、利上げそのものが間違いで…サマーズはインフレの確認を待ってから利上げすべきで…今はその兆候もないから、折角の景気回復を危うくすると述べています。ダリオ氏は…むしろ量的緩和を続ける必要があるとの見方のようです。彼は利上げをしても、直ぐに景気後退に陥り、再び量的緩和にFRBは追い込まれると言う主張のようですね。

肝心のイエレン女史は、この量的緩和が見えないインフレ懸念を誘発しており、インフレが加速したら…大変だと言う意見です。故に、予防段階をスタートさせるべきだと述べていました。株だけでなく、住宅にも資産バブルの兆候があると言うものです。市場は春から夏の行動は、危ういと警告を発していましたが、今は、CMEの「FedWatch」の確率は79.1%で…しかも株価も確りしているので、「利上げ」を市場は容認している訳です。ようやく…2013年5月からのバーナンキショックが解消されるために、「スッキリ感」が、市場に漂い始めました。今までのモヤモヤが…吹き飛ぶわけです。

ドラギショックと言うか…、ECBに対する期待感が強かった市場が過剰に反応した現象より、12月に利上げが実施される、このスッキリ感の方が…市場関係者には、靄が晴れるようで…好感度は強いですね。だって2年以上も…この議論に揺れてきたのです。ようやく、新しい実験が開始されます。誰が正しいか…? そんな事は分かりませんね。仮説と実験、そうして実験が開始され、その成果が導かれる訳です。利上げにより、次のステップに歩むことが出来ます。FRBの利上げは新しいステップなのです。だから先ずは…この動きを、好感するのが市場と言うものでしょう。だって2年以上に渡り市場に漂ったモヤモヤ気分が、ようやく晴れるのです。

問題は来年なのです。ダリオ氏は、この動きを読んで、この利上げは間違いだと…1937年問題を、早くから引き合いに出しています。大恐慌の後、一旦、立ち直ったかに見えた経済は…安心した時に、再び、奈落の底へ…二番底を模索するのです。そうして第二次世界大戦です。ドイツへの賠償問題が、引き金です。当時、米国には中央銀行はなく、モルガン商会が、金融の世界を支配していました。この賠償交渉が…引き金になったのです。歴史とは面白いですね。NHKのアーカイブで、見られるかもしれません。この辺りの経緯は、実に興味深いものがあります。

だからサマーズ時間からイエレン時間になっており、トンネルを抜けたのですね。8月、9月のFedWatchの数字は、50%以下で…確か20~30台ではなかったかな? 市場が認識してないのに、利上げを強行すれば…準備不足から混乱が起きます。しかし原油価格に見られるように、市場は、既に新しいステップに入っていますね。つまり準備が整ったところでの利上げなので…スッキリ感が漂う訳です。それが雇用統計を受けた米国株の369ドル高なのです。

まだ市場関係者の中には、8月、9月の後遺症が残っているから、利上げを決めたFOMC後の相場を、気にする人がいるでしょうが…そんな心配は、皆無です。この懸念は来年ですね。だから年末年始は、バラ色相場なのでしょう。カタルが、ここにきて…再び強気に転じている理由に、TPPを始め、法人税の引き下げ前倒し…さらに外形標準課税の適用強化があります。村論理の総資産経営を税制面から見直すものです。これは非常に大きな影響を、日本経済に与えます。日経平均株価が3万円、更に新高値に突き進む材料ですね。この事は、まだまだ早いから…おいおい解説します。

どっちにしても…カタルは、このように現在は、考えています。当然のことですが、これはカタルの勝手な推測であり、当たっているか外れているかは…当然の事ですが、分かりません。こんな事は常識ですよ。要するに、たくさんの意見がある中で…自分がどの意見を採用して…どう行動するかが、問題なのです。正解は一つではありません。何故なら…上がる株を買っても、同じように買いから入っても、儲かる人も居れば、損をする人も居ます。要するに、自分が、どのタイミングで自分の力量を、どう把握して買うか、あるいは売るかの判断に、影響を受けるのです。カタルは株なんか簡単だ、前から上がる株は分かっている…と、常々述べています。ただ難しいのが、自分自身の力量把握と述べていますね。LTCMを運用したノーベル賞学者が、負ける世界なのですね。儲かるかどうかは…神様が決める領域です。



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