遅れたテーパリング

米国では8月の雇用統計値が発表されました。何故、この指標が注目されるか?…と言えば、FRBの使命は、物価の安定と雇用の最大化を目指して金融政策が運営されています。

昨年のコロナ騒動で、多くの人が職を失いました。これに伴い失業保険でカバーできない部分に配慮して…「割増しの補助金」交付が、基本的には9月まで続けられます。しかし一部の共和党地盤の強い州では、既に、この割増金は廃止されました。この辺りの背景と、パウエル議長が述べる社会的弱者、所謂、白人層以外のヒスパニック系や黒人などの人々への配慮からFRBは金融政策の緩和状態を維持しています。

一目で分かる米国経済指標

その状態が分かるのが…此方のサイトの「一目で分かる経済」と言う…米国労働統計局のこちらのサイトです。

米国の雇用者数の推移

この「雇用の変化」と言うグラフ(緑のグラフ表示クリック)を開くと…こんなグラフが見えます。この僅か2か月間で、失われた2236万人の雇用者の回復が、今は「FRBの使命」になっています。

雇用者数の推移

その為に大規模な金融緩和を継続しています。此方の報道は古いですが…当時の報道です。今回発表された8月の暫定値では1億4719万人まで…回復しています。あと533万人ほどの雇用が回復すれば…雇用の最大化の目標は達成されます。

しかし同時にFRBは「物価の安定」を求められています。この部分が問題化されます。金融緩和の弊害により、過剰な資金が暴れます。

日本では1985年10月に実施されたプラザ合意が、日本の今日の「失われた時代」に繋がる「切っ掛け」になりました。群馬県出身の「澄田智」元日銀総裁が採用した「円高不況」に対する「金融緩和政策」が、バブルを発生させたのです。加熱する銀行の融資姿勢が眼中になかったのでしょう。仮需による不動産バブルの発生です。

ケース・シラー住宅価格指数の推移

だから「ケース・シラー住宅価格指数」や「賃金動向(平均時給)」などの指標も注目されます。この「ケース・シラー住宅価格指数」の上昇率19.1%は、リーマンショック前の水準の17.1%の上昇率を超えるのです。あのリーマン前は、カタルはウハウハになり、連日、夜の銀座で飲み歩いた日々です。その金融環境の水準ですよ。その水準を更に超えて、不動産価格は急上昇しています。

世界の中央銀行の総資産残高推移

だって、コロナ禍の発生により、FRBは非常に大胆な戦略を採用して、金融緩和を実施しているのです。資産価格が高騰を続きます。2兆3000億ドルも資金供給しています。そのような結果…先日、武者さんが、まとめた資料が此方です。世界の中央銀行の金融緩和状態を示す。総資産残高の比較がこのグラフです。

これを7月17日の原稿でも…カタルも紹介しています。今の日本人と違い、アメリカ人は大胆な戦略です。この春からテーパリング観測が浮上して、短期金融市場にお金が逃避しています。株を買うのも怖いし…債券投資も出来ない資金が、この「リバースレポ」に待機している状態が、常設のリバースレポ取引高です。

レバースレポ

債券の現先取引のイメージです。これはFRBが持っている債権を担保にして、FRBが市場から溢れるお金を吸い上げています。現在は、若干の金利0.05%の金利が付けられています。買い戻し条件付きの債券を銀行に売り、銀行に溢れる市場のお金を吸い上げているのでしょう。それでもお金は資産投機に走ります。

この資金が110兆円を超えますから…目先、株式の暴落などの懸念は低いのでしょう。じり高する米国株は、割高水準ギリギリの株価なのでしょうが…テーパリング程度で、下がるようにも見えません。

今回の雇用統計数字が、不振とも…言える水準ですから、当然のことですが、テーパリングの時期は、ズレ…11月のFOMCでも「危うい」と言う見方が出てきます。

だって…まだ533万人の雇用回復が優先されるでしょう。100万人ずつの回復なら5か月ですが…半分の50万では10か月になります。まして8月のような23万人程度の改善なら23か月先です。7月の105万人の改善をみると…年内の開始が定着していましたが、この見方も怪しくなって来ます。ただバブルを容認した澄田元日銀総裁と、「同じ轍を踏む」可能性は高まります。

自分がFRBの議長になったような気持で、様々な指数の行方を観て、判断をするのです。この短期金融市場に滞留する110兆円規模の資金は役目を果たしておらず、FRBの金融政策が行き詰って来たとみる「スタグフレーション」懸念(物価高の景気悪)が生まれる背景でもあるのでしょう。

でも米国の企業業績は好調ですからね。お金がグルグル回っています。

お金は回る」…で、思い出すのが武者レポートを観ると、面白いのです。2015年から2020年まで米国の企業が稼いだ利益6.17兆ドル、ほぼ…その全てを配当の3.63兆ドルと自社株買い2.51兆ドルに充てられて、その合計金額は6.14兆ドルなのだそうです。分かりますか? 100%の株主還元の実現です。

ここでも…カタルが最近、述べている企業の内部留保金額484兆円の話の「市場の整合性」が感じられます。

デンソーが自己資本比率を50%に下げてまで、自社株買いや設備投資(M&Aを含む)に内部留保を回す話が、今の「市場の焦点」だと言うことの…「整合性」が、この資料で感じられます。ROE経営の正しさです。

日経新聞の編集員は、ここを強調して、日本企業の怠慢ぶりを改善させないとなりません。このような大切な時代変化を報道するのが新聞記者の使命でしょう。FRBが物価と雇用を守るように…メディアはメディアの使命がある筈です。

カタルはいつも…「市場の焦点」を、皆さんに分かりやすく伝えているつもりです。後は皆さんがカタルのレポートを読んで、どう対処するか…の問題です。その判断が間違っていれば株で損をするし…儲かっていれば、自分の判断が正しいことになります。

本日は米国の雇用統計を受けた解説を中心に、市場の焦点まで話を展開しました。

悪戯に…資金を貯め込んで「無借金経営」を強調する「馬鹿経営者」がいるとすれば…そいつは経営者失格です。この低金利の金利も、稼ぎ出せない経営者など、もともと上に立つ資格がありません。内部留保の水準を自慢する前に、100%の株主還元をすべきです。

期末の海運各社の「株主還元」姿勢が、どうなるか?…ここも注目されます。だって…売り上げが、何倍にも成長する業種でなければ…悪戯に内部留保を貯め込むのは、正しい経営ではありません。

はやく…日経新聞が「デンソー」(6902)のような経営姿勢を広める作業を展開すべきです。一面トップで、この時期に1000億の自社株買いを決めて…自己資本比率を引き下げてまで…「株主還元」する姿勢や、投資を加速させる行動は「経営者の鏡」として報道すべきでしょう。

ソフトバンク(9434=通信)の宮川潤一郎社長が、個人として200億円の自社株買いを実施した行動は、論理的に正しいのです。何しろ…配当還元比率80%を謡い、実践しています。株価は1520円ですから、配当利回りは5.65%です。借金をしても十分に合います。

でも彼は銀行からお金を借りたのではなく…確か…ソフトバンクの会社からその購入資金を借りたはずですから、「利益相反」の問題があるのかもしれません。でもこの点さえクリアするなら…経営者の鏡です。

カタルは野村証券の株式投資は、「配当利回り投資」の計算に合うと言い、実践をしています。約1300万円の資金で、野村証券株42000株を信用で買っており、先日、追証騒ぎになりました。本来なら、あり得ない理屈です。

だって労せずに…配当利回りだけで儲かるのです。自分で電卓を叩いて計算すれば良いのです。株価に関係なく、配当の利益で生活できるようになりますから…。100万株を買えば…年間20円配当で2000万円の所得で20%課税だから1600万が残ります。その100万株は株価が560円なら5億6千万円のお金が必要です。こんな金額を用意できないから、信用で買うと…1億7000万円ほどの資金が必要です。

この1億7000万は、資産があるなら…銀行が低利で融資してくれるはずです。そうして5億6000万の野村証券での0.5%の信用金利が、年間で280万円です。

ざっと1300万円程度、この作業をするだけで儲かります。17000万のお金がなければ…銀行で2%の金利を払っても…340万円です。1300万から340万を引いて…やはり1000万円ほどの利殖になります。誰が考えても…儲かる取引を、何故、日本国民は実行しないで1056兆円も現預金に眠っているのでしょう。馬鹿です。

カタルが三菱UFJの頭取なら、窓口で自社株を買わせるキャンペーンをします。あっという間に株価は上がりますね。簡単でしょう。株を上げるのは…。だって三菱UFJの株価は608円で、配当利回りは4.43%ですよ。何故、自社株買いをしないのでしょう。

理由は自己資本比率の絡みです。故に何れ…この発想は正しいから、必ず…銀行は「自社株買いのラッシュ」になります。だってキャッシュレス化になり、RPAの導入が決まり、どんどん効率化が上がっていますから…人件費はどんどん減っています。成長産業です。問題は規制です。これが緩和されるなら…いくらでも収益を上げられる「情報産業」の雄です。高成長できるエリート候補株です。

先ずは自社株買いを実施すべきです。リーマン後に増資して…溢れた浮動株式を吸い上げる作業です。その為に持ち合い株式をすべて売り、それで自社株買いをすべきでしょう。新首相が決まり…経済対策が打ち出されて、実行されるなら…日本株はバラ色相場です。

内部留保の金額が「484兆円」の意味を知る「大相場」になる可能性もありますから、だから…野村株が金曜日に上がったのでしょう。

楽しいでしょう。株式投資は…奥を知れば、知るほど楽しみが増えます。毎日、カタルレポートを読むだけで、金儲けも出来て…自分自身のスキルも上昇します。

ただカタルも間違いが多いので、内容を自分で吟味してから、納得されたら同調すればいいし…こいつの考えはおかしいと思うなら「空売り」をすれば良いのです。その行動の結果は、自分が処理をします。グダグダ文句を言う奴は、もう子供以下の精神構造です。大人なら良識のある行動をしましょう。

誰も助けてくれません。自分の身は、自分で守るのです。その為には自分自身の「知的武装」が欠かせません。騙された…なんて、言う奴の気が知れません。

自分が決めた行動です。結果はどうなろうが…その責任は、自分が決めた行動の結果なのです。投資は「リスク」があるのが、当たり前なのです。ソフトバンクの宮川さんのような果敢な行動が当たり前です。彼がどんな金利で株を買っているか分かりませんが、配当利回りが5.65%という事は1%程度の金利なら…約20年あれば、その借金が消えます。あっという間に…200億円のお金を創れます。 カタルも「やりたいなぁ~」誰か、お金を貸してください。

この9月に300円の配当を実施する「商船三井」は、この300円の中間期だけで3.55%です。約1か月間の利回りは、この2倍が年間利回りで、更に12倍ですから、あれれ…本当かな?ざっと…85%ですよ。こいつは利用しない手はありません。こんなマジックに引っかからないように…自分の頭で、リスクを考えて…自分で決めましょう。それでは…また明日。

会員の人は、新しい原稿をアップしましたから…お読みください。



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