東邦チタンを考える

令和時代、第一弾のレポートとして「東邦チタン」(5727)の企業業績の雑感を述べようと思っています。この株は昨年末に際し…過去においては年末年始の株価は髙いと言う「アノマリー」(ジンクス)から来た発想で…企業業績に不安がなく希望を感じられる東邦チタンの相場に期待を掛けたものでした。実は、この株は1年ほど前から…継続している株でもあります。これまでも何度もやって来たものです。

東邦チタンの2大収益柱はMLCC(積層セラミックコンデンサ)に使われるニッケル粉と航空機エンジンなどに使われるスポンジチタンを作って売り上げを挙げています。(MLCCの解説は此方)そうして…現況解説は少し古いですがこんな状況が続いているものと思われます。此方です。

東邦チタンの決算短信のセグメント

この内MLCCと呼ばれる原料になる「ニッケル粉」と呼ばれるものを機能化学品事業に振り分けております。スポンジチタンは金属チタン事業です。今回の決算短信のセグメント別の売り上げと利益を観ると…ニッケル粉は3割を超える利益率で…スポンジチタンは1割弱の利益です。そうしてニッケル粉の売り上げの伸び率は9%で、チタンの方は22%です。

実はコンデンサー業界は高度化に備え技術革新が進み、半導体業界と同様に積層化が進んでいます。この世界トップ企業は村田製作、そうして株式市場で人気が高い太陽誘電です。他にはTDKなど各社が生産していますが、IoT化の波に押され、生産を大幅に上回る受注があるとされ、昨年は太陽誘電などが市場を賑わせました。

今年に入ってからも太陽誘電の株価は人気になっており、MLCCの需要は衰えてないようです。業界トップの村田は新工場を立ち上げており、中国にも新工場を新設しています。この膨大な需要を賄うために…東邦チタンにも更なる生産要請が来ているものと思われ…四季報には、新規の工場建設観測が流れています。昨年完成したばかりなのですが…それでも足りないようです。ただ現状では…既存設備での、これ以上の出来は望めません。しかし新工場を建てるようになれば…売り上げも更に伸びるのでしょう。

実はカタルが期待しているのは、好調なニッケル粉の方ではなく…スポンジチタンの方なのです。昨年から東邦チタンを始めるに辺り…業界動向を調べると航空機市場の好調な話題ばかりでした。

新興国の所得水準が上がり、旅行の機会が増え、アジア圏の伸びは凄いものです。バフェットが航空会社の株を買っているのは成長期待の背景が存在するのです。ボーイングやエアバスが世界の航空機市場を席巻していますが、受注残は増すばかりです。毎年10%以上の増産をしていますが、それでも受注は増え続けています。

軍事産業面も同じです。中国の台頭から、世界の戦闘機市場も活況を迎えています。日本もF35への転換を控え…整備途上ですが世界的にも同じ状況です。軍事バランスの緊張化は昨年のオーストラリアの潜水艦受注合戦でも分かりますが、潜水艦の需要も増しています。チタン需要は増すばかりの環境です。

熱交換プレートなどに利用されるインフラ需要も好調さが見込まれます。海水淡水化プラント需要など…もそうです。これに加えて飛び込んできたのが、米国のチタン在庫問題で、この在庫は減って来たと言う観測でした。加えて2017年10月にITC(米国国際貿易委員会)の調査が終了したと言う決定がされたので、昨年カタルはチタン需要が増すと言う事でMLCC関連でもある東邦チタンの相場に取り組みました。

ところが…ITCは調査を終了した筈なのに…米国商務省は3月4日にTitanium Metals Corporation が要請したことにより、再び調査を開始すると報道されました。この要請は2018年9月に要請したものだそうです。此方です。

つまり…昨年の高値圏の相場がなかなか抜けなかったのは、このような悪材料が内包されていたためでしょう。昨年トランプ大統領は鉄鋼とアルミにも追加関税を課し、日本も対象国になっています。

もう一つの問題が昨年10月のインドネシアに続き、今年3月に起ったエチオピアの最新機種737MAX事故です。この為に現在は引き渡しを中止して減産調整のようです。ただボーイングはNCAS(操縦特性向上システム)のプログラム修正で問題を乗り切ろうとしています。

ざっと…東邦チタンの外部環境を整理しました。ただ今回の決算を観て思うのは…やはり当初の見込み通りの展開だ…と改めて思っています。目先の二つの山場は、何れ…時間が解決するのでしょう。基本的な外部環境であるMLCCは新工場を更に立てる計画がある程好調ですし…問題を抱えるチタンですが、目先は兎も角、航空機需要は増すばかりで減ることはありません。加えて…東邦チタンの操業率も上昇し始めており、大阪チタンも同じ決算報告をしています。

カタルはこの時期に人員を減らし構造改革に着手した大阪チタンの決断に注目しています。ポリシリコン事業は村論理によって成り立ったビジネスです。SUMCOが高い原料を長期に買う契約で成り立っていた事業なのでしょう。それをこの時期に正常な状態に戻して清算した狙いは、何処にあるのでしょう。当然、100億ほどの事業ですから…それなりの人材が配置されていたはずです。その人材を振り向ける場所が無くては、ポリシリコン事業の清算は出来なかったはずです。

窺った見方をすれば…相当スポンジチタン部門が伸びるから、そのダメージを吸収できると…経営者は考えたのではないでしょうか? 事実、大阪チタンの決算短信では70%台半ばの稼働率を、今年は売り上げを12.2%増やし…9割にする計画でいます。 国内需要は景気の落ち込みを受け4.2%ほどダウンする見込みのようですが、輸出は24.1%も伸びると読んでいます。この背景は? 本当にあるのでしょうか?

実は…チタン業界は2010年前かな? スポンジチタン価格が高騰して大規模な増産投資を実施しています。もともとチタン需要は伸び続ける読みだったのです。その為に設備増強したのです。でも在庫問題などがあり、なかなかフル操業になっていませんでした。でも順調に輸出量は伸びていたのです。

ようやく…昨年あたりから稼働率が上がってきたところなのです。この決算短信で…今年、大阪チタンは70台から90台へ、東邦チタンも操業率を90%近くと述べています。つまり…そろそろ市況がタイトになって来ている訳です。

カタルが狙っているのは…市況価格の上昇です。一昨年は東海カーボンが大相場に発展しました。市況品と言うのは、価格が急上昇して…儲けが大きく膨らみます。設備の稼働率が上昇すると、途端に「儲け」が膨らむのです。事実、東邦チタンの金属チタン事業の利益率は6%だから9%台になって来ました。更に稼働率は今年大きく上昇し…一気に利益が増え始めます。だから…外部環境さえ整えば…相場として注目されるのは当然の帰結でしょう。

チタン輸出の状況(貿易統計より)

問題は大阪チタン、東邦チタンが見通すような展開に、本当になるのでしょうか? 大阪チタンに至っては24%も輸出が伸びると弾いているのです。本当にそうなるかどうか…この裏付けが必要になります。そこで…注目されるのが貿易統計です。その数字を追う事です。

ところが、この商務省への提訴問題の影響か…昨年前半は3割近く伸びていたチタン輸出が、後半の伸び率が0.9%増と大きく落ちました。年が変わって1月は34%ダウン、2月は16%減だったのです。これじゃ…ボーイングの増産計画もホンマかいな?と疑わしく思います。

何故だろう? そこで表面化したのが3月の商務省のダンピング調査開始の発表でした。これで…カタルは東邦チタンの相場が低迷した理由が納得しました。なるほど…隠された動きが背景にあったから、いくら外部環境が良くても無駄だったわけです。

しかし…今回の決算内容は、カタルの読み通りの観測を、東邦チタンも大阪チタンもしています。やはりカタルの見方は正しいんじゃないか?…と思っている所に、先日、3月の貿易統計値が発表され…なんどと30億円台の輸出金額に大きく膨らんでいました。 実に輸出金額は61%増なのです。この数字と、今回の決算短信の内容は一致します。市場の整合性の話です。

つまり結果論ですが…、知らなかったとはいえ、昨年の9月の時点でTitanium Metals Corporationは商務省に提訴していたわけです。だから相場になりませんでしたが、今年この商務省問題がようやく解決した?(する?)可能性があります。この3月に61%も輸出が伸びると言う事は…一気に、期待感が膨らみます。

737MAX問題は、どうもプログラム改修により…事なきを得る可能性が多くの読み筋でしょう。故に展開次第では、チタン株相場の急騰場面があり得ると考えられる決算内容と貿易統計値です。

ただ…目先は実際の一株利益観測が悪い事もあり、急な人気場面とはならないでしょうが…実態は、すこぶる好調の可能性が高く、株価は下値を更に叩く道理は微塵もありません。

チタン株が値嵩株だった2007年頃の市況展開は単価が上昇したのです。現在はその前哨戦の稼働率のラインが90%近くになると言う確認が取れれば…多くのヘッジファンドが相場に参入するタイミングを模索する相場になるのでしょう。

この貿易統計は、久々の好材料であり、決算短信はカタルの事前観測を裏付けるものでした。多くの一般投資家は表面上の数字しか見ないから、直ぐに株価が人気になるとは思いませんが、決算短信を丹念に読み、外部環境を考えて行くと…チタン株は、やはり今年後半の有望株に思えてきます。

この貿易統計値が来月、再来月と本当に30億台の数字を上げ続けるのかどうか…仮に高水準を維持すると、市況品ですから単価は一気に上昇します。MLCCのように…30%台の利益率と言うのは良くあることです。

目先の商務省問題や737MAX問題の読み筋と…市況の考え方が相場を左右します。カタルは令和の時代になり…読者の皆さんには、賢い投資家に成って欲しいと願っています。カタルの読み筋が、正しい訳ではありません。しかしその根拠があるからお話しています。現実がこれからどうなるかは分かりませんが、相場を考える上で、ちゃんとした論理的な裏付けを考えようと努めています。現状のチタン株の相場は25日線も75日線も下向きのままで、200日線を大きく割り込んでいますから、直ぐに株価が本格的な上昇を迎えると言う観測は早計でしょう。

東邦チタンの日足推移

この所のチャート論を観ても分かるように…株価が上がってから、買うかどうかを考えれば良いだけの話です。上手に株を買おうとすれば、時間を待たされます。これは常識です。だからカタルは、今回の休みを利用してチャート論を利用してタイミングを計ろうとしています。

こんな所で…年末年始のアノマリーに期待して空振りした東邦チタンのアフターケアは良いでしょうか? 東邦チタンは、前期に繰り延べ税金資産を計上し、利益を増やしています。来期からは適正税率の適用ですが、実際は増収増益の好調な内容です。一株利益だけ…を観て、株価を判断しないでください。良く決算数字を読んでもらいたいと思っています。大阪チタンの決算短信、そうして東邦チタンの決算短信は此方です。



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