カタルが最も気にしていた米国のマネタリーベース問題ですが、WSJにはFRBは当面バランスシートを維持すると報道されています。この事は非常に重要なので…少しカタルなりに解釈を加えておきます。量的緩和を実施しFRBは米国債を大量に買い入れています。この流動性の供給により、天文学的な数字に膨らんだCDSなどの金融デリバティブ商品の崩壊を免れ、維持できたわけです。未だに自己資本比率規制などで、金融機関は適性値を探っている訳ですね。つまり中央銀行により供給された流動性をカバーできる水準に達していない為に、今回の混乱が起こったものと思われます。
これは当然ながら、カタルの勝手な推測ですよ。ヘッジファンドは正常化を急ぐFRBの矛盾を指摘し、膨大な利益を獲得しました。数兆円規模ですからね。あるいは…もっとかも知れません。何しろ…世界の時価総額の損失が1000兆円とも言われています。その証拠に、日本でも先物の外人シェアは異常に膨らみました。明らかな仕掛け売り、本当はGPIFが先物で応戦すれば、値下がりは免れたのでしょう。でも多くは現物投資で、下がった時に買っていました。逆説的に考えると…だからこそ、日本株は新高値を更新できるかもしれません。
問題はグリースパン時に、サマーズも、その口ですよ。彼らは、金融デリバティブの増大を知っていながら、黙認していたのです。リーマンショックと言うのは、基本的に行き過ぎた金融デリバティブのシステム崩壊です。背景に過剰なセールスが存在していたから、現在でも制裁金を払い続けているのです。今では、サブプライムローンなどの実態が、次々に明らかになっています。しかし当時は、この金融商品への規制がなく、無秩序な販売が横行しており、リーマンショックが発生しました。問題は此処ですね。その為に米国政府はAIGなどを傘下に置き、立て直したのです。大元を救済したので、辛うじて…システム崩壊を免れました。まだ金融マンにも良心が残っており、多くの商品は腐っていなかったのでしょう。その為にAIGは直ぐに正常化しましたね。AIGはCDSと言う金融商品を保証していました。保険機能が働くから、金融システム崩壊が免れたのです。でも危なかったですね。際どい所で…連鎖を止めることが出来ました。しかしシティーなどは、未だに財政再建団体のような扱いです。
失った損失は余りに多く、なかなか埋められるものではありません。日本の事例を見ると次々に隠れていた簿外債務が存在しており、市場は疑心暗鬼になり、最後は強制的にUFJが消える強行権を発動したのです。この後遺症は、今でも、市場に色濃く残っています。2004年から、三菱との統合までのドタバタ劇を見ると…、権力の本質と言うものが良く分かります。日本より米国は、ずっと優秀ですね。でもリーマンショックの後遺症は、未だに、色濃く残っています。だから1937年問題のマジックが何度も登場し、市場を揺さぶる事が出来るのでしょう。
このような不安定な中で、FRBが正常化を急ぐと…ヘッジファンドの餌食にあいます。市場が納得するまで…、実績を積み上げるしかありません。だからNY市場は、上手く処理しても当面は横這いですね。新高値を、ぐんぐんと押し上げることはできません。逆に下手をすれば、下がる事はあり得ます。でも決して上がることはないのです。目先の話ではなく、長期トレンドの話ですよ。ステップとして…次は金融の正常化が求められます。
この正常化とは…中央銀行の依存度を下げることですね。テーパリング(出口戦略)の事です。まだ2013年5月、バーナンキFRB元議長が新しい戦略を打ち出して、2年と5か月ですからね。この間に流動性の供給を止めた訳です。その為にWTIなどの商品価格は下落し、中国は資金の引上げに合っています。産油国も同じですね。このスピードが問題なのですね。余りに加速させると…今回のように混乱を招きます。
サマーズ時間と言う基本は、米国内の消費者物価の事です。雇用統計値の発表を受け、市場はサマーズに軍配を挙げ、FRB内も議事録を見ると分かるように、低インフレの指摘がありましたね。水曜日(30日)、木曜日(1日)のNY市場の動き、そうして2日の金曜日の動きは、決定的な現象です。カタルは、サマーズ時間を先週の株式教室、そうしてコラムと連載しています。ここが分岐点でしたね。でも相場的には8月25日だと思うけれど…、結局、あの辺りが分岐点で、ヘッジファンドは方針を転換したのでしょう。そうして下準備に、およそ1か月間かけ、30日、1日、2日と…市場に狼煙を上げました。
WSJに掲載されている、再投資の話は、非常に重要です。マネタリーベースを、これ以上減らさない訳です。でも人間は、絶対量ではなく、変化率で気持ちが動きますからね。この程度では、新高値を取れないと思っています。でもこの再投資の記事は、カタルのように脅えていた輩の背中を「後押し」しますね。FRBも馬鹿ではないと思う訳です。流石ですよ。やはり米国は、市場経済の国です。株価の下落を見て金融政策の方針を変えるのです。バブル崩壊当時の三重野さんと、行動を比較すると良く分かりますね。もし…NY市場が新高値を取れば、間違いなく12月は、利上げに踏み切るでしょうが…、おそらく不可能でしょう。故に、利上げは、来年3月説かな?
この読みはサウジやノルウェイの動きも、関連しますね。流動性が不足しているから、負の連鎖が発生します。だからWTIの価格推移は、これからの相場観測で重要なパーツの一つです。昨日は、パーツの組み合わせの「さわり」を語りました。禅問答のようなもので、分かり辛い解説で申し訳ないと思っています。相場観のヒントと言うのは、このように形成されていきます。サマーズ時間が、このWSJの再投資の記事で、裏付けられるわけです。そうすると、最初は淡い期待だったサマーズ時間が、段々と「確信」に変化して行きます。
相場も同じですね。最初の「出だし」の上昇率が鈍いのは…「淡い構想」なのです。それが、その最中に世の中の変化の条件が追加されることで、淡い構想が、現実の変化に思えてくるわけです。そうして、相場がだんだん強く、力強く変化して行きます。仕掛け人は、必ず玉を回転させています。素人の参加が多ければ…自分達の玉を外し、次の弾を用意します。次々に「期待感」をプールさせ、期待感を確信に変化させますね。その変化が爆発するのを待ちます。そうすると…今度は逆に、崩壊で取るのです。往復ピンタと言うやつですね。
踊る阿呆に、観る阿呆、同じアホなら踊らにゃ、損。