カテゴリー:コラム

政策とタイムラグ

ようやく金融規制の克服かな?…と、新たなテーマを考えています。先ずは米国債金利の推移を観て下さい。基本的にバーナンキ元FRB議長の「テーパリング発言」(量的緩和から脱出)(2013年5月)から、なかなか利上げが実施出来ずに…市場は低迷していました。故に利回りは低下を続け、米国株式市場の基本は「横這い」だったのです。

米国債(10年)の利回り推移

米国債(10年)の利回り推移

 

WTI原油の推移

WTI原油の推移

 

理由は金融規制の弊害を、なかなか克服できなかった為でしょう。原油相場の推移は非常に面白いですね。WTI原油はリーマンショック前、今から考えると…馬鹿らしい価格ですが…なんと145.29ドル(2008年7月)を付けます。その後、リーマンショックを受け33.87(2008年12月)ドルまで下がり、量的緩和などにより価格が回復して2011年4月に113.93ドル、そうして2013年9月に110.53ドルを付けて、高値を更新できないまま下落。今年初めには、なんと26.21ドルを付けます。ここではバーナンキ元FRB議長のテーパリング発言が効いていることを、認識して下さい。

基本的に…金融デリバティブの活用が、天文学的に広がり出すのは2000年代に入ってからです。丁度、日本では「みずほ」が倒産すると騒がれた2003年頃から一般化し出します。そうしてサブプライムローンが問題になり始める2006年には…この仕組みが問題視され始めます。WTI原油の高値は2006年7月に77.03ドルで、一旦、天井を付けました。丁度、サブプライムローンの問題が発覚する直前です。

2006年代に入ると住宅の上昇率が鈍り始め、この上昇を見込み、それを前提に設計されていたサブプライムローンが、次々に延滞に追い込まれます。そうして2007年3月にサブプライムローンに傾斜していたニューセンチュリーが破たんします。これが金融バブルの破たんの切っ掛けで…2008年9月のリーマンショック(CDSの崩壊)に繋がりました。

この仕組みの反省で…「金融規制」が強化されます。今では、リスク度により自己資本比率の増し担保を求められますから、リスク度の高い資産を中心に売却し、取引が縮小されています。この規制は、まだまだ続きます。2019年を目途に、強化され続けています。順番に強化されている訳です。カタルは、この金融規制が行き過ぎているから…実体経済の不完全燃焼が続いている…と疑っています。昨年、夏からの株式市場の下落は、金融規制の影響を色濃く反映した事例だと…カタルは認識しています。切っ掛けはWTI原油の2段下げの相場で…金融規制の行き過ぎが、様々な問題を引き起こし始めました。

どうしてか?…と言えば、原油価格を支える金融デリバティブの需要がなくなったためですね。その為に仮需による取引が減り、実態経済に見合った取引量に減ったのでしょう。リーマンショック時の安値33.87ドル(2008/12)を、今年2月に割ったのは…あまりに行き過ぎた結果、生まれた価格だろうと思っていました。故にサウジなどがSWFを解約に動いた弊害が、世界的に広がりました。だから「金融規制」と「実態経済」の綱引きは、商品価格に反映されると思っています。WTI原油の動向は、様々な理由から、非常に重要なアイテムの一つだと判断しています。

今年6月にWTI原油は51.23ドルを付けました。ジョージソロスなどのヘッジファンドの連中は今年WTI原油価格が下がっている最中、45ドルのオプションを中心に、大量に先物を買ったと言います。現在はその利食いを消化している段階でしょう。果たして6月の高値を抜き、昨年の高値(61.43ドル)を目指すかどうか…。もしこの価格を抜くなら…利上げの条件はドンドン整います。カタルは9月の利上げがあるかどうかは…WTI原油価格が6月の高値51.23ドルを抜くかどうかにかかっている様に考えています。決して雇用統計だけではありません。

金融規制と実態経済の「力」加減を観るには、原油価格の動向がカギを握っているのでしょう。日本では、盛んに実質の世界から名目への脱皮を目指していますが…なかなか全ての条件が満たされず、更に長すぎた「失われた時代」の為に、「流動性の罠」に嵌ったままなのでしょう。しかし、ここに来て原油価格が上昇し始め、更にFRBは2回目の利上げを実施、日本国内の完全失業率は、いよいよ今年後半には3%を切ります。団塊の世代が続々と退社を迎え、オリンピックを控え、人手不足が顕著に表面化しますから…人件費はドンドン上昇し始めます。これまでは政府の主導で賃上げをして来ましたが、これからは自然発生的に人件費が上がります。そうすると物価の上昇が円滑になります。だから馬場レポートは重要なのです。全ての条件が整いますね。

ここでは「政策の発動」と「実際の事象」のタイムラグを認識して下さい。バーナンキ元FRB議長のテーパリング発言は2013年の5月ですが、実際にWTI原油が下がり始めるのは2014年6月が天井になり、年末にかけ急落します。つまりこの1年程が金融関係者のポジションの変更に、要する時間なのです。更に、この金融規制下では…テーパリング発言をしてから実際の利上げは2015年12月ですね。この政策変更の準備に、実に2年半の歳月を要しています。この時は…今年は4回の利上げが実施される予定でしたが…実際は1回か、多くて2回なのですね。つまり如何に、金融規制が強く影響しているか分かるというものです。

だからカタルはゴールマンサックス、更にバークレイズなどの自己資本比率強化に対する総資産圧縮の動きを、レポートで取り上げています。この規制強化、達成過程においても一次産品の代表的な原油価格の上昇が、確認出来る様であれば…景気は盤石な回復を歩んでいることになります。カタルが最近、主張し始めている「金融規制克服論」ですね。

イエレン議長は利上げ支持を表明し始めていますが、まだ分かりませんね。雇用統計だけで利上げを判断すれば…市場は間違った政策選択に対し、下落と言う形で反抗します。やはりインフレ率を左右する資源価格、此処ではWTI原油の上昇が確認されない限り、利上げを実施すべきではないと…カタルは思っています。仮に6月の高値を超えれば、利上げを実施した方が正しいかも知れません。この辺りはSP500の動向も影響します。様々な指標を観ての政策判断だろうと思っています。

市場経済とは市場の動向を観て、互いに対話をしながら、政策を決定して行くことに尽きます。何故、かたるが、バブル期の政策を異常に批判するのか?…三重野元日銀総裁は、株や土地を下げても、日本経済は関係なく成長すると述べ、実際に市場は下げているのに、市場を無視して利上げを実施しました。この馬鹿さ加減の人間を、日本村社会では「長」に抱く仕組みなのですね。いい加減に…本物を味わった人間を、政策担当者に採用すべきでしょう。末端は、馬鹿が上に居ると苦労します。

実に、政策運営はシンプルで簡単です。市場の動向を見ながら政策を決めればいいのです。イエレン議長は、今回のジャクソンホールでの発言で、市場にボールを投げたのです。その投げられたボールを受け、今度は、市場がそのボールを投げ返す番です。市場はどう反応するかどうか…。此処でSP500などの株価があまり下がらず、出来れば…WTI原油が61ドル台回復…とまでの無理は言いませんが、せめて51ドル台をクリアできるなら…利上げを実施しても…円滑に実体経済は運ぶのでしょう。市場経済と政策のタイムラグをテーマに…本日は、レポートしました。

さて「働き方改革」が話題になり始めています。残業時間の削減、アマゾンは週30時間労働に試験的に取り組むそうです。本日の日経新聞には、形を変えた移民政策が載っていますね。これらの現象は、非常に重要な「キーワード」です。相場を考えるうえで、貴重なパーツですね。働き方改革は、日本で確実に進行します。故に「クラウドワークス」を、カタルは推奨しています。

移民政策の導入は、ケネディクスの上昇を後押しします。新聞を読んで…何故、このような考えに至るのか…様々なプロセスがあります。相場観とは…大局的な見地で形成されていきます。一見すると、相場に関係ないような事象でも、実は、密接に影響し合っています。それでは…また明日。



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