今日から3連休ですから、最近の市場を取り巻く環境を、纏めて考えてみたいと思います。先ずは…昨日は米国の雇用統計値が発表されました。予想数字より良く、雇用者数は増加し、FRBのイエレン時間が正しいと言う現象かもしれません。ここでもう一度、この考え方は、非常に大切な基礎なので…グロス時間、イエレン時間、サマーズ時間、ダリオ時間、そうして「レビー時間」などを纏めますね。
グロス時間=債券運用の王者グロス氏は、もともと米国の利上げは遅すぎると言う意見で、利上げ機会を逸していると言う考え方でした。もっと早くに利上げを、すべきだったと言う論者ですね。そもそも労働指標を基準に行動するのは、この指標は景気の遅行指数なので…まもなく景気後退に入るから利上げ機会を逸したと言う意見のようです。
イエレン時間=昨年末に利上げをしないとインフレリスクが増大し、サマーズ前財務長官が主張するように、消費者物価が上昇してから利上げをするタイミングでは、その後の経済にとって、急速な利上げになり負担が掛かり過ぎるので、早めに予防処置を講じると述べています。この背景には、これまでの量的緩和により、様々な金融商品は既に割高感を演出しているとの認識もあります。(余談ですが…だから原油価格などの商品価格が現在は大きく崩れているのです。金融デリバティブ商品の需要が、価格を支えていると言う指摘です。)
サマーズ時間=前財務長官のサマーズは、米国経済は弱く、見せかけの回復に過ぎない、だから体力が回復する状態を見極める為に、消費者物価が、実際に上昇してから利上げをすべきだと言う意見ですね。
ダリオ時間=ヘッジファンドのダリオ氏は1937年問題を連想しています。1929年の大恐慌とリーマンショックを同じレベルの落ち込みと考えており、大恐慌から立ち直ったので金融引き締めを実施、しかしそれが切っ掛けで、1937年から再び大きな景気後退に陥りました。そうして戦争の破壊と創造で回復するわけですが…この事例を連想している訳です。だから今回の利上げは間違いで、早晩、景気は悪化し…FRBは再び量的緩和のような状態に追い込まれると言うものです。
レビー時間=1929年の暴落を予測した名門のコンサルト会社ジェームズ氏の孫のレビー氏は2014年から世界景気は大きく後退すると述べています。その根拠が中国ですね。固定資本形成に依存する中国の成長は行き詰まりを見せ、これが世界に波及して、米国もデフレの景気後退に巻き込まれると言う予測です。イエレンさんのインフレ懸念と180度違う見解です。現在の労働指標の改善は、景気末期の現象だとの指摘です。
まぁ、ざっと景気循環の話を述べました。通常、経済指標は、日銀短観のようなアンケート調査が、現況を捉えたタイムリーな先行指標です。他にも内閣府が発表している街角景気(景気ウォッチャー調査)は、タクシーの運転手さんなどにも、「景気は良いですかどうですか」…と回答を求めています。これも景気の先行指数です。日本の…その推移は此方です。今の皆さんの景況感とイメージは、どうでしょう。これは全国区のものです。良く株式市場で、話題になる雇用統計は景気循環の中でも遅行指数なのです。景気が良くなるから忙しく…雇用が必要になる訳です。だからグロス氏の主張は、ある意味で理解できますね。米国は今年、早晩、再び緩和に追い込まれると言う予測にも頷けます。
でも利上げをするから…、脆弱な経済論理が試練を受け、確かめることができ…大きなバブルを淘汰できるのですね。そうして継続的な成長が可能になります。危機が起こってからの対応は、後処理に時間がかかるのです。日本のバブル崩壊と失われた時代を見れば分かります。量的緩和は、過剰な金融デリバティブ商品を生み、必要以上に中国などの国の成長を助けました。南沙問題など…の安全保障問題の背景は、金融デリバティブの発展があるからですね。故に米国は、安全保障上も中国の力を削ぐ狙いがあるのかも知れません。この辺りは難しいのです。
昨日のNY市場は雇用統計を受け、一旦上がりましたが、中国の改革が道半ばであり、不安感の方が強かったから、最終はマイナスに沈んだのでしょう。所謂、レビー時間を尊重した形です。最初はイエレン時間でしたが、レビー氏の考え方が市場を支配したわけですね。ここで問題となるのが…元の為替問題や中国の外貨準備高の問題など…です。明日は、この問題を中心に市場分析をします。そうして最終日は株式の話に話題を移し…3連休の課題とします。
カタルは単にムードで動く投資家になって欲しくないのです。与えられた様々なデータから自分の考えを確立させ、いろんな考え方が、市場に存在していいと思うのです。市場経済は株式市場で、未来の人類の姿を模索する場です。だから今の市場のようにフィンテック関連、自走車関連、再生医療関連、IoT関連とかクラウドだと…未来の話が話題になり株が乱舞するわけですね。市場で企業が淘汰されるのです。市場で高く評価されれば社会から必要とされている証で…市場を通じて資金が集まり、時代を早めることが出来ます。これが市場経済の考え方ですね。
これまでの日本は計画経済で官僚が予算を決めて、必要とされている所に資金を集めていました。政治家との折衝の中で村意識が必要になり、無駄な公共事業投資が行き詰ったのですね。ヤンバダムや諫早湾などは代表事例です。皆さんの地元でも、年度末の予算が消化されずに、慌てての予算消化の為に、冬になると道路工事が頻発します。必要もない道路工事が起りますね。充分に使える歩道や車道を壊して、また新しいのを作ります。無駄な投資ですね。固定資本形成に依存してきたために、仕事を作る必要があるのです。今の中国を批判できませんね。この村論理が大きく変換し、ゼネコンは海外進出し、適性値になってきたのです。時間をかけて構造改革を実施してきたから、大林などが高値圏になったのです。こんな所にも日本村構造が、ようやく整理できた現象が現れています。何もJAだけではないのです。
失われた時代の背景は、様々な要因が積もりに積もり…雁字搦めに、こんがらがった糸なのですね。それを安倍政権は、ひとつひとつ解消しようとしています。集団的自衛権の問題は、意見が割れます。本来は憲法を改正してからすべきなのですが…、スピードが間に合いませんね。故に一時的な処置と考えています。株式投資にリスクのないリターンはあり得ないのと同じように…安全はタダではありません。そんな「虫のいい話」はないのです。権利を主張する以上、義務は生じます。納税の義務があるからこそ、社会保障が完備されるのですね。
何故、楽天の三木谷が嫌いかと言えば…もう大企業になったのだから、確り利益を上げ、税金を払えばいいのです。それを…これまでは毎年、赤字会社を買収して利益を隠し、規模を拡大させて来たから嫌いなのです。彼は興銀で…会社の金で留学させてもらい、自己研さんが出来たのです。ところがその恩返しもしないのに…起業したのですね。まぁ今は、みずほがメイン銀行になっているから、それ以上の恩返しをしているかもしれませんが…。
外形標準課税の税制は、このようなマジックを採用しにくくします。故にROE経営に傾きますね。税制改正は目に見えませんが、大きな改革の一つです。法人税を下げ、規模の拡大より、質の高さを求めているのです。だから…高収益の会社が続出するようになると思っています。成長分野の医療部門を売却する東芝の改革は…良い事例の一つですね。
本質を…皆で考え、賢い投資家になりましょうね。それでは…また明日。