国際収支からみた日本の立ち位置

今日は昨日の「今日の市況」からの発展課題です。その理解を進める為に国際収支の動向を調べていました。資料元は日銀からですが、グラフは2014年は12月の数字が、為替は年末値が入っていますが、経常収支などの統計は1月から11月までの合計で12月は未発表なので含まれていません。それではこのレポートには影響がないので、このグラフを採用しました。 

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この統計を調べることは、相場観に重要な影響を与えます。これまで述べたように、プラザ合意(1985年)以降、日本の官僚組織を中心とする司令塔は、間違った判断の下で日本の政策を運営してきました。農業政策は筆頭ですが、一番大きいのは、グローバル化への対処の欠落ですね。その為にプラザ合意を、切っ掛けとして躓く訳です。当時、竹下大蔵大臣の下で、NYのプラザホテルで結ばれた円高に向けた為替の協調介入の政策です。しかしこのグラフによると、所得収支が貿易収支を上回るのは、2005年から2006年にかけての話です。(所得収支とは、海外で営業している企業などからの配当収入などの金額です。)

ようやく、東西冷戦の構造改革に追い付いたところで、米国の金融危機が起こります。その為に、折角、構造調整が済んだのに、イレギュラ―的な二段下げ?二段上げの為替相場に入り、100円割れから80円割れまで追い込まれ、本来は国内生産をすべき生産財まで、中国を始めタイなどへ生産移転が進みました。これが余分だったんじゃないか…と考えていますね。最近はインバウンド消費が注目され、サービス収支も改善しており、グローバル化の定着が見られますが、同時に、雑誌「アエラ」の此方の報道ぶりは、清貧思想を貫いた日本の異常な様相を感じられると思います。ずいぶん、日本は貧乏をしたものです。資源大国、オーストラリアの42万4千円の初任給って本当なのでしょうか?

もともと東西冷戦の崩壊から加速したEMSと言う受託生産の流れを読み違ったのですね。これはメディアの責任も大きいと思っています。悪戯に、日本の「ものづくり」を強調する余り、グローバル展開が遅れたのですね。その為に運命のいたずらと言うか…米国の金融危機と重なり、行き過ぎた生産移転が起ったのではないかと推察している訳です。国内消費分まで、海外で生産したのですね。日産マーチの逆輸入は象徴的な事例でしょう。シャープの二段下げと言うか…二番底の確認相場は、その様な現象が、市場の株価となって現れている現象ですね。

基本は2003年からの復活が、正しい方向性だったのですが…その後の政策の選択ミスや米国の金融危機の影響を受け、日本は二段下げの構造調整を迫られた印象を抱いています。ただグラフらからも分かるように…海外からの第一次所得収支が大幅に増えているのを見ても明らかですが、日本は完全にグローバル化に脱皮しました。伊藤忠の1兆円投資を観ても分かるように、商社を中心に、我が国は海外からの配当収入などが大きく膨らんでいます。ただ残念ながらまだ門戸が開かれてなく、外資系企業の活躍は鈍いままです。最近のサービス収支の改善などを見ると、この辺りも変化の兆しが感じられます。

この雑誌「アエラ」の報道は、たぶん大げさなのでしょうが…それでも嘘ではないのでしょう。つまり日本がデフレ環境で沈む間に、国際社会から大きな水を開けられたわけです。実質評価ばかり前面に打ち出す政策は、人間心理を考えないものですね。だからこんな結果になったのでしょう。日経新聞を読むと輸出企業の利益は膨らみますが、株式市場は変化率を常に問題にします。今年は大きくこの変化率が沈み、グローバル銘柄は、既にかなりの高評価になっています。PER18倍で、ROE8%弱の評価は、既に比較感から見て「のびしろ」は大きくありませんね。だからカタルはROE経営を目指せと述べています。日本企業は総資産経営だったため、全体としての利益を重視するあまり、個別の利益率を無視してきました。その為に総花的な経営になりましたね。日立など、どの分野が得意分野なのか…? 利益率の低いと産業まで手掛けている為に、従業員ばかりが膨らみ、利益率が下がっていたのですね。その方向性を現在、改善し始めています。でもまだまだ…なのですね。

資本に関する考え方も、同じです。人と同じで資本も高い利益を求めますね。人も質を問題にし、利益率の低い産業は、ドンドン門戸を開放しなくてはなりませんね。だからスマートコミュニティーの推進なのです。IVIが準天頂衛星から電波を受け、自働で走るトラック運行システムの構築などが急がれます。様々な効率社会を促進させないとなりませんね。最近は物流リートが生まれ、基幹産業の拠点づくりの資本調達も容易になっています。何故、ケネディクスに拘っているか? 現在は、確かに信用買い残が重く、大きな資金が入らないと株価は動きませんが、ケネディクスが栄えると、日本の為になります。特養の待機老人の解消も介護リートが受け皿になります。基本の政策は、お金は出す事ではありませんね。お金がスムーズに流れる、流れを作ることです。

ところが…現状の邦銀株の動向は、横這いのまま…デフレの流動性の罠から抜け出せていません。黒田さんは原油安のCPI見通しを責められています。黒田さんは怯むことはありません。先ずは、現状を素直に認めることですね。問題点を否定するのではなく、素直に見通しの甘さを認め、対策の手を打つ事ですね。先物価格が現物価格と同じような状態が長く続くことは…黒田さんの敗北を示しています。日銀には様々な手段があります。邦銀株を、利回り裁定で買い上げても良いですね。いくらでも方法論は存在します。期待インフレ率を市場関係者に植え付けないと、なかなか新しい時代は拓かれません。今の相場はこの辺りが焦点だというのが、データからも理解されると思っています。



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