「効果的な利他主義(EA)」

米国ではやはり…「エヌビディア」(NVDA)の企業業績が、話題の中心になります。

「エヌビディア」(NVDA)の 日足推移

先ごろ発表された…今年8-10月(第3四半期)の売上高は181億ドルと3倍以上に増えたのです。この驚異的な伸び率に、継続性があるなら…株価はもっと高く評価されるべきでしょう。しかし「エヌビディア」は物を売る商売です。仕組み上のプラットホームから来る「あがり」ではありませんから、原材料費も掛かりますが、現状の売上高利益率はなんと…51%を超えます。

次に、その売上推移を観てみましょう。

2023年1月の時点では60億51百万ドルですが…四半期ペースで2023.4は71億92百万ドル、203.7は135億7百万ドル、そうして2023.10の時点で報道されている通り181億20百万ドルなのです。兎に角…バカ売れをしています。

通常は生産体制が追い付かないものですが、エヌビディアにとって、受託生産するTSMCは半導体不況に苦しんでおり、基本は減産の最中です。他の半導体株のサーバ―需要が低迷している中で「AIブーム」が巻き起こったので、一気に「H100」の増産体制が可能になったのでしょう。アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)だけが…若干の増収(4%)です。

面白いのですね。「野中の一本杉」なのです。

兎に角、凄いのですが…その業績の「安定性」と「継続性」が問われます。この考え方次第でPERの評価は変わります。基本的に「レーザーテック」(6920)を観ても、「エレクトロン」(8035)もそうですが…今の半導体業界の株価に、「割安感」はありません。どれも正当な評価で、カタルはこの評価を疑っています。

何故なら、半導体の製造は世界中で政府の補助金が出て…どの国でも最先端の半導体工場を新設していますから、こんな特殊要因の特需が、長く続くわけではないのです。

たまたま…「コロナ禍」で発生した車の半導体不足、基本は「サプライチェーン網の不備」を突かれた為に…玉突き衝突のような現象の中で、ソ連がウクライナに侵攻して経済制裁になりました。同時に、中国も「台湾問題」を抱えていますから、この台湾を主体にした世界の半導体の受託生産を誇る生産メーカーのTSMCが台湾にある為に、「米中対立」の「経済安全保障問題」が重なった偶然の産物です。非常に、歴史的に観て…稀な環境が一気に構築されました。

通常はレーザ―テックの相場は、とっくの昔に…終了して株価が低迷する筈でしたが、「神風」が起こります。

DXI指数(半導体価格指数)の推移

経済活動の未来予測の推察も、なかなか…当たりません。現実社会では、理論通りに物事が進まないのです。既に、企業業績は減産中ですが、在庫調整が進んでいるために、実際の半導体の相場は上がって来ています。このDXI指数は、台湾の調査会社が算出している指数ですが、こんな感じですから…半導体株にとって、価格の上昇は追い風になります。

マイクロソフト(MSFT)の 日足推移

このH100の「爆」需要の元は、マイクロソフトが支援した「オープンAI」が、時代変化を早めたのです。そのマイクロソフト(MSFT)の株価が此方です。

日経新聞より

2019年に先ずは10億ドルを投資しました。そのお金を活用して…すでにOpenAIのAIを、Officeなど自社プロダクトに活用しており、2023年1月にマイクロソフト(MSFT=MS)は100億ドルの追加投資により、AI統合がさらに進むことが予想されていた中で、いきなりの「チャットGPT」の登場です。

10億ドルから100億ドルに…「投下資本」が10倍になったので、時代の進展が一気に早まったのでしょう。その結果が「エヌビディア」の株価成長に繋がりました。お金が「時代」を早めたのですよ。

この投資に先駆けて…MSは景気減速により従業員を1万人減らしており、経営資源をAI投資に振り向けたのです。この考え方が重要です。儲からない分野を切って、未来の投資に資金を振り分けた経営戦略は「ROE経営」の基本です。如何に、「総資産経営」の日本が劣化しているか…分かる事例でもあります。

この100億ドル報道の発表の時のエヌビディアの株価は192ドルです。

つまり…この報道を受けて…オープンAIが「チャットGPT」の開発状況を知っているならエヌビディアへの投資も、可能だったかもしれません。カタルは知りませんでしたが…可能性があった発想です。

株式投資は様々な…社会事象から、未来を推察する「アイディア」が非常に大切なのです。このアイディアを、今回の会員レポートでも書きましたが…その発想、つまりアイディアが当たるなら…エヌビディアの相場を満喫することが出来ます。まだ…AI投資は始まったばかりです。

爆発的な増収増益の成長力は、当たり前ですが、当然、時代が進むにつれ…この伸び率は落ちてきます。今後5年程度の増益率の予測が、これからのエヌビディアの株価位置を決めます。キャシーウッド氏は、早々と…持っていたエヌビディアの株を売却して…自身を正当化していましたが…彼女は、そんなにたいした運用者でもないでしょう。

だって…人工知能はスタートを切ったばかりの段階です。時間の流れを観れば、3年や5年の成長は当たり前でしょう。

このチャットGPTを開発したOpenAIは、利益を追求する「株式会社」ではないのです。OpenAIのホームページを読めば…

「私たちは、人類の未来は人類によって決定されるべきであり、進歩に関する情報を一般の人々と共有することが重要であると信じています。AGI (汎用人工知能=Artificial General Intelligence)を構築しようとする…すべての取り組みに対して、厳しい監視が行われ、重要な決定については公的協議が行われる必要があります。」との主張が書いてあります。

だから…先日、繰り広げられたOpenAIのサム・アルトマンの解任騒動に発展したのです。

この顛末がWSJに載っていました。この記事の冒頭に…

「「効果的な利他主義(EA)」として知られる社会運動は過去数年間に、シリコンバレー一帯の人工知能(AI)開発企業の従業員と幹部を分断し、EAを信じる人たちと信じない人たちを対抗させている。」となっています。

アルトマン氏はお金の価値を知っていますから、「時代の進化」を早める為には、利益の追求も仕方がない…と言う立場なのでしょう。しかし…もともとOpenAIの趣旨は、人類の幸福を願っており、倫理的な問題に配慮して、AI開発を急ぐより、先ずは道徳面も配慮すべきだと言う社内対立において…アルトマン氏が解任されたのでしょう。

この話は難しい問題です。

遺伝子操作などもそうですが…道徳的な「倫理面の配慮」も必要で、意見が割れる課題です。株式市場を真剣に考えて行くと…世界中の問題に目を向けて、色んなことを考えさせられます。どの選択が人類にとって「正しい道」なのかどうか…。今回のオープンAIの騒動はその一面を観た思いです。結局、目先の利益を優先したアルトマンの復帰になりました。

この選択が正しいかどうか…株式投資は面白いでしょう。

AIの活用は、様々な仕事を効率化させています。今では瞬時に配達ルートを決めるAIも登場しており、物流網の「効率配送」にも一役買っています。これが効率化投資です。日本の総資産経営が、如何に遅れている「経営スタイル」か…分かる事例の一つでもあります。

だから、ルマーダに傾斜する日立の挑戦が「価値がある」と市場が評価したから、株価が「上場来高値」を更新しているとも…言えます。自分が、どの道を選択するか参考になるなら幸いです。それでは…また明日。

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