カタルが、証券アナリストの試験を受けたころは、平成5年なので、既に20年以上も前になります。その間、ずいぶん国際会計基準が導入されたりして財務会計も内容が変わったように思います。昔は、株主資本、自己資本、純資産などの貸借対照表の貸方の項目も、もっとシンプルだったように記憶しています。現在は小手先の利益の増減が、明確に分かるように変化しているようです。下の三菱UFJの決算書を見てください。四季報の数字では前決算期末の数字、平成26年3月31日のものを用いているので、その数字で解説します。
皆さんは良くPBRとか…BPSと言う言葉を耳にすると思います。日本株は長らくデフレ下にあり、株や土地が下がって来ました。その影響も大きく、今でも解散価値と呼ばれる純資産価格を下回る株価が、多く存在します。しかし近年、日銀の量的緩和を含め、安倍政権はGDPを増やす政策に着手しています。実質GDPではなく、名目GDPを増やそうとしている訳です。人間の生活は実質では影響を受けません。目に見えないからですね。実際のやる気と言う感情は、名目値に影響されます。毎月、貰う給料の数字が増えれば、やる気も増します。しかしこのデフレ下では、内外価格差の解消がありました。ユニクロが飛躍できたのは、当初、国内の割高な商品価格を国際標準にした為ですね。
バブル期まで、1989年当時から1990年代は、日本独自価格が目立っていました。国際標準では安くても、国内価格は高かったのです。カタルは、長らく蝶矢のワイシャツを愛用していました。しかし蝶矢は、結局、国際競争に勝てずに、業務を清算しましたね。安い海外品との競争に勝てなかったのです。ユニクロとは対照的な存在でした。デフレ下では、このように独自の日本価格が消え、国際標準に変わりました。その為に物価が下落して給料も下がりましたね。実質成長率がプラスと言っても、貰う給料が減るようじゃ…やる気も失せます。デフレ下では実質重視の政策だったわけです。
ようやく長い時間をかけて、日本も蝶矢の敗退に様に…グローバル体制が整いました。ユニクロのグローバル化は、その事を示しているのです。日本の構造改革が終了したのですね。そうして金融危機後の円高は、過剰な構造調整の行き過ぎを示しています。それが日産マーチのタイへの生産移転です。その円高が修正され、名目重視の政策に変わったのです。
さてバックボーンの説明は、此処までです。構造改革が終ったので日本も成長率重視が可能になりました。だから土地も株も上がるようになったのです。ここで日銀は大胆な量的緩和を実施しています。これじゃ、日銀券はドンドン劣化しますから、資産価格が上がるのが当然です。1兆5千億円のAUMは、魅力的ですね。故にケネディクスは上がります。こんな事は決まっている事なのです。皆さんは目先ばかり気にするから…、基本が出来てないから、株価が少し下がるとオタオタするのです。
日本経済が名目重視になった以上、PBR1倍割れの株価はおかしいのですね。黒字なら、毎年、純資産は増えます。儲けは利益余剰金に蓄えられますね。近年、企業経営者も、ようやく国際標準の資本効率を考えるようになりました。これまでは資本はタダだと思っていたのです。村論理が優先され、自分達が会社を食い物にしても…許されると思っていたのですね。ところが…社外取締役の設置など含め、金融庁はスチュワードシップ・コードの導入を計りました。今度は、経営者は資本効率を含め、真剣に国際競争に挑むようになります。これがROE経営です。米国では12%~15%程度が当たり前なのです。ところが日本は8%程度と、経営陣は甘えています。この理由はブルドック事件や日本空港ビルディング事件があったために、日本は長らく村論理が優先されました。
近年でもライブドアはアウトで、IHIやオリンパス、先週は伊藤忠の循環取引が発覚しました。本来は粉飾決算と判断され、市場から退場を促されても仕方がありませんが…村論理の「二重基準」が存在しましたね。市場は公正であり、公平な筈です。市場原理とは、本来はそういうものです。カタルのように問題点をネットで暴露するので、金融庁も仕方なく方針を転換しています。東京製鉄の田原工場の減損処理を見るまでもなく、近年まで価値のある資産まで減損処理を迫る金融庁の指針は、おかしいと感じてきました。代表事例はダヴィンチの退場です。丁度、2000年初めの出来事ですね。「木村リスト」はそう言う意味ですね。過剰な官の民間意識への介入です。鐘紡が消えたのは記憶に新しい所です。花王が手を挙げていたのに…強引に介入しましたね。
日銀の量的緩和など…の政策を見れば、明らかです。PBR1倍以下の株価は市場から消えますよ。この動きが中越パルプの急騰であり、リリカラの上昇ですね。株価と純資産価格の差が大きな株価が、市場からなくなります。カタルは原油安から原発の再開、更にオリンピック景気などを鑑み、そのリストから棒鋼の合同鉄鋼を、観察銘柄として推奨しています。必ず、株価は上がってきます。このリストは4月4日の株式教室で『スクリーニング』として掲載してあります。参照してください。今日はこの項目のPBRやBPS(一株純資産)の話です。
カタルは長らく、三菱UFJの一株当たりの純資産が、前決算期末で1066円もあるのに、株価が600円台の訳がない…と思ってきました。だから最初に純資産価格の800円を割れた時から、三菱UFJを買い始めたのです。しかしその後も株価はドンドン下がります。ついに500円を割り込み、天与の買い場と考え、更に力を入れて証券マンの頃、全てのお客様に推奨してきました。ところが…なんと300円台まで、下がります。そうして公募増資の実施ですね。この背景はBIS規制と言うものです。馬鹿な金融庁を始め、政策官僚たちです。外交交渉が下手ですね。ほんとうに…外交が下手です。
しかし…政策が変わり、ようやく、まともな動きになって来ました。それでもまだ三菱UFJの市場価格は、822円と安いですね。背景には優先株やワラントなどの潜在株式の存在があるのかもしれません。そこで調べたのが、純資産の仕組みですね。株主資本、含み利益を加減したものが自己資本で、さらに新株予約権や少数株主分を加えたものが、純資産となります。
でもカタルもよく分からないのですが、何故、少数株主分が純資産に加えられるのでしょう。どうも学者先生達の考えるのは、分かり辛いですね。論文を読むのは疲れるので、途中で止めました。要するに、親会社が実効支配しているから、本当は違うのだが…利益の分配などの決定権は、親会社の管理下にあるので、子会社の少数株主持ち分も実行支配下にあるから、純資産に含めると言うものかな…と解釈することにしました。
でも含み利益は実現利益と違いますからね。銀行株は、この株式などの含み利益も大きいのですね。そこで三菱UFJの一株当たりの純資産価値は1066円あり、日経新聞の報道によれば自己株は省くので、この水準が僅かですが上がり1078円になりますね。そうして新株予約権や少数株主分を省く自己資本価値は一株あたり921円あります。含み利益などを考慮しない株主価値では現在の株価と同じ水準の800円が、一株あたりの金額です。この決算書を見ると、3月期末から12月までで有価証券の含み利益が…なんと1兆円以上も増えています。今年に入ってから更に株価は急騰していますから、この水準は増していますね。昨年12月末の純資産価格は1151円で、自己株を省くと1164円になります。つまり黒字で配当もしており、毎年、価値が増える三菱UFJの株価は、依然。大きく割安なのです。市場価格は822円ですから、どう考えても、あと342円ほど上がりますね。株価は1200円前後になるのは当然の帰結ですね。
良いですか…こんな事は常識なのです。株価は市場環境により上下に振れますが、自分なりの価値観をしっかり持ち、株価の上下に自分の心が惑わされないようにしてくださいね。だから、確りと自分なりに理論武装をしなくてはなりません。今日は株主資本、自己資本、更に純資産について勉強しました。それでは、また明日。