一つの出来事の考え方は難しいですね。
原油価格の上昇は原材料費を押し上げますから最終利潤が減る要因になります。基本的に産業が活発化し自然な形での原油高なら、プラス要因が勝るのでしょうが…今回のようなテロの場合、予期せぬ原材料費高で利益を削るのではないか…との懸念が増す可能性があります。(一般論)
日経平均株価は、既に9連騰をしており、短期的には利食い売りが出やすい状態です。ただ物価高からの金利上昇は、金融機関にとって利ザヤ拡大に繋がり、プラス要因になります。でも一般的には原材料費高騰と金利高は一般産業にとってはマイナスです。
逆に、米中貿易の「部分合意」と言う説の摩擦緩和は、過度の警戒感が和らぎます。既にドイツはマイナス成長に陥り、健全派のドイツが景気対策を優先させるのは、EU全体にとってプラスです。ECBは0.1%を引き下げマイナス0.5%と微調整の深堀を実施し…11月から200億ユーロの債券を買い入れる量的緩和(QE)も再開すると言います。
ここで需要なの事は「株価位置」の話でしょう。
日本の「流動性の罠」は、既に6年目に突入しています。この間に企業は、これまでの裏切られ続けた政策に失望して、警戒感から保守的に、過度の内部留保を積み上げています。既に十分すぎる水準ですから、使われない資本は、株主還元や設備投資に回すしかありません。勿論、人件費の上昇の原資でもあります。だから日本の付加価値を上昇させます。
カタルが一番、強く感じていることは…此処です。
株式の持ち合い制度が解消され、村論理は希薄化しています。今までは…持ち合い株が背景にあり、多少の我が儘なら、経営者の主張が通りました。しかし今の時代は「スチュワードシップコード」の重要性が問われています。だから日本生命が日産の西川さんの再任に反対票を入れたのです。此方の解説をお読みください。
上場企業は公器の存在なので…私物化する経営を出来ないのです。これ故にLIXILやレオパレス21の問題が発覚して…問題化し、経営者が責任を追及されたのです。
この流れは加速しており、ソニーのオリンパス株の放出に繋がっています。日立が日立化成を手放すのも…同じ流れです。時代の流れが、株主の地位を高め、株主還元の方向性を高めています。キーエンスは素晴らしい経営ですが、株主還元率が低いと問題化しています。
この流れのおかげで…配当利回り投資の水準に、日本株はなっているのです。だから日銀のETF買いや、企業の自社株買いの他に…一番、大きな資金需要である「金利裁定」と言う考え方が、日本人に芽生え始めた事です。500円の三菱UFJは5%利回りなので…下値は鉄板相場なのです。
加えて…世界中の中央銀行は、再び、緩和の方向性にあります。此処にリーマンショックから、立ち直った金融機関が、今度は資産拡大に乗り出します。今までは、自己資本比率の達成の為に…これまでは総資産を削り、投資の圧縮を余儀なくされていたのです。このマイナス部分を、世界の中央銀行が補ってきました。しかし今度は、この動きが逆回転するのです。BACクラスの銀行が、自社株買いを容認されるようになり現場に復帰してきたのです。
「スティーブン・ムニューシン米財務長官は9日、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の利益の吸い上げを打ち切ることで連邦住宅金融局(FHFA)と間もなく合意するだろうと述べた。」との報道の価値は、非常に高いのです。何故ならリーマンショックの引き金を引いた、住宅金融の復活報道は、「完全な立ち直り」を示した象徴的な事象です。
今回、募集したブラックストーンの過去最大規模の商業不動産ファンドの資金調達、205億ドル規模の意味は、過去27年間のネットリターンが15%になっている評価なのです。
この27年間、日本は「失われた時代」のなかで「肥やし」を蒔き続け…清貧思想に染まって来ました。しかし世界は名目時代を続けており、一人あたりのGDP比較において、日本にとって、米国の背中は遠くなるばかりでした。
サウジのテロ事件の判断は、たしかに難しい評価です。仮に市場でマイナス評価にされても…一時的なクッションでしょう。時間軸では…そんなに長く続きません。株価位置は、急騰展開の所ですから、休みを求めていますが…それ以上に基本的なバックボーンと言うか…時代背景が名目時代の到来を求めている様に感じています。
明日から始まる日本株の動向は、サウジのテロで難しい判断が求められますが…カタルは短期的な小さなマイナスと判断しています。それより…大きな時代背景を見て行動します。
既に石油(原油)の依存度は…先進国にとって、産業構造が大きく変化しており、過去ほどの影響度はありません。今、チャートを見ましたが…この程度の動きでは、やはり…「良い肥やし」として、これを利用する可能性が勝っているのでしょう。カタルは今回のサウジテロを、「肥やし」と評価します。やはり時代は、そんなタイミングの「仕掛け」に見えます。
内部留保からの株主還元などは、低金利の日本に「金利裁定」と言う概念を植え付け、大きなステップ・アップの切っ掛けになるのでしょう。