決算発表シーズンで発表された数字の解釈を巡り株価が乱高下している様に思われます。日本企業の多くは3月決算で…サラリーマン社長です。この時期に、発表される今期予想数字は、あまり大きな意味を持ちません。
それにも拘らず、ファナックやソニーなどは大幅安になりました。一方、この時期にしては、珍しい現象と思われるのが「アドバンテスト」です。昨日、大幅高したアウトソーシングは12月期で第一四半期が発表されましたが、基本は夏以降の数字でしょう。
通常、第3四半期の決算数字が発表される時期に修正発表が出されるので注目されます。早い企業は、第2四半期の段階で増額するケースもあります。既に半年が経過し…尚、足元が強い場合です。
むしろ…この時期は、決算数字より株主還元の配当政策や自社株買いの姿勢に注目すべきだと思っています。近年、日本の経営者も、株主還元比率を高める傾向にあります。昔は…2割程度の額面(50円)に対する配当(10円)を自負している経営者が居ました。今でもこの傾向が、日本には存在しますが、金融庁がスチュワードシップコードを支持する立場になり、機関投資家の姿勢も変化していますから、経営者は横並びには違いありませんが、還元比率を高めています。
この点、ファナックの利益還元方針は、合理的な判断に思えます。配当の還元率を60%、更に5年平均で80%を上限に自己株式の買い入れも行う(配当も含める)と表明しています。尚且つ5%を超える自己株は消却すると…なっています。つまり…毎年利益の20%ずつの自社株買い余力がある事になります。
おそらく…此処に来ての株式の下げは、今期の会社側の業績予想が悪く、市場期待が膨らんでいたために、大きく株価が下がったのでしょう。四季報の今期一株利益予想は954円ですが、会社側の発表予測は710円の予想です。ファナックは国内工場だけで生産しており、為替動向に利益が大きく影響されます。四季報によれば…78%の輸出比率です。
為替の前提は1ドル=100円、1ユーロ=125円です。しかし決算説明会資料によれば…中国の影響を一番受けますね。第4四半期のデータでは28.7%が中国の需要です。しかし…受注動向をみれば分かりますが…1561-1991-1706-1955-1903億円です。第4四半期では21.9%も受注が伸びています。
世界経済は、EUは回復過程で、米国も国内回帰が始まっています。問題は中国やドル債務の影響を受けるアジア圏ですが、中国はメイドインチャイナ2025を推進しており、人件費が上昇していますから、FAやロボットなどの投資に熱心です。一方、ドル債務の金利高の影響を一番受けるのはアジア圏でしょうが…そんなに極端に落ち込むかどうか…。
背景を考えると…、仮に悪くても、ファナックの今期の数字は微減の数字でしょう。むしろ、今期の数字より「良くなる」可能性も、現時点では高いのでしょう。だから…夏に発表される受注動向が非常に注目されますね。 何故なら、昨年の数字は非常に高いもので1991億円でした。つまり2Qの受注動向を見て、ファナックの株価が判断されます。
慌てて買う事もないでしょうが…下げるなら買ってみて、下値を拾う価値はありそうですね。しかし…設備投資なので、スマートコミュニティーの投資が、どの程度…広がるか?
ドル金利は上昇過程ですから、ドル債務の増大が難しくなります。つまり基本的な背景は世界経済のパイは縮小方向にあります。逆金融相場の場合、必ず、未来は逆業績相場に入ります。この落ち込みを少なくして、次のステップアップを待ちます。でも世界の人口は伸びており、過剰債務問題は、厳しい金融規制でありません。
だから…大きな景気の落ち込みは考えられません。あるのは…雇用問題からの物価高です。しかし現状は、資源は戻り歩調ですが…高騰している訳ではありません。CRB指数など検証すれば分かります。WTI原油はサウジの減産やイランの核合意問題などがあり戻り歩調ですが、世界は再生エネルギーの利用に走っています。
もし…何らかの環境変化でファナックの株式が大きく更に下がるなら、買っておけばいいのでしょう。しかし基本は2Qに発表される受注動向をみたいのですから、打診に留めるべきでしょうね。でもファナックは、世界で一番ですよ。安川との差は、かなりあると思われます。本当はファナックを分析するためには、安川の数字も見るべきでしたが…此処ではメインでないから省きます。
カタルは、読者に賢い投資家を求めており、自分で考えましょうね。ファナックの株価が騰がるか下がるか…と問われれば、上がる確率の方が高いのでしょう。だって世界中で人手不足ですから、自動化の投資は欠かせません。生産設備は基本的には無人稼働が理想です。ファナックの素晴らしさは…IoTに積極的に取り組み、AIなどの活用にも熱心です。PER評価の30倍は、どうかと思いますが…。この程度なら容認でしょう。この手の株は、こんな時に買わないで、いつ買うのでしょう。
カタルはハイリスク派ですから…ファナッックは投資の対象になりません。機関投資家ではありません。たかが数百万円のお金しかないのに…数千億円のファンドを運用している訳ではありませんからね。
ファナック一つで…この量になります。これでも正確ではありません。過去の受注動向など…少なくとも20年程度の決算数字を分析して、他社と比較し…景気変動の影響などをすべて理解しないと…分析をした事にはなりません。そんな事に時間をかけるのは、大変な作業ですよ。でも経済研究所には、詳しい決算データがあり、直ぐに分析を始められます。データ集めだけでも…大変な時間がかかります。
だから、気軽に、「この銘柄をどう思うか」等と…メールで聞かないでくださいね。一つの銘柄を分析しようと思うなら、まる一日、使っても終わるかどうか…。この程度で…既に2時間近くが経過しています。
今回の数字で、新高値に躍り出たアドバンテストですが…実はこの数字、カタルは事前に読んでいました。故にあの時に…再びチャレンジしましたがダメでした。
日銀が浮動株を吸い上げたなら…昔のアドバンが復活するかもしれないとも考えていました。昔のアドバンは、エレクトロンに並ぶ双璧でした。でも富士通がアドバンの株を売ってから…需給バランスが崩れましたからね。だから日銀の吸い上げ効果で…復活を考えていました。でもこの時期は、やる気に成れません。やるなら、あの時です。
タイミングが、ピッタリ合うかどうか…難しいものです。全体の相場環境と、個別株の業績動向が、ピッタリ合うと相場は…増幅されます。逆に良い数字なのに…全体の相場環境が駄目だと、折角の相場もポシャリます。システマティック・リスク〈市場リスク〉と言うものです。「個別株の要素」と「市場の空気」が、相場の形成に大きな係わりを持ちます。
アドバンは、この時期に通期の数字も増額しており、四季報の担当者が勉強不足だったのか…何故か、四季報数字は弱く見ていましたから、市場の認識とギャップがありました。カタルは、あの時に来年は…「後工程」と述べていました。覚えていますか? だから本当は、誰かが事前に仕掛けて、このギャップ修正を利用して株価を演出をして…逃げるべきだったのです。
下手糞ですね。折角のチャンスが…転がっていました。
カタルに、相場を動かせる力があったなら、あの時に始めていました。でもあの時は、空振りで…誰も利用しようとせずに、カタルも撤退を余儀なくされました。確か…損をしたのかどうか。もう長くなったので、この辺で止めます。この連休は業績数字の見方を解説しようと考えています。本日は「ファナック」を取り上げました。オーナー系のファナックでさえ…こんな予想を打ち出すのです。サラリーマン社長なら、より保守的になります。
この時期は、今期の予想数字ではなく、むしろ配当政策に注目する事です。東邦チタンや大阪チタンは、共に増配を打ち出しています。余裕がないと、なかなか増配まで踏み切れないものです。それでは…また明日。