ゆとりを蓄える財務

株価位置の話から発展しての原稿ですが…昨日はトヨタの話でしたね。ここで需要なのは損益分岐点の話でしょう。単純に売上高推移と利益の関係を見ると、この2009年の決算で2008年に起きたリーマンショックのために生産調整を実施しましたが、社内体制がその仕組みに追いつていないために、売り上げは205295億円ですが、4610億円の営業赤字になっています。 

トヨタの業績推移

しかし流石ですね。翌年、売り上げが189509億に落ちても…直ぐに1475億円の黒字に体制が整っています。その前の売り上げ推移が分からないのですが…2007年の239480億円から2008年は262892億円に、売り上げが23411億円増えています。たぶん…その前から拡大傾向でしょうから、設備投資の償却費が増えていると思われますが…その負担を乗り越え、わずか1期限りで、売り上げが減少しても…黒字への体制転換を整えました。これは凄い事なのです。 

通常、拡大した売り上げの為の償却負担が増え、売り上げが予想外に減ると…もっと大幅な大赤字に陥ります。でもトヨタは、すぐに体制を整えました。流石、一流の経理スタッフなのでしょう。大きな赤字が続かないように、たくさんの「引き出し」を使っているのでしょうね。 

この引き出しというのは、「ダム」のようなものかな? 洪水になっても、日照りが続いても、数字が大きく変化しないように…一定の水を川に流し、財務内容を調整しているのでしょう。この引き出しは、大企業ほど多いです。一般的な表現としては「懐が深い」とも言うのでしょうか? 

例えば…最近の事例では、シャープとソニーの比較が分かりやすいかな? シャープは財務内容にゆとりがなく、赤字が続き、直ぐに「身売り」に追い込まれました。しかし同じ経営の失敗でしたが、ソニーは優良な資産売却をして、何とか、リストラ費用を捻出しましたね。つまり、たくさんの「引き出し」を、使い切ったわけです。東芝もそうですね。通常なら倒産ですが、様々な優良子会社を売却して危機を凌いでいます。 

大企業ほど、たくさんの引き出しがあります。日立なども多いですよ。パナソニックもソニー同様に、経営危機を乗り越えました。通常、誰でもそうですが…、目一杯の勝負はしないものです。特に大企業の経営者は、保守的です。だからできるだけ節税を実施して、利益を隠そうとします。そうして決算を作るわけです。含み利益のある株式は売らずに…含み損の株式を売り…または減損会計を実施して、簿価の買値を下げます。そうして健全化を図ります。 

たぶん損益分岐点の話と…利益隠しの行動が2010年から2012年まで続いたために、大きな利益を計上できなかったのでしょう。つまりそれほど…リーンマンショックの損失は、大きかったのです。だって生産を減らしても、人件費は大きく変わりません。固定費はかかりますからね。もっと大きな赤字になったはずですが…今までの含み利益を出して、激変決算を緩和したのでしょう。その失った含み利益を、再び…積み上げたのが、2010年からの3年なのでしょう。 

このように…通常、企業はなるべく利益を表に出さずに…隠そうとします。でも隠し切れないと…表に出るのです。ダムの貯水量が満杯では…水(利益)は放出するしかありません。損益分岐点の考え方と、この利益を内部に積み上げる考え方は重要です。 

さてここで…カタルが経営批判を続ける「ケネディクス」を見てみましょう。ケネディクスもリーマンショック前の高値で買った不動産の損失処理を優先し、内部留保を高めてきました。その為に…リーマンショック前より、多いAUM残高なのに…不動産の売却利益を丸ごと計上していません。これまでは内部留保を優先させていたのでしょう。しかし、もう「レガシーアセット」と呼ばれていた含み損を抱えた不動産は残っていません。これまでは…リートに合わせて、売却していたのでしょう。その為に利益が本来の水準より減っていました。 

こんなことは常識ですね。イチゴHDAUM残高と、ケネディクスのAUM残高と利益水準を比較すればわかります。イチゴHDも、当然の事ながら、含み損があったと思われますが…内部留保をケネディクスほど…保守的に積み上げなかったと思われます。詳しく見てないからわかりませんが…たぶんそうですね。 

リーマンショック前の売り上げと利益規模を見ればわかります。もともと、このタイプの利益の源泉は、AUMの残高なのです。AUM残高が増えているのに…過去最高利益を更新しないほうが、おかしい環境です。問題は過去最高利益を計上し…その利益が一時的なものではなく、その伸び率が継続的な利益計上になると…市場に思わせる仕組み作りですね。だからカタルは、早くコンセッションに取り組めと述べているのです。 

一般的にコンセッションは、道路や下水道事業などのPFIなどを示しますが、世の中には…生活に必要な社会基盤だけでなく、スマートコミュニティー時代を迎え…様々な仕組みが生まれています。 

クラウド環境の電子カルテの整備のためのサーバー投資などもそうですね。小さな会計システム開発の会社など、需要はいくらでもあるのに…資金が足りないことがあります。本来は銀行が融資をしますが…銀行は、なかなか新規事業というのは、前例がないと融資をしないものです。スマートコミュニティーの時代は、新しい仕組みの開発ですからね。AIを活用した仕組みをせっかく構築したのに、資金不足で事業の拡大をあきらめるケースもあります。そのような会社と共同で会社を立ち上げ…使用料という形で、一定の経費をもらえば…様々なスマート資産を提供できます。コンセッションの活用は、一つの方策です。 

だから宮島さんに「世の中を創る人間になれ!」と言っているのです。ラッセルをする覚悟がないと飛躍はできません。今の経営は、非常に保守的です。分らないでもないのです。リーマンショックなどがあり、その失敗が尾を引いて、保守的になっているのでしょう。だから内部留保ばかり蓄えています。 

常識的に1兆円をはるかに超え、まもなく…AUM残高2兆円に届くのです。1%でも170億円ですね。現状の100億レベルは、どう考えても…一所懸命に経営している姿ではありません。だからTOBをかけて、経営者を入れ替えれば、いい会社になります。時価総額が5倍や10倍になるのが当たり前の経営環境なのです。 

本人達も内部留保の存在を知っているから、間髪を入れず、自社株買いを実施したのでしょう。通常は、やるにしても…今年末の筈ですね。それを昨年に続き、すぐ実施しています。本当は、最初の時に50億円ではなく、100億円をすべきなのです。それを二度に分けるのは…宮島さんという人間は、そういう性格なのでしょう。まぁ、健全といえば健全です。カタルのようなバカではありませんが、カタルは一所懸命に、やるべきだと思いますね。人生は背伸びをして、常に…前を向いて生きるべきでしょう。 

孫さんは、後進に道を譲らす、ARM社を買収しました。この成果がそろそろ生まれるはずです。まぁ、生き方の問題ですから…単純に他人批判はできませんが、株主は利益を求め、最大限の市場評価を常に望んでいますから、今の保守的な経営はやはり不満です。利益を計上して、ステップアップしてほしいと願っています。 

要するに…トヨタの決算でもわかりますが、一般的に、回復当初は内部留保を優先させます。だから2012年から株価は、一旦10倍になりましたが…その時は理想買いですね。相場で言うと金融相場の段階です。次の段階は実際に利益が溢れてきます。現実買いの段階を迎えますね。問題は、この現実買いで終わるのではなく…次のスマートコミュニティーに備えた飛躍を感じさせるかどうか…。そのためにはコンセッションへの取り組みが欠かせません。 

そうすれば、現状の低い一株利益でも、PERの評価は50倍、100倍と評価されます。ところが…その夢である潜在成長率が感じられないと…通常の評価であるPER10倍から、せいぜい高くても30倍どまりなのでしょう。アマゾンは、何故、高い期待値を市場から与えられているか? その市場原理を、宮島さんは…よく考えねばなりません。 

新規のヘッジファンドの参入から見て、おそらく増額修正は、もう決定事項です。なぜなら、日債銀や六本木のホテルなど…もう完成してリートに組み込まれますからね。どの程度、利益を出すのか…。こんなことは、前からの決定事項ですね。見えないのが…PERの評価を変える経営者の取り組み姿勢の転換です。ここが一番重要なのです。利益ではありません。 

でもね…トランプ政権の誕生で、世界経済のインフレ化は、すでに決定事項です。今年後半はFRBとトランプ政権の対立が激化します。ケネディクスにとって、この追い風が吹き続けます。だからこのスケールの大きさは、先が見えません。それほど…これまでに失った1300兆円というのは大変な金額なのです。 

日経新聞は、本日も中国経済のバブルを指摘しています。まるっきり…違いますね。日本の場合は…確かに年収と住宅価格を比較すれば…一部では、本日のような記事だったかもしれません。でもあの時の一般的な評価は、年収の7倍程度の評価だったと思います。それを5倍以内に抑えようとして…資産価格を下げるために、急ブレーキを踏んだのですね。目一杯、銀行融資をしているのに…。 

更に、決定的に違うのは…中国は、基本的に自己資金が主体なのです。ローンを使う場合でも、自己資金の割合が高いのですね。日本はどうですか? 今は…頭金がなくても住宅が買えます。やはり異常ですよ。通常は3割程度の用意するのが、当たり前です。中国は5割水準が、ざらなのです。ゆえに、年収と住宅価格だけで…、一概に、比較できません。 

それに宮沢政権のようなアホではありませんね。後先を考えず…資産価格を下げたりしません。中国の指導部は、ずっと優秀です。どんな意図があって…あんな記事を載せるのか?…商業ビルの話もそうですね。この休みに連載されています。ひょっとしたら…誰かに書かされている可能性があります。北朝鮮リスクを、日本のメディアはいろいろ言いますが…韓国の株価は高いのです。おかしいでしょう。トランプ政権を批判しますが…やはり米国も高いのです。 

カタルは、世界的な「インフレーション」を疑っています。この可能性が非常に高いのです。これだけ世界の中央銀行が、これまでにお金をばら撒いたのです。だから「失われた時代」の肥やしである「1300兆円の逆襲」をというシナリオは、一財産を形成できる可能性は高いですね。カタルは、しばらく…このシナリオをもとにして…相場を考えて行きます。いよいよインドの登場です。来年は…凄い事に、なりそうな予感です。

原稿をアップした後、お買い物に行ったら想い出しました。本日は「有料読者向けの株式教室」の原稿を書く日でした。これから、遅い昼食を取った後、書きますので、夜遅くか…明日読んでください。



amazon.co.jp 全品に拡大 無料配送キャンペーン実施中!詳細はこちらをクリック。

関連記事

  1. 2015.09.19

    核心を考える
  2. 2022.02.12

    アマゾン
  3. 2015.11.07

    希望の誕生
  4. 2024.03.09

    株高の理由
2024年12月
« 11月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  
株式投資関連の本